トムさん視点





「今日はほんとツイてない、折角の休日なのに朝一番にシズちゃんに遭遇するなんて!!」

フーッフーッと髪を逆立てながら威嚇する新宿の情報屋

「用がねえなら池袋に来るな、つーかあっても来んな、死ね!つか殺す殺すぶっ殺す!!」

グゥルルルと唸りながら狙いを定める池袋の喧嘩人形

殺し合いが始まるまであと何秒だろう

興味本位で見ていた池袋のギャラリー達−まぁ俺もそれの一部なんだけど−はギリギリ巻き込まれない距離から二人を眺めていた

折原の方はナイフを構えて臨戦態勢
対する静雄は珍しく得物を持たずに関節をコキコキ鳴らせている


(折原もいい加減武器替えればいいのに)


そんな事を思っている次の瞬間、風を切る様な音の後、言葉では書き表せないような(書き表したくない)厭ぁな音と共に黒い塊がぶっ飛んだ
やはり先手を決めたのは今日も静雄で、黒い塊もとい折原はぶつかりそうになった壁を蹴りくるりと一回転して地面に足を着いた
顔に大きな痣を作っていたがアレ喰らってあの程度で済んでるんだから折原も大概規格外だと思う

「痛いなぁ……俺のきれーな顔に傷が残ったらどうしてくれんだよ!」

これしか取り柄がないのに!と自分で言って悲しくならないか?折原

「ハッ!いっそ嫁に行けねえくれぇグチャグチャにしてやろうか?」

おい待て嫁って何だよ!?

「なに言ってんの!?シズちゃんが死ぬまで何処にも行くわけないじゃん!!」

待て!お前こそなにを言ってるんだ!!

「こっちだって手前が死ぬまで逃がす気ねぇよ!!」

おい、突っ込みが追いつかねぇ……
まぁ何時もの事だが、慣れない奴にはキツいだろうが慣れたギャラリー達が「また始まった」と生暖かく見守り始めてんぞ

「上等!!何十年かかっても絶対この手で殺してやんだからね!!」

「そうなる前に俺がお前をひねり潰してやるよ!!」

恥ずかしいな二人とも、特に折原お前いっぺん自分の発言見返せ!絶対どっかおかしいって気付くから!聞きようによっては凄く怪しいって気付くから!!



数十分後

もはや誰も通らなくなった往来で死闘を繰り広げる二人を見ながら俺は

−−果たして静雄の人生これで良いのだろうか−−


そんな事ばかり考えていた




おしまい