門田さん視点 平日の池袋、俺の背中にベッタリ張り付いている臨也、アイツに見られれば俺ごと殺されかねないなという状況で臨也は俺達四人と暢気に過ごしていた 細っこいコイツは背中に張り付いていても重くも暑苦しくもないし、この危険人物しかいない空間にしては稀な空気を俺なりに甘受していたのだが それも狩沢から出たある人物の名前によって壊される、その名こそ今し方思い描いていた池袋最強の男にして臨也の天敵【平和島静雄】だ 「ねぇねぇ?イザイザってぇなんでシズちゃん嫌いなの?」 「はぁ?いきなり何?……ていうかシズちゃんて呼ばないで」 自分の事はいいのか、臨也が反射的に返した台詞に対する狩沢の心情は多分(きゃ〜んwイザイザ可愛い)とかだろう…… こんな性格悪い奴を萌えキャラに変換出来るとは流石二次元に生きてるだけあると関心してしまう まぁ静雄が絡むとそれなりに人間らしくなる臨也は一部から見れば可愛く映るのかも知れない 「だって世の中理屈が通用しない人も短気な人も暴力的な人もその全部合わせ技な人もいっぱいいるじゃん!その人達は愛せるのに何で静雄だけ?」 ああ、俺もそれは疑問だった 臨也の趣味は弱い者イジメと同列に位置すると思う、だから自分より強い者に手を出す事は滅多にない、コイツは手のひらから落ちる人間には興味をなくし自分の予想通りにいかない人間を面白いという変な奴だ そんな臨也にとって静雄は例外中の例外 大嫌いと言いながら無視出来ない存在だった 「……何枚出す?」 「お金は無いけどこないだ格好いいって言ってた指輪あげるよーお揃いのネックレスも付けて」 話を聞いていると誤解しそうだが二人は別に仲良しという訳ではない、ただ狩沢がデザインしたアクセサリーを臨也が気に入っているだけ……つまり店と客の関係だ 「……わかった、それで手を打つよ」 そんなに狩沢のアクセサリーが好きかお前 「んー……俺がシズちゃん嫌いなのは……世界で唯一俺を裏切るから、かな?」 「え?はい?」 「勿論、俺がそう思わないだけで俺を裏切ってきた人は沢山いると思う、でも俺はそれを裏切られたなんて思わないで……どんな成り行きでもありのままに受け入れてきたし、どんな目に遭おうと人間が導いた結果なら愛しいと思った……でもアイツは違ったんだ」 静雄を思い出してか、臨也の整った顔が憎悪に歪められる 「俺さシズちゃんに逢うまで人から裏切られる感覚知らなかったんだ……でもシズちゃんが全然思い通りに動いてくれない事に怒りを覚えて、それが自分のなんか……よく分からない部分を痛くさせた、きっと初めて裏切られたって感じたから」 ふと狩沢の方を見ると口を押さえてプルプルと震えていた、その隣の遊馬崎も同じような反応だ……まさかコイツら萌えてるのか?臨也の阿呆だろって発言に対して 「他の人からなら何を言われても平気だし、嫌われても俺は好きだよ……でもシズちゃんの言葉はどれも凄くムカつくし痛い、それは多分シズちゃんだけが俺の弱点を知ってて執拗についてくるからで……素敵無敵な情報屋さんに弱点なんてあるわけないのに」 いや、静雄はお前の弱点なんか知らないと思うぞ?ていうかお前が勝手に弱点作ってんだろ静雄に対してだけ 「あーもう本当に大嫌い、早くこの世から消し去りたい」 「コラ!人の車にぶすぶすナイフ突き刺すな!」 運転席に座っていた渡草が初めて口を開いたが聞いていないのか臨也はシートを穴だらけにし続ける、あとで弁償させよう 静雄の事を考えて苛ついているその横で狩沢と遊馬崎が普通の音量でヒソヒソ話を始めた 「ねぇゆまっち……私今までイザイザってツンデレだと思ってたんだけど案外素直なんだね」 「うーん、無自覚だからこそ素直なんじゃないですか?自覚した瞬間今までの己の言動に大照れに照れて否定するパターンですよ」 なんだそのパターンは 「案外シズちゃんもそのタイミングを待ってるんじゃ……?」 「……ないない、あの人は本気で折原さん嫌いだから」 そうだな……ああコイツも不憫な奴だ 「すまん臨也、もうこっちから静雄の話振らないからそろそろ戻ってこい……シートがだいぶ悲惨なことになってるぞ」 「……」 「えー私もっとイザイザの口からシズちゃんのこと聞きたいんだけど」 「俺もー右に同じっす!」 「ッ!?だからシズちゃんって呼ばないでって!!」 それを怒るなら狩沢のドタチン呼びを止めてくれと言いたい ああなんでコイツは自分の気持ちに気付かないんだ 「ところでお前、今の話を静雄にしたことあるか?」 「うん、あるよ喧嘩する度に言ってる」 「「キャーw」」 うるさい、狩沢と遊馬崎はほっておいて俺は俺の気になる事を訊ねた 「それを聞いた静雄の反応は?」 「いつも顔真っ赤にさせて怒ってそこら辺にあるもん投げてくるよ?まぁ頭に血上ってるからなのかノーコンだけど」 ああ……コイツは鈍感だが静雄も静雄で不器用だと思った おしまい |