ここは池袋にあるとある闇医者の自宅、相方の運び屋は生憎留守なので新宿の情報屋は一人闇医者と向き合う形で座っていた
闇医者――新羅の方は酒が入っていて気が大きくなっているのか先程から情報屋の心にズケズケと踏み込むような話をしてきた
情報屋――臨也はコメカミを引くつかせながら早くセルティ帰って来ないかなぁと普段なら新羅が言いそうな事を思っていた
臨也は普段世話になっている分、新羅には弱いので喩え不愉快な質問をされても力でねじ伏せる事は出来ない

「君って静雄本人には散々なことしてるけど静雄の身近な人には絶対手を出さないよね?」

ほら、家族とか職場の人とか、なんで?
と新羅が訪ねると臨也は大きく溜め息を吐いた
酷く酔っている癖に聡明さを失わない、寧ろ此方に気を使わない分誤魔化される事のない相手に嘘は吐けない

「シズちゃんってさぁ……鈍いじゃんか」
「ん……うん」

新羅は静雄も君にだけは言われたくないだろうね、と内心呟きながらも肯定した

「俺さ、自慢じゃないけど今まで関わった人間みんなに嫌われてるし恨まれてる自信あるよ」
「ほんと自慢じゃないよね」
「よく知らない人でも俺の噂を聞いたら良い印象は抱かないだろうね」
「まぁそうだろうね」

ケロッと何とも思ってないというように言ってのけた臨也に新羅は苦笑いで応える

「シズちゃんの周りにいる人も当然俺が嫌いでしょ、直接俺に恨みがなくても……俺がシズちゃんにとって迷惑でしかないから」
「……」

ゆっくりと語られる其れに無言で耳を傾ける新羅
珍しく焦燥感の漂う臨也を見てる内にだんだん酔いは醒めてきたけれど、それでも自分が訊ねた事に後悔は持たない

「鈍い鈍いシズちゃんは、いつ気付くんだろうね?みんなが俺を嫌いだって言うのは……」

悲しいとか寂しいの中に、ほんの少しの安堵と嬉しさを隠した笑顔で

「シズちゃんを傷付けるからだって」

自分は愛されてるっていつ気付くんだろう?
気付いた時どんな反応を見せるのかな?

言いながら臨也は楽しそうに嘲笑う

「それが気になるからシズちゃんの周りには関わらないんだよ、今まで関わっちゃった人は別としてね」

帝人や杏里は、仕方ない
聖辺ルリは多分これから関わることになるけれど危害を与えなければいい

「いつもの人間観察の延長って感じかなぁ?アイツは化物だけど」

静雄が“もう一人ではない”と見届けた後
徐々に遠ざかっていけば、もう邪魔されることも無い

“やっとシズちゃんから解放されるんだ”

そう言ってまた嘲笑う

「……その理屈でいくと、君を好きな人は静雄を嫌いってことになるね」

――何故なら静雄は臨也を傷付けるから……

すると臨也は一瞬キョトンとした後、おかしな事を言う奴だと新羅を見た

「そんな人、いるわけないだろ?」

強気に本気で新羅を見据え、心底当たり前だと思っている事を言った

(いるじゃない一人だけ……)

新羅は溜め息を吐いた

(静雄は、君を傷付ける自分が大嫌いだよ……)

なんて

(言ってやれる程、君は自分に自信は持ててないよね)

「あーもう!やってらんない!!今夜は飲むよ!!」
「悪いけど一人で飲んで?セルティに怒られそうだから」


しかしこの後すぐ帰ってきた首無しライダー兼同居人に臨也は新羅と共にお説教をくらうのでした



end