会えばすべて好きに変わる
匿名様リクエストです。誠に勝手ながら匿名様リク【キミニイウノ】の後編とさせて頂きます



静雄は問う

「この空の弁当箱はなんだ?」

遊馬崎が答える

「えっと……臨也さんが静雄さんの為につくった料理が入っていたものです」

静雄はまた問う

「ノミ蟲のこの格好はなんだ?」

今度は千景が答える

「コイツに頼まれてお前好みの服をコーディネートしてやったんだ」

そして静雄は静かに怒りを湛えながら、こう問うた

「どうしてそれをお前達が味わってんだ?」

それはお前が誕生日にコイツをほったらかしにしているからだろう、と心のなかで突っ込んだ
そして怒りを向ける相手が違うだろうとも思う
……ていうかよ

「臨也大丈夫か?」

静雄が突然出現した際、逃げようとしたとこを気絶させられ、そのまま静雄からガッチリホールドされている臨也について訊ねた
いつものコイツならあれしきの攻撃で気絶させられるとは思えない、やはりここ一週間の仕事量が祟っているんだろう

「……大丈夫だろう」
「そうか」

なあ静雄よ、お前そんな優しい目で見れるような相手を気絶させんなよ、いきなり逃げようとしたコイツも悪いがよ
そして静雄からは死角にいるが狩沢、そんな美味しそうな食材をみるような目で俺の元同級生達をみるな

「で?……どうして此処が解かったんだ?」
「その前に俺の質問に答えろよ……どうしてお前らがノミ蟲と一緒にいるんだ?」

マジギレ寸前といった感じでこめかみをピクピクさせながらも一応笑みの形をとっている静雄の顔は……
ハッキリ言って般若の形相で俺たちに泣きついてきた朝の臨也よりも怖ろしかった
付き合うようになってだいぶ落ち着いたと思ったんだが、コイツら本当に仲良くても悪くても周りに迷惑かけるんだな

「臨也に頼まれたんだよ、静雄にドタキャンされたから代わりにデートしてくれって」
「でぇとだぁ??」

やべ、デートはマズかったな……だが臨也からそう言われたんだから仕方ないだろう

「ていうかドタキャンってどういう事だ?」
「は?お前職場の人が祝ってくれるからって臨也との約束断ったんじゃねえのか?」
「断ってはいねえよ、祝うって言ってもいつもの飯が少し豪華になるくらいだから……少し遅れるだけだって言っておいたんだけど……」

そう言って腕の中で気絶中の臨也に目線を落とす
どういうことだ?今朝の臨也の話じゃ完全にほったらかしにされた筈じゃ

「あ、コイツの助手が言ってたのってまさかこういうことか」
「へ?」
「いや、約束の時間になっても現れねえし電話も繋がらねえからコイツの事務所に行ってみたんだよ」
「ああ」
「そしたら助手の波江さんって人が『折原は昨日壊れて今日は朝から外出中です。用があるなら発信器を渡すから自分で捕まえて下さい』だと」
「壊れたって?」

ていうか助手に発信器付けられる情報屋って……いや多分わざと付けられてんだろうが
成程、静雄が此処を探し当てたワケが解かった(多分発信器無しでも野生の勘で見つけられそうだが)

「俺もきいたんだ、そしたら『一週間不眠不休で働いていてただでさえギリギリの精神状態だったのに、更に追い打ちをかけるような連絡が入ってきたみたいです。プライベートで』と……」
「ああ、その連絡がお前からの『職場で誕生日祝ってもらうから少し遅れる』ってやつだな」
「でも臨也さん壊れてたから最初の方しか聞いてなかったみたいですね」
「そして暴走してこんなことに……」

俺と千景はガックリと肩を落とした
狩沢と遊馬崎はコソコソと「勘違い萌え」「すれ違い萌え」なんて話しているが……なんだそりゃ

「そりゃまた迷惑な……」
「わ、悪かったな」

事態を把握した事でだいぶ怒りの収まっている静雄が謝罪の言葉をかけてきた
いや、この場合悪いのは臨也だろう……

「でもなんでそんな壊れるほど仕事してたんだ?」

……と、思ったがこの一言は頂けない
お前の誕生日を休みにするためだろう?と俺が口を開こうとした瞬間

「お前は馬鹿か!!!」
「あ?」

千景がキレた
おお、流石女の味方……って臨也女じゃねえよ

「おい!千景!?」

昔のキレっぽい静雄を知らないとはいえ静雄を馬鹿呼ばわりするなんて命知らず、臨也ぐれえなもんだぞ!?
ってそれより千景が危ないと、すぐさま静雄を宥める体勢に入る遊馬崎、狩沢、渡草の三人
……お前ら(こんな時になんだがジ〜ンときてしまった)

「お前が誕生日に携帯の電源切っとけなんていうから今日なんの連絡も入って来ないように頑張ったんじゃねえか!!」
「え?あれマジにしたのか?コイツ……」

あー静雄もまさか本当に臨也が携帯切るとは思ってなかったんだろう……ちょっとカチンときた

「……そう言えば他にもお前の為に色々準備していたと言っていたな、料理だって俺達が食べた弁当より美味いもの作るつもりだったろうし、普段より素直になって彼氏サービスしてやろうと思ってたと言っていたな」
「なっ!??」

静雄は驚いた後、頭を抱えて残念がっているようだった
更に追い打ちをかけるように千景が言った

「今日一日楽しかったなあ……この人、俺や狩沢が良いっていった服なんでも着てくれたし、初めてみる仕種とか普段みれないような可愛い姿みれたし、狩沢なんかお姫様扱いだったしな」
「そー、ろっちーとダブルで優しくエスコートしてくれたんだよ!」

ニコニコしながら報告する狩沢に静雄が一瞬怒気を向けたが、まさか嫉妬を理由に女殴るような奴じゃないのでほっておく(遊馬崎は焦って狩沢を避難させたが)

「もったいないことしたなあ静雄」
「チッ!!」

静雄は盛大に舌打ちを吐いた
本気でもったいねえことしたって思ってるんだろう、そんな顔だ
これはちょっと可哀想かもしれねえなあと、思っていると

「もー……みんなそんなにシズちゃん苛めないでよ」
「!!?」

静雄の股の間にいた臨也が寝起きとは思えない流暢な口調で言い出した
目もパッチリ冴えているし、コイツまさか気絶した振りしてたのか

「シズちゃん苛めていいの俺だけなんだからねえ」
「い、臨也」
「おはようシズちゃん、そして改めまして誕生日おめでとう」

至近距離で……見た事の無い様な満面の笑みを浮かべた臨也を見た静雄は、心なしか頬を赤く染めていた

「ごめんねー勘違いしちゃってたみたいで……俺」
「いや、俺の方こそ……ていうか俺の為に色々用意してくれてたみたいなのに気付かないで」
「あはは誕生日にすること全部気付かれてたら逆に困るってー」

抱きあいながら和やかな会話をする戦争コンビを俺達三人はポカンと見詰めていた

「臨也、携帯切ってて本当にいいのか?さっきまで連絡つかねえでイライラしていたが俺との約束の為だったんだな」
「あたりまえだろ?ていうかシズちゃん信じてなかったの?」
「悪ぃ……手前が仕事より俺を優先するとは思えなくて」
「ったく……普段が普段だから誤解してるかもしれないけど……俺、仕事か趣味かシズちゃんでいったら、仕事よりシズちゃんが大事なんだからね」

暗に趣味が一番大事って言ってる気もするが、まあそれは置いておこう
それよりも、自分の勘違いだったとはいえ臨也がこんな素直に謝ったり許したりする光景が信じられなかった

「ねえイザイザー本当にもういいの?さっきまでずっと怒ってたじゃない」

と、俺の想いを代弁してくれるかの様に狩沢が聞いてくれた

「うん、いいんだ!っていうかシズちゃんの顔みたらそんなのどうでも良くなっちゃったよ」
「……ッ!!臨也!!!」
「シズちゃんが俺を此処まで追いかけてくれたのも嬉しいし、ちゃんと誕生日おめでとうって言えたのが嬉しい」

ムカムカしてたのも会ったら全部好きに変わっちゃったよ!と言って笑う臨也を静雄はギューっと抱きしめた

「痛い痛い!もー馬鹿が!!」
「臨也……ほんとありがとう、そしてゴメンな……手前の誕生日はぜったい一日中傍にいてやるから」
「え!?マジで!!?」
「ああ、大マジだ」
「やったー!シズちゃん!俺君の事そこまで嫌いじゃないよー!!」
「ああ、俺も手前のこと別にそこまで怨んじゃいねえ」

なあ、それがお前らにとって精一杯の愛の言葉なのか?お前らの醸してる甘い雰囲気と台詞がまったくそぐってないけど……
まあ狩沢なんかは目をキラッキラさせながら何時の間にか取りだしたカメラで二人を撮影し始めてるし、千景も「うんうん良かったな」なんて頷いてるし、遊馬崎は軽く拍手なんてし出したし……コレは一件落着ってことでいいんだよな?

「ねえ門田さん……コレって突っ込んだら負けな雰囲気ですか?」
「多分……」

唯一同じ感覚を持っていたらしい渡草と共に、俺はもう一度大きく肩を落とした

なあ臨也……静雄……厄介な相手を恋人にしちまったお前ら自身もそりゃあ大変だろうが
毎回お前らの問題に付き合わされるコッチの身にもなってくれ




END



バカップル=迷惑なカップルでいいんでしょうか?
この二人はデレても甘くならないイメージなのでちゃんとリクエストに沿えたかどうか解かりませんが
よろしかったら貰ってやってください

ていうか勝手にワゴン組とろっちー仲良しみたいにしてしまって申し訳ありません
狩沢さんにはろっちーって呼ばれてて他のみんなからは名前(遊馬崎さんは+さん)で呼ばれてて欲しいです