素敵で無敵なラブハンター
結理様のリクエスト




恋をすると人は変わるというが、臨也ほど顕著な奴も珍しいと思う
いやそう言れるほど人間を見てきたわけじゃないが……ここまで解り易い奴はネトゲしててもそうそう出会えないぞ?

だってなあ……


『最低な奴だな。お前は』
「ふーん、俺の事よく理解してくれてるみたいで嬉しいよ」
『……可愛げもないのか』
「ははは、それもよく言われるよ」

これが数ヶ月前までのアイツとの会話だ
あの頃は私も臨也も景色も雰囲気も全てが真っ黒だった

それが

「……」
『どうした?なにか悩みでもあるのか?』
「いや、あのさあ……シズちゃんにプリン作ってみたんだけど……重いって思われてないかな?」
『え?いや普通に喜ばれるんじゃないか?静雄は甘いもの好きだし……というかお前よく新羅には治療の礼だとか言って持ってくるじゃないか』
「新羅にあげるのとシズちゃんにあげるのじゃ重みが違うだろ!!ってやっぱり重いよな……これやっぱ新羅にあげるよ、はい」
『いやいやいやいや!ちょっと待て!静雄にあげる筈のものだろう??やめてくれ新羅が殺されてしまう!!』
「は?誰に?」
『静雄に決まってるだろう!!』
「なんで?」

ああなんかもう静雄と付き合い出してから劇的に変わったな、色はほんわか春色だ

『静雄が嫉妬するだろう?』

そう言うと臨也はカァアアアと効果音がなりそうな勢いで顔を真っ赤に染めた
……どこの恋する乙女だ……お前は立派とは言えないが成人男性だろ

「……シズちゃんが嫉妬なんて、そんな……」

どうしよう、やっぱり恋する乙女にしか見えない、なんというキャラ崩壊だろう
コイツが静雄と付き合い初めの頃は静雄が騙されてると思って何とか別れさせようとしたものだが、とんだ取り越し苦労だった

ていうか別れさせなくてよかった

新羅に「あのねセルティ、僕だって臨也の全部を信用してないし、アイツがただで教えてくれることなんて絶対信じちゃダメだけどね。静雄への恋心を疑うのだけはやめてあげて」と言われるまで気付かなかったが臨也は静雄に本気だ
新羅が他人の事で私にお願いするなんていう天変地異が起こるくらいには……

「……」
『どうした臨也、まだ他に悩みでもあるのか?』

最近の臨也はなんというか、ほっておけないオーラを発している、今みたいにちょっと伏見がちに俯いていたりするとつい構ってしまう
この気持ちが人間でいうところの庇護欲とか母性本能なんだろうか?

『ここじゃ話しにくいだろうからウチに来るか?』
「…………うん」

コクリと頷いて黙って付いてくる臨也はちょっと小動物みたいで不気味だった

家につくと丁度、杏里ちゃんが遊びに来ていた
杏里ちゃんは臨也をみて一瞬ビクリと震えたが、私も一緒なのを見て大丈夫だと思ったのだろう、すぐに落ち着いて挨拶を交わしていた
というか静雄と付き合い出してからの臨也はそこまで警戒しなくてもいいという認識なのかもしれない

「あの、さ……」

それから暫く私達が(というか殆ど新羅が)自由に話していると、臨也がおずおずと話しかけて来た
そうだ、コイツの悩みを聞くために連れてきたんだった

「普通、付き合ってどれくらいでキスとかすんのかな?」

……は?

「いや……えっと……」

いや……えっと、じゃない
コッチが困るわ!!そんな反応!!

「……あの?臨也さん……ひとつ聞いてもいいですか?」
「ん?なに?」
「静雄さん以前にお付き合いされた経験は?」
「……」

な い の か !!?

『本当か!?あの折原臨也が?あの老若男女来る者拒まず去る者後追わずな折原臨也が!?あの寂しがりで人間大好き病の折原臨也が!??』
「本当だよーセルティ、コイツねー高校時代から静雄一筋なんだ」
「新羅!!!」

臨也が新羅に怒鳴った為、隣にいた杏里ちゃんが驚いてちょっと罪歌が出そうになっている(早くしまって!!)

「みんな臨也はビッチだって誤解してるみたいだけどね、静雄も含めて」
「……」

静雄も含めて、と聞いて臨也の顔が曇った
でも大丈夫だと思うぞ?今のお前を見ていれば静雄だってそれが誤解だったと気付いているはずだ!!

「もうなんか厭だ……俺シズちゃんといると駄目になる……」
『いいや!そんな事はない!どっちかっていうと静雄がいない時の方が駄目だ!』
「フォローになってませんよセルティさん!!……まぁ概ね同意ですが……」
「ははは!杏里ちゃんも言うようになったねー?帝人くんの影響かい?」
「な、何を言ってるんですか」

杏里ちゃんにセクハラ発言をしている新羅を軽くいなして私は臨也に向き直った
私達のせいで更に真っ赤になりながらプルプルと震えていた
どうしたんだ私……臨也が可愛いとかもう人としておかしいんじゃないか……や、そもそも人じゃないけど
ふと横を見ると杏里ちゃんも同じようにノックアウトされていたので良かった私はまだ正常だと思えた

「シズちゃんはさ、俺がそういうのに慣れてないの知ってるから無理に迫ってきてくれないけど……本当は我慢させてんじゃないかなって」
『それが悩みか』
「まあ恋人が嫌がってるのに無理強いするような奴じゃないもんね」
「別に嫌がってるわけじゃ……」
「わかってますよ、それにしても静雄さん優しいですね」
「でしょ?杏里ちゃん……でも俺は我慢させるくらいなら無理やり迫ってきてくれた方がいいかな?俺からいくってのはちょっと無理だから……」
『焦る事ないだろ?折角静雄が気を使ってくれているんだし』
「俺は別にシズちゃんに優しくされたくて好きになったんじゃないし……理由はハッキリ言えないけど好きだから好きなんだよ」

……驚いた
まさか臨也の口からこんなに素直に好きっていう言葉が出てくるとは思わなかった

「クス……そういうのもっと静雄の前でも言ってあげたらアイツも我慢しなくて済むんじゃない?」
「うっさいな!!相手がシズちゃんじゃなかったらもっと素直に言えただろうけど、好きなのはシズちゃんだから仕方ないだろ?」

相手が新羅だからか知らないがやけに素直に好きを連発してるな……今度静雄に教えてやろう

「静雄が迫ってくるの待つより君がもっとスキンシップに慣れる方がいいんじゃない」
「うん……そうなんだよな結局、でもさ!?あのイケメンフェイスとイケメンボイスが俺を恋人扱いしてくんだよ!?耐えきれるわけないじゃないか!!」
『意味がわからん』
「セルティは意味わからなくていいよ」
「今まで険悪な関係だったから余計に優しくされるのに慣れないんでしょうね……」

珍しく杏里ちゃんもよく喋るな、ていうかいつも私や新羅が喋り過ぎなんだけど、この子も臨也を応援したいと思ったのかな?
確かに今のコイツは可愛いから仕方ない

「と、とにかく早くなれないとねっ!折角両想いなんだから、付き合ってもらえてる内に……」
『それ、どういう意味だ?』

乙女で初心な臨也は可愛らしいが不安を口に出すのは腹立たしい、その言い方ではまるで静雄がすぐに飽きて臨也を捨ててしまうみたいじゃないか

「ううん、別にシズちゃんを信用してないとかじゃないから安心して」
『そうか……』

なにか事情があるんだろうな、と思った
もしコイツやみんなにとって都合の悪い事情なら静雄にも話して阻止しなければ

「よし、じゃあそろそろお暇するよ!お邪魔して悪かったね」
『え?もう帰るのか!?』
「そっかーまたね臨也、今度は手土産よろしく」

新羅、そんなこと言ったら静雄に殺される……あ、そういえばコイツ結局プリンはどうするつもりなんだろう?

『送っていこうか?』
「いいよいいよ、運び屋は杏里ちゃんも送っていかなきゃだろ?」
『しかし……』

私の仕事相手の間でも最近腑抜け気味って噂される臨也を一人でふらふら歩かせるのは危険だ
だからいつもは「臨也なんてほっときなよ」と止める新羅も止めないんだと思う

「大丈夫……それに、すぐ近くだし」
『ん?』

臨也は少し俯きながら、恥ずかしそうに頬をかいた
そのまま私たちを見てはにかんだままの顔で言う


「なんか君達と話してたらシズちゃんに会いたくなっちゃったよ」


……ごめん新羅、今お前以外の奴にちょっとだけときめいてしまった


それから数日後
街で隣りあって歩く臨也と静雄を見かけた
臨也は静雄が触れる度に過剰に反応し、静雄はそんな様子を楽しそうに愛おしそうに見詰めていた

傍から眺めているととてつもないバカップルだ

臨也はいっぱいいっぱいになっていて私に気付いていないが、静雄は私に気付いて一瞬だけニコっと笑った
……ごめん新羅、またお前以外の奴にちょっとだけときめいてしまった……
だって、静雄確実に男前度増してるだろ?なんだあれ臨也効果か???

まあ臨也もどんどん可愛らしくなっているから(それは男としてどうなのだろうと思うが)お似合いだ

ほんと、早く慣れるといいな臨也





もう暫くはそんなお前をみていたい気もするけど



END




結理様のリク『シズイザの恋人設定(なってからまだ日が浅い)周囲もシズちゃんもビッチと思っていたが、実はそんなことに全然免疫がなくて少しの接触でも真っ赤になって初々しい可愛い反応を見せる臨也さんvそのギャップにシズちゃんはおろか周りも萌え死にしてしまう』でした〜
相変わらずシズちゃんの出番少なくてすみません……この場にシズちゃんいたら多分ずっと萌え萌えしてるんじゃないかな?って思います