匿名様リクエスト:サソデイ+天国組で恋人自慢話(対談)
今回は旦那に惚気て頂きました



サソリが死んで暫く経ち、地獄にも幾分慣れて来た頃、閻魔は閻魔庁へサソリを呼び出した

「あーサソリさん!!よかった!来てくれないかと思った!!」

閻魔の自室の前に立つと中からそんな声が聞こえ、扉がひとりでに開いた

「しかもこんなに早く来てくれるなんて!!」
「緊急だと言ったのはソッチだろう……人を待たせんのは苦手だからな……で?俺に頼みたい事って何だ?」
「そうそう、オレ今超困ってんだ」

閻魔に手を引かれ部屋の奥へ入ると、床に閻魔の等身程の大きな鏡が置かれていた

「これは?」
「“浄瑠璃の鏡”だよ、亡者が生前に為した善悪総ての所業を映し出す事が出来る鏡、審判の時に使うやつ」
「……俺の時には使わなかったと思うが」
「そりゃ君は見るまでもなく悪人だったし、これは裁判で嘘を吐いた人専用だからね」

ふーん、と興味なさげに呟きながらサソリは鏡を持ちあげる
面からはただの楕円の鏡だが、裏は蓮の花と鳳凰が装飾されていてサソリの目にも美しい

「頼みっていうのはね、それを支える台座を直して欲しいんだ……ちょっと壊しちゃって……獄卒に頼むと鬼男くんにバレて怒られるからサソリさんにお願いしようかと……」
「お前には威厳ってもんがないのか」
「鬼男くん以外にはあるんだけどねぇ……兎に角お願い!お礼に後で“浄瑠璃の鏡”見せてあげるから!!」
「は?なんでそれが礼になるんだ?」
「裁判以外の時に見ると結構面白いんだよー?人の為した善悪総てだから悪い事ばっかじゃないし」
「フン、まあ……いいぜ、これくらいの事ならな」

地獄へ来てから傀儡も作っていない、そろそろ何か作りたいと思っていたところだ
たとえ修理の為でも道具を使えるのは嬉しかった

「ありがとう!!」

だがその修理も一時間もしないうちに終わってしまった

「ちっ……つまんねえ仕事だったぜ」
「まぁまぁそう言いなさんな、約束通り鏡みせてあげるから」

そう言って直ったばかりの台座に鏡をのせる、やはり大きいと思う

「ほら始まったよ」
「……」

鏡の中にサソリが生まれた時からの映像が流れ始めた
『天の目線』というのだろうか其処には自分が見ていない事や憶えていない事まで映し出されていた

「サソリさんも昔は天使みたいだったんだねえ……お父さんカッコイイしお母さん美人だし」
「……」
「ああ、ここから君の人生は狂い出したのか」

鏡にはサソリが両親を失い里の悪習に身を染めていく姿が移っている
こうして自分を客観的に見ると、なんて弱くて可哀想なガキだったんだろうと思う

「こうして見ると君を地獄に落として良かったってつくづく思うよー」
「うるせえ」

場面は暁に入隊した頃へと移り変わる
何も信じず、仲間と群れず、ひたすらに己の芸術に没頭していた

「いつからだろうね?君が変わったのは……」

言われるまでもなく解かっている
あの時からだ

あの子供と出逢ってサソリの人生は色付いたものに変わった

『ちょっと待ってよ!!ったくアンタ勝手だなぁ……もう』
『旦那!!決めた!!アンタはオイラの旦那だ!!』
『なぁ見てくれよサソリの旦那ー!!』
『オイラの芸術を馬鹿にしたら、いくら旦那でも許さないぞ!!』

映し出された映像は、憶えているものもあれば忘れてしまっているものもあった

そして、自分も知らない出来事も

『旦那、オイラは旦那が好きだよ……なんて、言ったら笑われちゃうかな……うん』

デイダラがずっと自分をあんな顔して見てきた真実を初めて知る

『なっ!?付き合えってなんだよ!!なんで命令口調!?』
『うっせえ、いいから俺のもんになれ!!』
『……しかたねえなぁ』

そう言った後、自分が見えないところで嬉しそうに泣いていたなんて

『嘘……夢みたいだ……旦那がオイラの事……』



「嘘じゃねえよ」

鏡の中にいる愛しい子供を抱きしめてやりたくなった
もう遠い過去の出来事だけど

「サソリさんは本当にこの子の事が好きなんだねー」
「……」
「今の顔みてたら解かったよ」
「当たり前だろ?コイツは俺を変えてくれたんだ……」

心ない人形になりたくて、なれなかった事への苛立ちや
いつまでも見えてこない永久へ対する焦燥感
誰も信用できない孤独が

あの子供に逢って全く違うものへと変わった

「俺はコイツに感謝してて、失いたくないと思っていた、だから世界中のどんなものからも護りたかった」

鏡の中では疲れ果てて眠るデイダラに寄り添い、誓いを立てるサソリがいた

「俺は確かに、あの子供を……あの人間を愛していた」

ポタリと
水滴が手の甲に落ち、サソリは自身が涙を流している事に気付く

逢いたい
逢って、同じように泣いている……いやきっと泣けなくなっている抱き締めてやりたい

「……ここは死者が来る世界だからさ「早く会えるといいね」なんて言えないけど」
「閻魔?」
「……絶対いつか逢えるよ、君がずっと憶えてたら」
「憶えてるに決まってるだろ、忘れらんねえよ……アイツの事だけは」

すると閻魔は「こりゃーあてられちゃったな」などと言いながら、黙って二人の思い出話を聞き続ける事に決めた

本当は知っている閻魔帳に書かれているから


彼と 彼の愛する人との 再会の日は もう目前に迫っている



END

コレは『対談』と言えるんでしょうか……会話文多いからいいのかな?
さて天国組にカップリング指定がなかったので今回恋人自慢は控えさせて頂きました
結果鬼男くんが名前しか出てきませんでした……すみません鬼閻仕様でよければリテイク受け付けます