その日ちょっと大きめの地震がありました
震度は五くらいでしょうか?
おさまったところで火の元の確認
そしてすぐさま携帯に電話です


「妹子!無事!?」

「あ、閻魔?助けてくれ」

そう言われ妹子のバイト先へ急行
電車も地震で止まっている可能性があるので自転車で全力疾走です

「妹子!無事!?」

書店のドアをどばーんと開け先程電話で言った台詞と同じ事を叫びます

「うん無事じゃない」

そう答える妹子はどう見ても無事です
閻魔はそれを突っ込もうとしますが息が上がっています
大変苦しそうです
どっちかというと閻魔の方が無事じゃありません

「大丈夫?閻魔?自転車できたの?このクソ暑い中?」

「ハァ……ハァ……い、妹子が」

閻魔は息を整えながら恨めしい目で妹子を睨みます

「助けてって……言ったんでしょうがぁぁぁあ!!」

「あ、ごめん」

「もぉー……心配したんだよぉ……あれから電話切れちゃうし」

「ごめんごめん……まぁ災害時は電波悪くなるよね?みんな大事な人に掛けたりするから」

閻魔は俯いたまま何も言いません
それを怒っていると判断した妹子はまた謝ります

「だから悪かったって、そんな怒らないでよ閻魔、助けて欲しいのも本当なんだから」

「ん……なに?」

「見てこの惨状」

店の中は倒れた本や本棚などでとてもゴチャゴチャしています
閻魔は妹子が無事で良かったと改めて思いました

「……で?」

「片付けるの一人じゃ無理、手伝って」

「いやだよ……早く帰って自分んち片付けたい」

「じゃあ閻魔んちは僕も手伝うから、ね?此処片付けて僕んち片付けて閻魔んち行こう」

「なにさり気に自分んちも数に入れてんの!?しかもオレ最後にされてるし!」

「だってアンタんち物少ないから楽でしょ?」

「それはそうだけど……」

明らかに自分が損をする話なのに納得しかかっている閻魔
こういう人をお人好しといいます

「給料入ったらカツ丼奢るから」

絆されそうな閻魔にさらに追い討ちをかけます
何故カツ丼かというと安くて美味いものと言ったらこれしか思い付かなかったからです

「パフェも付けるから」

カツ丼と合わせてボリューム満点です
これは閻魔が食べきれなかった分は自分が貰おうという心算でしょう

「わかった……あと帰りの自転車、妹子が漕いでね」

食べ物につられて結局手伝うことになりました

「うん、ありがとう閻魔」

「あとどうせ今日はうちに泊まるでしょ?明日のゴミ出しお願い」

「え?」

妹子は露骨に嫌そうな顔をしました

「お味噌汁、妹子がすきな具にするしツナおにぎり作ってあげるから」

「いや別にそんなツナ好きじゃないから、それにそのツナは元々僕からのお裾分けでしょ?」

正確には誕生日に太子から貰った大量のツナ缶を一人じゃ食べきれないからと閻魔に回したのです

「まあ良いじゃん、そうと決まればさっさと片付けよう!」

「ん?なんか嫌がってた割にはノリノリだね」

「そんなことないよ!オレ今超不機嫌」

「そうは見えないけど」


と、言いつつ妹子も上機嫌です
成り行きとは言えお泊まりの約束が出来ました

妹子は散らばった本を拾いながら横目でチラッと閻魔を見ます
閻魔は本の背表紙を見ながら作者ごとに纏めて床に置いていってます

(閻魔も同じ理由でご機嫌だといいけど……)

今日また何度か地震があるかもしれません
そんな時に傍にいられれば少しは安心です

「あ……」

「なに?」

「やっぱり妹子んちの片付けが先でいいよ……んで今日はうちに泊まってきなよ」

妹子は最近になって我が家を耐震補強したことを思い出しました

そんなことを知らない閻魔の機嫌は急降下、頬を膨らまして言いました

「そんなに朝のゴミ出しがイヤなの?」

そんなわけで妹子はこれから恥ずかしながらも理由を説明し
閻魔の機嫌を直さなければならなくなりましたとさ


めでたしめでたし?













《オマケ》

片付け始めて暫く経った頃、閻魔は訊ねました

「ところで主人は何時頃帰って来るの?」

買い出しかなにかで出掛けているのだろうと思っていたのですが少し気になります

「ああ、太子ならそこの本の山に埋もれてる筈だよ」

「!!」

もう一度言います今“片付け始めて暫く経った頃”です

「なんで早くそれを言わないの!?」

「大丈夫、あの人よく本棚に挟まったりしてるから」

「このバイト鬼だぁーー!!?」


丁度この日、妹子と太子は喧嘩中でした(百パーセント太子が悪い)




おしまい