僕は知らない事が多すぎるから
きっと知らない内に誰かからバカにされてるんだろう
しかしそんな事など知ったこっちゃない

どうせ全てを知る事など不可能なのだ
僕は僕が必要だと思った知識だけ取り入れていればいい

敵の多いアンタを守る為の知識さえあればいい

みんな自分と“違う”からという理由でアンタを否定する
自分にとって都合が悪ければ排除しようとする

それに酷く憤りながら、同時に何とも人間らしい健全な思想だろうと思う
同胞に対してこのような感情を向ける僕の方が不健全なのだ

「君の気持ちはとても嬉しい……でも君は人間だ。人間より大切な存在を作っちゃいけないよ」

そんなの誰が決めたんだ
確かにアンタが他の神仏なら拝み崇める事しか赦されず、大切に想う事など烏滸がましいと言われるだろう

しかしアンタは違う
僕の特別だ

そう思っているのが全人類なら問題だが、僕一人くらいなら構わないだろう

「……それでも……他の神を冒涜するのは良くないよ」

「先に冒涜したのはアッチでしょ?まぁ悪いのは神の名を語って争いを起こす人間だけど」

「人間を悪く言わないで……」

ああ……またアンタって奴は

だいたい放っておいてくれればいいんだ
世の中には色んな考えの人がいて、それぞれ譲れないモノを宝物のように持っているんだ

理解出来ないなら関わらないのが一番なのに何故わざわざ攻撃するんだ

無益な争いは避けるべきだろう

「彼らにとっては無益ではないのかもしれないよ」

巨大な力に恐怖を感じたのかもしれない
逃げられないと感じたのかもしれない
戦う事こそ正義だと思ったのかもしれない

「……あの人達は解ってない」

自分が亡くなってどれだけ周りが悲しむか

「君は本当に優しいね」

気が付けば涙が出ていた
己が原因で人死が出たアンタの方が辛い筈なのに
人間を誰より愛してるアンタの方が泣きたい筈なのに

「大丈夫……オレに彼らの魂を裁く事は出来ないけど……安息を願うくらいならできるから」

彼らの神がそれを聞き入れてくれるか解らないけど

「違……僕はあの人達が憎いんだ……怒ってるんだ」

ただ

あの中に幼なじみがいた
近所に住むおじさんもいた
見たことのない若い子もいた

「可哀想だと思うけど……」

それでもアンタに刃を向けた事が許せない
アンタが何をした?ちょっと神様なだけだろう?それなのに何故こんな目に遭うんだ?

「ちょっと神様なだけって……」

畏れ知らずだと自分でも思う

「アンタは……僕の友達だ」

宗教に拘らない僕にとって“神様”よりも敷居が高い“親友”だ
魂を消されても地獄に堕とされても構わない
何が無くてもアンタが居る所が都なんだ

「結局……妹子もあの人達と同じじゃない……自分勝手でオレを苦しめる」

「うん、でもだから」



アンタも僕に縋っていいんだよ