誰が聞いても戯言なんだろうけど
それを言い合える関係が大切で仕方がない

ちょっと上から理不尽に怒られてイライラして無性に妹子の顔がみたくなった
顔をこそっと見てすぐ帰る心算だったのに何故か見つかって捕まってしまった
ちなみに只今強制的に猫姿にされてるオレ

「閻魔のこと僕が貰ってあげるよ」

「はぁ……って、はぁ!?」

「だから閻魔のこと貰ってあげるって」

妹子の隣でのほほんと寝っ転がっていたら急に持ち上げられて言われた
今まで何の話をしていたか吹っ飛んでしまったが多分これとは全然関係ない

「なに言ってんの?」

仰向けの状態でオレを持ち上げているから妹子のおでこ丸出し状態の顔が正面にある
やっぱり顔は良いんだよね妹子、性格も良いんだけど時々おかしなことを言うから困る
今の発言だって脈絡というものが全く感じられないし……こんな時の妹子はなんていうか怖ろしい

「貰ってあげるよって、オレを?」

「そうだよ何度も言わせないでよ恥ずかしい」

いや妹子ぜんっぜん恥ずかしがってないから!
まぁそりゃ恥ずかしがるような甘い間柄でもないけれど

「どういう意味なの?それ」

「いらないものは全部寄越してきていいよって意味……まぁそのままの意味でとってもらって構わないけど」

また真面目な声で言うもんだから無意識に溜息が出てしまった

「なんだって急にそんなこと言うの?」

そんなオレを見て楽しそうに笑う妹子、勘弁して欲しいなぁというのが正直な感想

「だって僕が閻魔にあげられるものなんて何もないでしょ」

「いいえ結構貰ってるんですけど……」

妹子と友達になれただけでオレは幸せだと思う
こうして厭な事があった時に一緒にいて愚痴聞いてもらってるだけで満たされてる

「僕に閻魔は救えないでしょ?」

「救われてるよ!充分!!」

「それでもいつかは消えて無くなるものだと思ってるでしょ?」

「……違う」

忘れない、絶対忘れない……きっと妹子がいたっていう想い出だけで頑張れる
それに妹子言ったじゃない『これからも大切な人つくってもいいんだよ』って言ったから
これからも大切な人をつくって、その想い出で頑張っていける
そう思えるようになったのは妹子のお陰なんだよ?

「わかってないなぁ閻魔は……アンタは閻魔大王なんだよ?」

言葉が出なかった

「僕が閻魔と同じ舞台に立つのは無理だし」

わかってるよ
確かに妹子の前だと自分の立場を忘れてしまうけど……だけどそれこそが最大の救いなのに……

「本来この世の総てをもってしても、命以上のものを賭けたとしても届かない存在なんだよ?」

「……妹子ぉ」

それ以上は言わないでって心の中で言ったら、妹子はクスリと笑ってオレを胸の上に降ろした
そして頭を撫でられる

「だから僕のものになりなよ、世界中が認めてくれなくても僕と閻魔だけがそう思ってたら」

“そうなるから”
本日最初の笑顔以外の表情を見た

「閻魔は僕の所有物、僕が地獄に堕ちようが虫けらに生まれ変わろうが未来永劫にね」

ほら、やっぱり妹子はオレが欲しいと思った言葉をちゃんとくれるじゃないか
なのになんで何もあげられないとか救いになれないとか思っちゃうのかな?

「ちなみに僕は既に太子のものだからあげられないよ?」

「……じゃあオレも太子の方がいい」

ああオレの馬鹿、泣きそうなのを誤魔化す為の言葉なのに涙声だったら意味がないじゃないか

「駄目だよ、そしたら閻魔の秘書さんも僕のものになっちゃうよ?」

「うん、それはダメだね」

鬼男くんはオレだけのものだから

「本当にオレのこと貰ってくれるの?」

「まぁしょうがなくだけどね」

妹子の掌に押されて胸に顔を埋めさせられた
息苦しいけどとても暖かくて気持ちいい
この体が消えてしまってもオレはこの人のものなんだなぁ

「オレがいらなくなっても他の人にあげないでね」

「大丈夫、魂消えても解放してあげないから」

「魂消えても?」

ついつい笑いを漏らしてしまった
当たり前だよ……妹子が消えてもオレの中の妹子がいなくなる訳じゃないから

「言っとくけど“閻魔の魂が消えても”だからね」

「……」

思わず面を上げると今まで見たことないような優しい微笑みがそこにあった

「自惚れないでよ……オレより永く在り続けられると思ってるの?」

「閻魔こそ自惚れないでよ、アンタ基礎は人間なんだから」

想いの強い方が勝つんだよって妹子が言った
いつの間に勝負事になったんだか

「ありがとう」

でも結局オレに甘い妹子にね
オレは永遠に敵わないんだろうなって思う

「きっとオレの想いも同じくらい強いよ」

「じゃあ消えるのも一緒だね」

「うん」


それでは何億光年先になるか解からないその時まで

今日のこの日を記念とするのはどうでしょう?



名づけて『戯言記念日』






END