願うまでもなく叶えられる望みは

アンタがいつまでも僕を欲しがっていてくれること

生きていくのに必要なものが何も無いアンタが僕なしじゃ生きていけないこと

アンタが僕の死を恐れる度に死ぬまで見守ってくれるつもりなのだと思って安心する


ほら、今もそう
じっと見詰めては溜め息を吐いて目を逸らす
気付かれないようにしてるみたいだけど無駄だよ

ちゃんと見てるから

僕の心に踏み込んでくるのを待ってるのに
ずっとずっと怖がってるんだね
早く安心させてあげたいけどなんか勿体なくて
そんな閻魔をまだ見ていたいと思える

もどかしさに、胸がピリピリする

普段はなに考えてるか解らない……きっと小難しい事ばかり考えてる頭が……少なくとも僕といる時は僕だけに集中してる

それが純粋に嬉しくて幸せだと感じた

傍にいるのはきっと僕が自分を傷付けてないと信じてるから……
ううん、きっと傷付けても戻ってくるよね
無意識に無邪気に『君が必要なんだよ』って伝える為に僕の前に現れて震える手で柔らかく触れる
そしたら僕は「どうしたの?」って抑えきれないくらい優しい声で言うんだ
閻魔は「なんでもない」ってバレバレの嘘を吐いて、僕はそれに苦笑する

そんなのつまらない妄想だけど
でも、僕が妄想する閻魔は現実とハズれた試しがないから

「妹子どうしたの?さっきから……」

怪訝な眼差しを送ってきた閻魔に

「太子のこと考えてた」

って言えば少し悲しそうな顔をした
そんなの僕が喜ぶだけなのに閻魔は少し拗ねたように背中を向ける

「ウソ、閻魔のこと」

「…………もう」

溜め息を吐かれても厭な気はしない
心の中の暖かい火を強くするだけ

思い通りに行き過ぎて本当は閻魔、全部わかっててワザとやってるのかもと疑ってしまう

僕を利用する為に

ひょっとして僕はただ閻魔の手の平の上で転がされてるだけかもしれない

全部ウソかも
明日裏切られるかも
もう逢えないかも

何度も疑って、その度にそれでも構わないって結論に達する

傷付くのが閻魔じゃなくて僕ならいいやって思える

「……ねぇ妹子……今日泊まっていい?」

「今日“も”でしょ?なに?秘書鬼さんと喧嘩した?」

「違うよ!!ただ帰りたくないだけ!!」

あー閻魔の中で僕は駆け込み寺にされているんだな、なんて思って呆れてしまった

閻魔が僕を騙す理由が常に受け入れて貰いたいからだとしたら……

「どうしようもない馬鹿だね、閻魔」

「え?なに?なんでいきなり毒妹子!?」

わけわかんない!と、涙目になる閻魔を見ているとやっぱりウソじゃないかもと考え直した

僕の前では無理しておどけたりせず、馬鹿な振りもせず、ありのままをさらけ出す
どうせならそんな閻魔がいい

でも……まぁ、とりあえず?


僕を必要としてくれてるならそれでいい



共依存、ってやつかな?
僕に執着する様が堪らなく



かなしい






end