同性、異種族、しかも上司
前途多難になることうけあいの恋
相談しようにも禁断要素多すぎて誰にも知られたくない

まぁ大王を昔からよく知る人にはバレてんだけど…

何でも大王の態度が解かりやす過ぎるんだとかで…溜息が出る



先日から付き合い始めた僕達だが、雰囲気はその前とあまり変わっていない
キモい事に乙女思考な人だから…もっと甘酸っぱいのを想像してたのに


変わった事といえば…
「あの大王…」
「ふっ!」

僕がちょっと触れただけで怖がるようになった


「驚き過ぎですよ」

「ごめ…なぁに?鬼男くん」


「この後地獄の見回りが入ってますけど」


「えぇ〜」



心底嫌そうな顔する
このイカは表情豊かなところを誰からも諌められた事がなかったのだろうか


「僕もお供しますから」


「うん…」



大王は地獄の見回りがあまり好きではない

僕も苦手だ
罪を償い続ける人間も罰を与え続けなければならない鬼達も見ていて辛い
それを命じてる閻魔大王はもっと辛いのだろう

でも大王は『地獄の住人にも鬼にも感情だけは無くして欲しくないんだよ』って言った


前向きなその言葉が僕には弱音みたいに聞こえた
この人を好きだと自覚したのは確かその時だ、僕の感情が救いになればいいと思った



「ゴメスさん、血の池地獄の湯加減どうですか?ちょっと熱めにしてみたんですけど」


大王は天国の人にも地獄の人にも平等に親切だ
根本的な部分で間違ってる気がするけど…



大王が真面目にした所為か地獄の見回りは無事に終わった



「はぅ〜やぁっと終わった!」

「お疲れ様です」


仕事が終わり帰路に着く大王に送りましょうかと聞くと


「いいよいいよ!鬼男くん疲れてるでしょ!??」


大袈裟に殊勝な事を言いやがった

なんか最近、距離を取られてる気がしてならない

なんなんだコイツ、以前はウザイくらいくっついてきたのに
僕が好きだと言ったのはアンタだろう


「いえ、僕がそうしたいので送っていきます」


今度は泣きそうな顔をされた


「……うん」




僕の横を黙って歩く彼と

僕はいつまで共に歩めるだろうか


鈍感なくせに警戒心は強くて
冗談を言われたら傷付くくせに少しでも本気をみせたら逃げていく


自分を本気で愛す人に限って躱すのが巧い





「もう此処まででいいよ」


まだ大王の住処までまだ随分とあるのに、そう言い渡され
眉間にしわをよせる、それを見た大王が申し訳なさそうに笑った


納得できません

何が貴方の不安なんですか?そんな風にされたら僕も不安になってしまいますよ


僕が触れたいと願わない訳ないでしょう



そう思った瞬間、心臓が痛いくらい縮んで僕は反射的に大王の手をとっていた


「鬼…男くん?」

「繋ぎたいから繋ぐんですよ、閻魔様」




普段呼ばない名前で呼んだ

ただ、それだけの事で

震え怯えて

そしてゆっくりと僕の言葉を噛み締めるように俯き、震える目を伏せ


そして僕に笑みをくれて、暗いこの世界が華やいだ


この人は僕だからこんな顔してくれるんだ…と初めて理解った





貴方といて辛い事なんてなにもない


貴方といると幸せになります




この命尽きたとしても


心は貴方の傍にありますから
誓いますから




絶対裏切らないように、全てに約束しますから






どうか愛してください

end