毎日着替えるのもめんどくさいけど
毎日同じ格好じゃつまんないから
今日は気分で伊達メガネを掛けてみた

鬼男くん可愛いって言ってくれるかなーなんて期待を込めてたりして


でも、いざ出勤してみても鬼男くんはノーリアクション

いや「あれ?今日メガネなんですね」くらいのリアクションはあったけど



うーん…鬼男くんメガネに興味ないのかなぁ


それともオレに興味ない?…って、そんなこと言ったら怒られちゃうね



鬼男くんが天邪鬼なの分かってるし

愛情表現の違いはしょうがないと思う

でもね鬼男くんてさ、あんまり好きとか言わないじゃん



だから

たまにね、本当にたまにだけど不安になる



冗談でもいいから、

好き…とか言ってくれないかな






【閻魔はもう一度口説かれたい】






……口説かれたこと無いけどね





「鬼男くん」



仕事が一段落ついたところで鬼男くんに話かける



「はい、どうしました?」


仕事中の鬼男くんは事務的な顔をしている
それは当たり前なんだけど、たまに他の顔が見たい時もある


そんな時はだいたいバカなことを言ったりやったりするんだ、オレは


「オレと鬼男くんて恋人同士だよね?」

「はぁ?何言ってるんですか?」


鬼男くんは何か可哀想なものを見る目でオレを見てくる
でも、その頬が少し赤くなってるからオレは嬉しくて笑顔になる


「鬼男くん照れてるの?」

「うるさい、黙れ、仕事しろ」


閻魔帳の角で軽く叩かれた
軽くだけど角だからそこそこ痛い


「ふふふ」


怒られても殴られても呆れられても
構って貰えるのは嬉しい



「なに笑ってるんですか気持ち悪い」


いつもながら口が悪い
オレがどんなに目上の人でも鬼男くんは臆する事なくガツンとあたってくる
そんなところも好きだなぁって思う



「じゃあオレと鬼男くんは何で恋人同士なのぉー?」

「…そんなの大王が僕に告白したからでしょう」


それを聞いてオレは後悔した
調子になんて乗るもんじゃない


「……そうなんだ、告白してよかったー…」


そう言って、渡られた閻魔帳に目を通す


「お、今日はこのまま上がっても良さそうだ」


久しぶりに早く帰れるね、って喜んでみる

そして、また閻魔帳に視線を落とした


(わかってたことだけどね…)


…さっきの鬼男くんの言葉には少し胸が痛くなった

もしオレが告白しなかったらきっと一生恋人同士になんてなれなかったんだろう
ひょっとして鬼男くんはオレの告白を断れなかっただけなのかもしれない

だとしたら悪い事したなって思うけど…

もう手離したり出来ないから


「…なに笑ってるんですか?」

「へ?」


机の上が薄暗くなって顔を上げたら、怒ったような鬼男くんの表情がすぐそこにあった

知らない内にオレは何かしくじったのだろうか


「別に大王が告白しなくても僕と大王は恋人同士だったと思いますよ」

「…」


フッ…と息を吐くように笑った鬼男くん
その笑顔のままオレのメガネを外した


「やっぱこっちの方がいいです」

「お、鬼男くん?」

「大王が告白しなくても僕からちゃんと告白してました」

「鬼男く…」

「だからそんな哀しそうに笑わないで下さい」


君こそ哀しそうに言わないでよ

毎日、死者の泣き顔ばかり見てるんだから

君くらいは楽しくしてあげたいと想ってるのに




「メガネない方が可愛いです」


「…それはひょっとして口説いてるの?」


鬼男くんはまたフッと笑った

オレはただ愛しいと思って見詰める

目を離せないわけじゃない


離したくない…放したくない…




「今も昔も、ずっと貴方が好きだったんですよ」


鬼男くんに触れられた頬が痺れる

もともと死人と同じだった体は、彼の所為でどうしようもないモノになってしまっている





責任とって下さい




閻魔は君に何度でも口説かれたい


end