※高2組+性別転換世界の京介 ミッキー視点 普段通り、何の変哲もない平和な一日、だった……憂木と立花があんな事をし出す前は…… 「かおりー、さよちゃん、何それ魔法陣?」 放課後、教室の隅で方眼用紙に見たことないような記号や円を書いていた憂木と立花、そんな明らかに「何やってんだか」な二人に興味津々といった様子で話し掛ける増田 「おまじないだよー」 「おまじない?」 いやいや立花……どう見てもそれヤバいって、憂木が一緒にやってる時点でヤバい系の魔術だって!ほら長年憂木と幼馴染みやってる松本が青い顔をし始めた 「増田くんもやってみる?」 「へ?」 「簡単よ。ここに立って、こうやって手を組めば……」 「ちょ!?さよ!?」 松本が慌てて止めに入ったが遅かった。魔法陣からボンっと言う音と共に煙が上がる。流石の漫画家さんでも現実にこういう事が起きると付いて行けない。 「これは自分と波長の合う異世界のモノを呼び出せる“おまじない”なの」 異世界のモノって……今、煙の中で咳込んでる陰は明らかに人の形してるんだけど 「そうなんだ……マリーちゃんかな?」 誰だよマリーちゃんて、ていうかおまじないってだけで何も知らないまま憂木を手伝ってたのか立花。と、そうこうしてるうちに煙が晴れて 「え?なに此処!?何処!?」 中から現れたのはブレザー服を着た(ってアレ超お嬢様学校の制服じゃん)女の子だった。状況が判らないようで怯えたように俺らを見るその女はどこかで見た事あるような 「って」 いや確かにこの上なく波長は合うだろうけど 「京介(増田)?」 この場にいた人間すべてが同じ人物の名を呼んだ。 「へ?何で私の名前を……」 煙のせいで涙ぐんでいた女が涙を拭いて増田の顔を見た。そして硬直する。 「わ……私?」 そしてその隣にいる松本を見て顔を青ざめさせた 「貴方は政宗センパイ……じゃ、ないよね……?」 ・・・・・・ えっと詳しいことは長くなるから割愛するけど、話によるとこの子は性別が逆転した異世界から来た増田京介らしい(性別変わっても名前は変わらないみたい) 「えっと……松本くん?だよね?」 「う、うん……」 松本は肯定しながらも眉を顰めた。多分、兄貴は『政宗センパイ』なのに自分は『松本くん』と呼ばれていることを不審に思ったんだろう 「……ごめん」 そんな松本の様子を見て怯えたように謝る女の増田(紛らわしいので此処からは京子って事にしておく)しかし直ぐに増田の方を向いて恐る恐るという風に尋ねた。 「……こっちじゃ松本くんと私、友達なの?」 「へ?」 「あ……やっぱ違うか……」 そう言って京子は目を伏せた。長い睫毛が揺れて僅かに見える瞳がキラキラと輝いていた。なんか女になった増田は有り得なさすぎて逆に有りだと思う、何が有りだか不明だけど 「アンタは……そっちの世界の私とどんな関係なの?」 松本が訊くと京子はまた怯えたように……泣きそうな顔で呟いた。 「私は……松本くんに嫌われてるから」 ピキーン ……何だろう、今、増田と松本と京子の周りだけ空気が凍り付いた音が聞こえたような、ってか松本が絶句してて増田が静かに怒ってる場面なんて初めて見た。 「あのさ……それアンタが笑華を怒らせるようなことしたんじゃないの?」 ま、まぁそうだよな松本が理由もなく人をってか増田を嫌いになる訳がないよな……でも、いくら自分だからって女の子にそんな冷たい眼を向けるのは良くないぞ? 「別に……ただ告白したら怒って口聞いてくれなくなった」 「なんて言って告ったの?」 「……」 言いにくそうに口をもごつかせている。え?まさか俺がいつかネタ出ししたアレと同じ台詞を言ったんじゃないだろうな 「……百万円あげるから抱いて、って」 「……」 そのまさかだったー!!?京子それ告白ちゃう!援交のお誘いや!!馬鹿じゃないの!? と、ツッコミたいのを堪えてちらりと、松本の顔を見たら、そりゃそうだけど物凄く怒っていたし物凄くショックを受けていた。 「はぁ!?アンタなにやってんの!!?ていうか馬鹿でしょ!?本当なにやってんの!?それ笑華を屈辱してんのと一緒だよ!!?」 増田が急に怒鳴ったもんだから皆が吃驚して一斉にそっちを向く。普段のコイツは温厚で誰に対しても怒るような事はしないのに 「さっきから気になってたけど、その制服首高のじゃないよね?どうしたの……まさか転校したなんて言わないよね?」 京子は無言で視線をさまよわせる、ってことは図星かー……マジで? 「一般の高校通わせてもらうのに、どんだけ人に迷惑掛けたと思ってんの?」 「……だって!松本くん他の子には凄く優しいのに私だけ無視してっ……それ見てたら辛くて……」 「京介」 漸く松本が口を開いた。異世界とは言え自分が増田に冷たく当たっているのが信じられないのだろう……でも俺にはその様が容易に想像付く。 おそらく男の松本は多分男前でフェミニストなんだろう、そんな奴がいくら失礼な奴だからって女の子を殴る訳がない、だから京子は無視されたんだ。 そして多分こっちの松本とは違い異性にモテる、きっと京子はその姿を見ているのが辛かったんだ。 「あのさ?そっちの世界戻ったらも一度ちゃんと笑華と話しなよ」 不意に増田の声色が柔らかくなる、増田は京子の頭を軽く叩いて言葉を続ける。 「嫌われてると思うなら、少しでも好きになってもらえるように努力してみなよ……大丈夫、笑華は一生懸命頑張ってる子を無碍にしたりしないから」 「……」 松本の顔を見たら真っ赤になって照れているようだった。うん、そりゃ嬉しいだろうな 「でも私……松本くんの好みと全然違うし、なんて言って関わっていいのか……」 「アンタ、昔の俺みたいだな」 確かに自分にはお金と体以外に好かれる要素がないと思ってた頃の増田と同じ目をしてる。 「大丈夫、笑華の事だーい好きでしょ?その気持ちを真っ直ぐぶつければ絶対解ってくれる……笑華だもん」 ニッコリ、いつものようなヘラヘラ笑いじゃなく俗にキラースマイルと呼ばれる純粋な増田本来の笑顔を浮かべれば、京子の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。 「あ?あれ?なんで?」 「いいよ泣いても……どうせ笑華に振られてから泣いてなかったんでしょ?」 「うぅなんで分かるの?」 「アンタは俺だからね」 もう一度同じ笑顔を見せて頭を撫でる増田、すると京子は涙を拭って 「えへへ、ありがと」 頬を染めながら笑った。流石女子は立ち直りが早いなぁなんて思いながら、その顔が可愛くて 危うく松本の顔が真っ赤に色付いたのを見逃してしまいそうだった。 エンド |