なぁお前、あの娘になに飲まされたんだよ……?
僕相手にそんなになるなんて、どれだけ強力な薬なの?
まぁ鬼神の身体なら害は残らないだろうけどな
副作用はなんだろ? 今夜の記憶かな?
まぁお前にとってはその方がいいかもね……

なぁ、ちゃんとその目で僕が見えてる?
耳は聞こえてるけど、理解はしてないみたいだね
今のお前、まるで獣だ
痛いし、怖いし、苦しいし、気持ち悪いし、凄く痛い

あの娘が途中で逃げ出すわけだよ

なぁあの娘に何したの?
どうせたまたま機嫌がいい時に褒めたりしたんだろ?
バカだね、お前
普段は厳しいお前が不意に見せる優しさに、どれくらい破壊力あるか自覚ないんだろ
みんなに厳しいお前が優しくするんだもん
もしかして自分に気があるんじゃないかとか期待しちゃってさ

でもお前は全然そんな気なくて
それに気付いちゃったんじゃないの?
まったく女泣かせな奴だよな

だからコレはお前が悪い
女心を弄んで、こんな薬使わせるくらい追い詰めて
だから僕なんかとする羽目になるんだよ

自業自得だ
全部全部お前が悪い

なのに、なんで忘れちゃうんだろうな
僕をこんな目に遭わせといて自分は憶えてないなんて
酷い、酷いよ……お前

初めてなのに……

初めてだったのに……

嗚呼、痛いな

早く元に戻ってよ


お前のその熱い眼差しを
なんでもない時に向けられたらどれほど幸せだったろう




* * *




電撃の婚約会見によりマスコミに追われることとなった白澤だが、お香と烏頭と蓬に匿われどうにか無事に過ごすことが出来ていた。
桃源郷に残してきた店と従業員達は恐らく桃太郎が守ってくれているだろうと期待して、今は自分の身の振り方を考えることに専念していた。

(……あの鬼が何か圧力かけたのかマスコミ攻撃も収まったけど、あの猫記者だけはしつこかったなー……大丈夫かな彼)

あの夜「にゃぎゃああああああああああああああああ」という断末魔と「小判ニャン!? 小判ニャン!! 小判ニャーーーン!!」という悲痛な叫び声が聞こえて以来とんと姿を見せなくなった猫の心配を、蓬の部屋でひとりしていたところだった。

「ご機嫌いかが!!?」
スパーンと引き戸の放たれる音と共に件の鬼灯が現れた。
白澤は反射的に立ち上がって怒鳴りつける。

「お前は!!僕の店だけでなく幼馴染の家の戸も壊すのかよ!?」
「そこに貴方がいるからさ!!」
「どっかの登山家みたいなこと言ってんじゃねええええええええ!!!」

あんなことがあった後初めての対面だというのに、いつも通りの応酬をする二人に、鬼灯の後ろにいたお香と烏頭と蓬は呆れるやら安心するやらだった(蓬だけは壊れた戸の心配をしているが)

「……ついに来やがったな闇鬼神」

怒りやら警戒心やらを剥き出しにして己を睨む白澤に、鬼灯は無表情のまま近付いた。
鬼灯が一歩進む度に後退るが、狭い部屋ではすぐに背中が壁に付く、白澤はグッと体に力を入れ神気を放出する、髪が浮かび普段隠れている額の印が見える。
そんな情景を家主である蓬は此処で喧嘩になったらどうしようとハラハラ見守っていた。

「そんな睨まないでください、今日は話をしにきただけなので」
「ああそうか!僕だってお前に言いたいことはいーっぱいあるんだ!!」

言いたいことと聞いて鬼灯は一瞬「告白か!?」と思ったがこの調子では違うだろう。

「勝手なことしやがって!!お前の所為でコッチがどんだけ迷惑被ってると思ってんの!?」
「……でしたら、元はと言えば貴方が私の体質のこと隠してたからこうなったんでしょう」
「はぁ!?」
「私の子を孕む危険性を周知させていれば、あの女性もあんなことはしなかったでしょうし」
「周知させるって……」
「させるに決まってるでしょう?手違いで妊娠させてしまえば相手を灼き殺すかもしれないのだから」

白澤は奥歯をギリッと音がするほど噛みしめた。
ああそうだ、鬼灯ならそうすると思ったから黙っていたのだ。

「……ていうかお前あの夜のこと憶えてんの?」

あの女性とは鬼灯を異常事態に陥らせた薬を盛った相手のことだろう、それを憶えているから白澤が妊娠したのが自分の子だと確信を持ったのだと白澤は思った。

「ええ、想い出しました」

想い出したからこそ、イザナキとナキサワメが記者会見に協力してくれたのだが、それは敢えて話す必要のない事であるし、既に幼馴染には全て話してあるけれど白澤にとってあのことは他人に聞かれたくない筈だから、この場で詳しくは言わないで置こうと鬼灯は思った。

「明日転生してしまう亡者に最後の思い出にと強請られて……」
「そう」

予想とは違う理由だが、そんなことはどうでも良かった。

「白澤さん、貴方の本体は今私の子を宿していますね?」
「……ああ、どうせイザナキ様に全部聞いてるんだろ?」
「ええ、イザナキ様の宮殿へ大量の氷が輸出されているのが気になりましてね、氷の中へ入って侵入したら桃源郷にいるはずの貴方がいたので問い詰めました」
「ッ!?お前なんて無茶を……」

イザナキは日本では天照に次ぐ地位を持つ神の筈だ、その宮殿に忍び込んだ挙句問い詰めたなんて怖い物知らずにも程がある、そういう誰に対しても自己主張を緩めないところは鬼灯の美点だと評価している白澤だったが、時々ハラハラと不安に駆られる。

「お前……いつか消されても知らないぞ」
「……そうですね、これからは気を付けます」

珍しく素直に忠告を受け取る鬼灯に驚いたような表情をする。

「父親になるのですから、もう少し慎重になった方が良いのかもしれません」
「……」

記者会見を見た時から解かっていたが、改めて「私の子を生んでも良い」と言われたような気がした。
これでいい、己が求めたのは祝福と歓喜ではなく認知と許可だから、そう言われるだけで充分だ。

「お前、僕と結婚するって本気か?」
「はい……子供の為にもその方が良いでしょう」
「たしかにそうだな」

白澤も初めは鬼灯との結婚を断る気でいたが、身の振り方を考えている内に、それも一つの未来として有り得るのではないかと思い始めた。
鬼灯の幸せを奪ってしまうのは自分の罪であり、お腹の子にはなにも罪はない、父親が存在している以上、子どもは父親の愛情を受ける権利がある。
それに片親が不明な所為で子が謂われない中傷を受ければ、鬼灯が悲しい過去を思い出してツラくなるかもしれない。
だから、子どもが自立するまで夫婦という契約を結んでおいた方が、あの子にとっては良いのだ。

「了承して下さるんですか?」
「ああ、あの子はお前の子として育てる……」
「そうですか……ならば改めてお願いします」

そうしてホッとした表情を零した鬼灯に、ハッと気付いた白澤は慌てて鬼灯の元へ近づく。

「白澤さん、私と――「等一下!!」

結婚してください、と続く言葉が白い手と「待って」という中国語に遮られた。

「……何故言わせてくれないのです」

ムッと拗ねたような表情をする鬼灯にドキっとしたが、彼を怒らせるのはイヤなので白澤はおずおずと理由を説明しはじめた。

「ほ、ほら僕だけ聞いちゃったら本体の僕に申し訳ないからさ」

鬼灯にとっては子どもの責任をとるだけのものだと解かっているが、己にとっては好きな相手からの求婚だ。
たとえ気持ちがなくても、浅ましい心は嬉しさを感じてしまうだろう、だから。

「……やっぱりそういうのは完全な僕になってから聞きたいっていうか」

元に戻れば記憶を共有することになって本体の白澤にも鬼灯からプロポーズされた記憶が残るだろう、しかし記憶があるのと実際に体験したのとは違うと思う。
ただでさえ本体は妊娠したり出産したり大変なのに、分身の己だけが求婚されるなんて、不味い所を押し付けて美味しい所を持っていくようでいやだった。

「そうですか……」

白澤の詳しい心中など知る由もない鬼灯は「うちの嫁がなにやら可愛いこと言ってる」などと思いながら納得した。
慎重になると言うならまず白澤がいても戸を壊さずにいられるようになって欲しい、部屋の主である蓬は壊れた戸を建て付けながらそう思ったのだった。




一方コチラはイザナキ殿、枕元に座るナキサワメに頭を撫でて貰いながら白澤はウトウトと休んで居た。
そうしていないと威嚇してしまう故ナキサワメには鬼灯に化けてもらっているが、あの鬼と同じ顔をして穏やかな表情で自分を見られるのは未だ慣れない。
妊娠前ならナキサワメの姿のまま介抱された方が嬉しいと感じたろうに、鬼灯の子を孕んだ瞬間から彼以外の者から触れられることに不快感を示すようになった。
最初はそんな自分に戸惑っていたが、いつか卵を温めている最中の朱雀に滋養強壮の薬を渡しにいって突かれたことを思い出し、きっとそれは神獣の習性なのだと思うことにした。

「ねえ白澤様」

鬼灯と同じ声で、自分を白澤様と呼ぶのにも未だ慣れないが、彼女がその方が呼びやすいというのでそっとしている。

「なぁに?」

とろんとした目で枕元を見上げる、妊娠して半年が経ち鬼火だった胎内の子が鬼の子へ四分の三くらい変化しているが、それでも体力は消耗していくのだ。

(鬼灯も大食漢だから、お腹の子もいっぱい栄養吸い取っちゃうんだろうなぁ)

と、昔からずっと見守ってきた一本角の彼を思い出し、ナキサワメの瞳に慈愛が溢れる。

「ナキサワメちゃん?」
「ああ、すみません……えっと鬼灯の子を孕んでも母体を灼かない方法を思い付いたのですが……」
「ん?なに?そんなのあるの?」

白澤の意識が一気に覚醒した。
お腹の子がいるから急には体を動かせないが、手だけで鬼灯の姿をしたナキサワメに縋る。
ナキサワメはその手をそっと撫でながら続けた。

「ええ……鬼灯を私の正式な眷属にすることです」
「……なるほどね」

その一言で、白澤は納得した。
目が濁っている今は想像しても未来を見てしまうことはないが、ナキサワメの言うことなら恐らく間違いないだろう。

「私の眷属になれば鬼灯は水神の属性も手に入れます。そうすれば鬼火である胎児を水の神気で覆い母親の胎を守れるかと、勿論栄養を摂取する為に体の一部は母親と繋がっていなければなりませんから、多少は熱いでしょうが、今貴方が感じている程の苦しみはないでしょう」

少なくとも受精直後に灼き殺されることはなくなる――普通の女性でも妊娠可能になるということだ。

「凄いね、ナキサワメちゃん……そんなの考えもよらなかった」
「それはそうです白澤様は鬼灯が私に捧げられた生贄だということを知らなかった……というよりも鬼灯の過去を勝手に見てしまうのを悪いと思っていたのでしょう?」
「うん」

総て見えてしまう眼を持っていても人の私生活や自分と出逢う前のことを暴く趣味は無い、それに鬼灯に関してはいつか自分から話してくれる時が来るのではないかと心のどこかで期待していたから余計に何も見ようとしなかった。

「水神の属性を手に入れれば、このようにして水の気を送り母体を癒すこともできます」
「そっか」
「……」

眠ったままの状態で涙が溢れてきて慌てて横を向く白澤、自分に縋っていた手は枕を掴んでいるのを見て、ナキサワメは妊娠中に心を乱すようなことを言ってしまったと後悔した。
白澤はずっと鬼灯の子を自分が生むことしか考えていなかった、他の者があの鬼の子を孕み生める方法を考えていなかった自分がとても穢い存在に思えてきて苦しかった。
鬼灯の幸せを考えているつもりだったのに違ったのだろうか、自分があの鬼にとって必要な存在になりたかったから鬼火の子を宿したいと思っていたのだろうか、だから他の者にも出来ることだと聞いてこんな気持ちになるのだろうか、だとしたら……そうだとしたら。

「あいつに好きな子が出来て、子どもが欲しいと望んだら教えてやって……それまではどうか……」

あれは地獄の鬼神なのだ。
閻魔大王第一補佐官の鬼灯。
ナキサワメの眷属になることなど望んでいないだろう。
だから、どうか……

「わかりました」

それだけ言って、ナキサワメは再び白澤の頭を撫で始めた。
かつて自分へと捧げられた可愛想な人の子“丁”が“鬼火”と混ざり鬼の子になってしまったのを目の当たりにして、ナキサワメは悲しく思った。
しかし“鬼灯”となった彼は親代わりの恩人や幼馴染や部下に囲まれ充実した毎日を得て、愛する人と出逢えて……その人から今こんなにも愛されている。
白澤は泣き疲れたのか眠りこけてしまっている、ナキサワメはその涙の痕を拭って微笑かけた。

「幸せにおなりなさい……」

あの子は私の自慢の子ども
何時いかなる時も貴方を守り、貴方を信仰し、貴方を愛し続ける者

彼なら貴方の永久の孤独も癒せるでしょう

それは必ず――




* * *




白澤が妊娠して十ヵ月が経った頃、極楽満月では以前の通り白澤が白衣を着て働いていた。
鬼灯の記者会見以来どうしても近辺が煩くなった彼が漸く仕事を再開できたのがつい三ヵ月前、それまでずっと好奇の視線に晒されていたので、こうして落ち着いて仕事が出来ていることに幸せを感じていた。
あれだけ働けば周りが心配して口出ししてくるのは当然なので皆を諌める気は更々ないけれど、あの鬼が仕事の邪魔をするなと言う気持ちがよく解った気がする。

「桃タロー君、僕ちょっとイザナキ様のとこ行ってるから、その間この店のこと頼めるかな?」
「はい?」

桃太郎は擂粉木を持ったままカウンターで何やら書き物をしている白澤を振り向いた。
弟子入りして数年経ってからこの人に店を任されることは多々あったが、それはだいたい中華天国に用事があるか女性関係の用事があるかのどちらかだった。
けれど今回はイザナキ様の宮殿に行くという、そこは白澤の本体が身を寄せている場所だ。

「もうそろそろ出産が近づいてるから、本体に戻ってくるよ」

自分が戻れば少しは体力回復する筈だからと言う白澤に、桃太郎はここ十ヵ月この人は無理をして店を切り盛りしていたのだと思い知る。

「はい!無事に元気な赤ちゃん生んできてください!!」
「ちょ!あんま大声出さないでよ!近くにお客さんいたらどうすんの!!」

鬼灯の記者会見の所為で地獄全土にバレてはいるが、白澤はあまり人前で妊娠のことを話題に出されたくなかった。
常連客はデリケートな時期だからと気を遣って話さないでくれるが、いよいよ出産だという話をしていれば励ましの言葉を投げてくるだろう、白澤にはそれもツラい。
自身の妊娠を否定されるのも厭だけれど、皆が応援してくれているのは嬉しいけれど、だんだんと女性から男性として見られなくなってきているのが彼の矜持を傷付けていた。

「すみません……誰もいないみたいですね」

店の外に耳を澄ましても、鳥の声と天国に吹く穏やかな風の音しか聞こえない、桃太郎は安心して体を白澤の正面へ向けた。
住む場所と生む場所が違うなんてまるで里帰り出産みたい……と、思ってひとつ疑問が浮かんだ。

「白澤様、最初は現世の霊山で過ごそうとしてたんですよね?何故天界に帰られなかったんですか?」

その方が神気も満ちていて安全だったのでは、と思う。

「いや……だって、あの時間の感覚が可笑しい天帝や西王母に万が一生んだ子を見られたら、向こう千年は帰してくれなくなると思うよ、そんなの冗談じゃない」
「あー……神様ばっかの世界で生きてると、時間の感覚が人とズレてくるんでしょうねえ」

たしかに白澤が千年もいなくなっては地獄も天国も困るし、その場合我が子が生まれたなんて知る由もないであろうが、白澤や子どもに千年も会えないとなると鬼灯が可哀想だ。

「まぁ生んだらすぐ帰ってくるから心配しないでよ」
「え?大丈夫ですか?産後は暫くゆっくりしてた方がいいんじゃ」
「んー……そうなんだけどさあ」

白澤は少し照れたように言った。

「生まれた子は……あいつに一番最初に抱っこしてもらいたいから」
「……」

なんだろう「ごちそうさま」と言いたくなる空気だ。

「でも大丈夫ですか?アレまだ消えてないんでしょ?」
「行き帰りは神獣姿だから大丈夫だよ」
「でも白澤様、帰りは赤ちゃん連れじゃないですか」
「……まぁ、此処は天国だし、なんとかなるでしょ」

桃太郎の指すアレとは呪詛だ。
白澤を目の前にすれば祝福する人が殆どだが世の中そんな者ばかりではない。
現在桃源郷上空には男の妊娠に嫌悪感を見せる人や、白澤に鬼灯を奪われたと思ってる人、愛する人との子を生めない人達の怨念が一つになったもの、が浮かんでいる。
天気は悪くなるし、いつ襲ってくるか解らないし、何より気分が悪いから早くどうにかしてしまいたいのだが、白澤は無理やり祓ってしまえば怨念の持ち主呪詛返しに遭うからと桃源郷の破邪の力で少しずつ浄化していく方法を選んだ。

「ですが……」
「大丈夫だって!桃タロー君は心配性だな」
『そうです、心配には及びませんよ』
「「ひっ!?」」

此処にいない筈の人の声が急に聞こえ師弟はビクッと肩を震わせる。

「鬼灯さん!?どこに……」
『おや?私に電話してきたんじゃないんですか?』

声のする方を見ると発信源は床だった。
従業員の兎が勝手に携帯電話の通話ボタンを押していたらしい、ご丁寧にもスピーカー音量で。

「ちょ!兎さん!なにやってんの!?」
『あー……どうりで変だなと』

白澤が携帯電話を拾うとテレビ電話画面になっていて、不機嫌そうな鬼灯の顔が映っていた。
ということは、ずっと何も言わない兎のドアップの向こうに白澤と桃太郎の会話を聞いていたのか、もっと早く話し掛けろよ。

『貴方の方こそ、そんな大事なこと何故私に言わなかったんですか?』
「え?」

大事なことと言われ戸惑う。
しかし、そりゃあ父親にとって我が子が生まれてくるのは一大イベントだ、たとえ大嫌いな相手との間に出来た子であっても気にかけるのは当然か、と白澤は思った。

「ごめんごめん、仕事忙しいと思ったんだよ」
『たしかに忙しいですが、見送りにはいけますよ。あと出産には立ち会うつもりなので』
「はぁ!?」
『ナキサワメさんが産気づいたら連絡くれるそうで、大王とイザナキ様には既に許可を得ています』
「んな勝手に……」
『勝手だなんて貴方にだけは言われたくありませんね』

と、電話の画面越しに睨まれ、心臓がズキズキと痛んだ。
どうせ、この鬼の幸せを願ってしてきた事はこの鬼にとって総て無意味で、むしろ幸せの邪魔にしかならなかったろう。
負けじと鬼灯を睨みつけながら泣きたいような気持でいると、鬼灯は少し大きな声で白澤の後ろにいる桃太郎に語りかけた。

『そんなわけで、その駄獣が帰って来る時は私も一緒なので安心してください』
「あ!はい!白澤様をおねがいします!!」
「桃タロー君!?」

裏切り者! と我が弟子を見ると、桃太郎が本当に安堵した表情をしていたので何も言えなくなった。

「……じゃあ明日の正午に飛び立つから、見送りに来れたらきなよ」
『解かりました。では、また……』

そう言って鬼灯は電話を切ってしまった。
きっと忙しい時間帯だったのだろう。

「はぁ……」
「大丈夫ですか?白澤様、今日は明日に備えもう休まれた方が……夕食が出来たら呼びますから」
「うん、ありがとう……じゃあお言葉に甘えて」

優しい弟子に促され、白澤は部屋に入っていった。
ベッドへもぐり鬼灯の登録名の記された発信履歴を消しておこうとしたが、その前に眠りに落ちてしまった。
時を同じくして閻魔殿、鬼灯は職務室で山になった書類を捌いていた。

「まったく、あの人は全部自分で勝手に決めてしまって……」

先程の白澤の様子を思い出し、溜息を吐いた。
以前は、何でも一人で出来てしまう白澤を遠い存在のように感じて悔しかったものだが、今は何でも一人で解決しようとしないで、もっと自分を頼ればいいのにともどかしい気持ちにさせられる。

「結婚すれば少しは変わるか……」

いや、自分がもっと頼れる男になればいいだけのことだ。
鬼灯は酷使し過ぎて痛みだした目を瞑り、眉間を押さえた。

こんな時、瞼の裏に彼が現れるようになったのはいつからだったろう。
昔は目を瞑ると必ず夜の闇を思い出していた。
窓もない部屋に入れられ、人外の声に怯え、寒さに震えながら朝を待つだけだったあの頃を思い出した。
でもいつからか、あの人のことを思い出すようになった。
驚いた顔、怒った顔、泣いた顔、笑った顔、散々悪態を吐いたあとでも最後に必ず見せる自分を気遣う顔、優しい生き物の顔、白いふかふかな獣の姿、どれもが恋しくて昔のことなんて思い浮かばなくなった。
そうやって恋をしただけで救われたのに、あの人はその上で愛をくれようとしている。

(痛いの嫌いな癖に……子どもを生んでくれようとしてくれていたなんて、どんだけだ)

自分の子が鬼火となるなんて知って、それ程かなしくなかったのは彼のお陰だ。
死にはしないから命懸けとは言わない、けれど死ぬよりも苦しい思いをして彼は己の子を生んでくれるのだ。
だから、これから自分はそれ以上のものを彼に返していかなければいけない、それはなんて幸せなことだろう。

神獣白澤と共に生きる理由が、この手の内にあるなんて――

鬼灯は目を開くと気合を入れ直し書類に向き合った。
白澤の出産までに出来るだけ仕事を片付けておかなければならないからだ。




翌日、正午少し前に極楽満月に訪れた。
白澤は神獣の姿で、鬼灯が来るのを待っていたようだった。

「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい白澤様」
「近い内に私もそちらへ参りますので」
「うん」

そうして白澤がイザナキの宮殿へ発ち、姿が見えなくなった途端、鬼灯は懐から一枚の札を取り出し。

「鬼灯さん……?」
「私の術は荒いですよ、あの神獣のように優しくありませんから」

などと言ったかと思うと一瞬で呪詛を全て祓ってしまった。
桃太郎はそれを見て彼を非難しようなどと思わなかった。
愛する人と我が子に害を為そうとする存在を彼が今まで放置していた事の方が可笑しい、桃太郎は怨念の主を少しばかり同情するが鬼の怒りに触れてしまった以上仕方が無いことのように思う。
呪詛が消えても鬼灯の恨みは消えない、それでいい……怨念の主がどうなろうと、神を呪った方が悪いのだ。




* * *




イザナキ殿に着いた白澤の分身は、まずイザナキとナキサワメに挨拶と礼を述べ、本体の自分と対面した。
ベッドの横に置いてある上等な椅子に腰かけ、シーツの上に身を起こした本体の身体を観察する、やつれてはいたが想像よりはマシな姿に、もう一度イザナキ達に礼を言いたくなった。
きっと二人がいなければ今頃もっと酷い姿の彼を目の前にしていた事だろう、いくら自分自身だからって、あまり弱っている人を見たくはない。

「お腹、随分大きくなったね」
「うん」

それでも嬉しそうに微笑む自分の本体と、融合する前に言っておかなければならないことがある。

「あのね、聞いてほしいことがあるんだけど……」
「ん?なんだい?」

落ち着いた様子の彼に少し安堵して、ゆっくり順を追ってここ十ヵ月に起きた事を説明してゆく、途中で驚かれたり悲しまれたりしたが、鬼灯とのことも最後まで話すことができた。

「そうなの……君も大変だったんだね、僕はイザナキ様やナキサワメちゃんにとてもお世話になってたよ……特にナキサワメちゃんはずっと水の気を送り続けてくれててね、本当ありがたかった。一時期彼女が傍にいないと気が狂いそうだったらしいから、予定通り現世の霊山なんていたら現世の人に迷惑掛けてたかもしれない」
「そっか、ここに置いてもらえて良かったね、僕も体調はずっと悪かったけど君と比べたら楽な方だったし、それに桃太郎くんやお客さんが一緒にいてくれたから助かった。マスコミに追われてた時はお香ちゃん達が匿ってくれてたし、一度鳳凰と麒麟が様子見にきてさ……僕が分身だって直ぐバレて、また厄介事起こしてるんじゃないかって訝しんでたけど、今は事情も解ってくれてる」
「……そう、でもなんでアイツにバレたんだろ?イザナキ様達は内緒にしてくれてた筈だけど」
「ああ、なんかイザナキ様が八寒地獄から氷大量輸入してたことから全部バレたみたいで……あいつのことだから無理矢理聞き出したんじゃないかなって」
「怖いもの知らずか!!あいつはもー……イザナキ様に後で謝っとこ」

と、言って本体白澤はベッドに沈んだ。

「で? 婚約のこと君は了承したの?」
「うん、多分あいつ赤ちゃん出来たから責任取りたいんだと思うんだ。あいつ……み、なっしご……っだから、親のいない寂しさは知ってるし」

みなしご部分で喉を詰まらせる分身に本体は驚く、以前は普通に言えていた言葉ではないか。

「いや、言いにくいなら無理して言わなくてもいいけど……ていうかどうしたの?」
「烏頭くん達にあいつが昔そう言われるの嫌ってたって聞いて……僕が言うのもなんだけど、あいつが悪くないことで悪口言われんのヤダなって」
「あー……うん、わかる」
「だよね……だからきっと自分の子が片親だとか父親不明だとかで他人から謂われない中傷を受けるのは許せないっていうか……昔のツラい記憶思い出しちゃうんじゃないかな」
「ああそうか、それで大嫌いな僕と結婚しようと思ったんだね 」
「そうそう、まぁ自分の子を妊娠したことで、好きまではいかなくても殺したいほど憎い相手からは脱却してるみたいだし、せめてこの子が独り立ちするまでは一緒に育てようとしてるんだと思う……」
「うん……そっか……それでさ、あいつにバレてる?僕があいつのこと好きだって」

一番気にかかるのは其処だった。

「さあ、どうだろ?あいつは解らないけど幼馴染さん達と桃タローくんにはバレてる、あと婚約会見なんてしちゃったから地獄の人は僕とあいつが恋人同士だったと思ってるよ」
「成る程ね、あいつ恋人でもない相手を妊娠させたなんて体裁悪いから敢えて誤解を解こうとしないのか」
「だろうね、だから僕はあいつと婚約は形だけ承諾することにした。同性って以前に僕には籍がないから正式な結婚は出来ないし事実婚って形にしてもらう」
「ああ、その方がいいよ……この子が独り立ちするまでの関係だし、いずれあいつが好きな娘と結婚する時バツが付いてない方がいい」
「うん、それでね、実は婚約の申し込みはまだされてないんだ……僕が君の中に戻ってからにしてもらおうと思って」

――たとえ気持ちが入っていなくても、好きな相手からのプロポーズは受けてみたいものでしょ?
そんな風に分身から訊かれ、本体の白澤はこの日初めて笑顔を歪ませた。
自分のことを客観的に見ていなかった分身は思う、これじゃあ周りの人間に心配されるのも無理はないと、今度からちゃんと隠さないといけない、これから距離が近くなるであろう鬼灯に余計な世話をかけない為にも。

「じゃあ、僕は君の中へ戻るよ」
「うん……今までご苦労様、ありがとう」
「此方こそ」

自分とまったく同じ存在を抱きしめて思う、以前はどうだったかなんて解からないけれど、細くなった。
君が少しでも元気になりますように、無事に赤ちゃんが生めますように、分身は最後そんなことを思って本体に吸収されていく、その想いごと総て一つになる。

「本当にありがとね……」

分身を受け入れた自分の身体をギュッと抱きしめながら、白澤は微笑んだ。




* * *




数日後、ナキサワメから産気づいたと連絡を受けた鬼灯が急いで駆け付けると、白澤がいる筈の部屋には結界が張ってあった。

「どうして中へ入れないのです?」

そう入口の前で金棒を構える鬼灯と対峙しながらイザナキは彼を見据えて言った。

「危険だから誰も入れるなと本人が申したのだ」
「……どういうことです?」
「総ての力を出産に注ぎ込む為に本体に戻ると、その姿で暴れてしまえば周りにいる者を傷付けるからと言って」
「それは暴れる程苦しいってことでしょう!?どいてください!私が傍に居ます!!」
「駄目だ、だいたいお主この中が何度あると思っている」
「何度って……」
「摂氏千、マグマ表面温度に匹敵する」
「千……」
「驚くことじゃない、お前の中の鬼火はそれ以上の力を持っているだろう」

それに地獄の業火に比べればまだ生ぬるい、と言うイザナキの声は硬かった。

「何故ですか!?お腹の子はもう殆ど鬼の身体になっている筈じゃ」
「蝋燭の火は消える瞬間にいっそう強く燃え盛る、それと同じであの鬼火も完全に鬼の身体になる前に最大の大きさに変わる」

その炎に灼かれた後に通常の出産が待ち構えている、いくら不死身の白澤と言えど無事に子を生めるかどうか不安になってくるとイザナキは語る。

「今、知り合いの水神総出で部屋を冷やし封印を掛けている、炎が弱まり次第を解く故、そうしたら傍にいてやってくれ」
「……」
「しっかりしろ、皆お前の為に力を注いでおるのだぞ」

と、絶句する鬼灯の肩を叩き、励ます。

「何故……皆さん私の為に……」

鬼灯は信じられなかった。
どうして鬼である自分と外海の神獣である白澤の為に神々が協力してくれているのだ。

「……多くの水神は生贄にされた人間を眷属に持っている」
「ッ!!」
「可愛い眷属と同じ境遇だったお主を放っておけないというのもあろう」

生きていた頃、神様なんて存在しないのだと思っていた。

「それに我々にとって日本に住まう者は皆守護の対象だからな」

死後に解かった……神は確かにいて、地を造り、天を創り、そこに住まう全ての者を見守ってきたのだと。

「白澤さんは……日本出身ではないのですが」
「出身の事を言えば渡来人の子孫を護れなくなるだろう、今やどれがどれの血を継いでいるか判からぬというのに」

神にとって大事なのは神の造りし地を愛する心、誰と血縁だとか関係ない、その言葉は『みなしご』と呼ばれた鬼灯の心にどう響いたのか。

「それにお主は地獄を護ってくれているではないか」

お前が地獄を護ってくれているから、地上の秩序が守られているのだと、皆解かっている、お前や大王達に感謝している。

「黄泉を……変えてくれて有り難う」

イザナミを残して来た場所は、もう寂しい場所ではないのだな――

「イザナキ様」
「父様!!部屋の温度が下がりました!!早く白澤様を!!」

鬼灯が漸く声を出した時、酷く消耗した様子のナキサワメが駆け寄ってきた。

「鬼灯!!貴方も早く傍にいってあげてください!!」
「ナキサワメさん」

普段大人しい彼女が取り乱しているのを見て鬼灯の心が乱れる。

「落ち着いて下さい、白澤さんは無事なのですか?」
「はい……白澤様……ずっと、貴方を呼んでて」
「結界を解く」

そう言ってイザナキが少々強引に結界を解いた、その途端凄まじい熱気が扉から立ち込める。

「くっ……白澤さん!!」

蒸気で先の見えない部屋へ構わず入っていく鬼灯、その後にイザナキとナキサワメが続いた。

「ほ……ずき?」
「白澤さん!白澤さん!!」
「鬼灯」

家具も調度品も何もかも燃えてしまった部屋の中央、白い獣が横たわっているのを発見した。

「鬼灯ーー」

ナキサワメの言ったように胴体の瞳は総て濁っていて鬼灯が見えていないようだ。
そのかわり大きな双眼には自分の顔がハッキリと写っている、ああなんて情けない表情をしているのだろう。
しかし、今はそんなことを気にしていられない、白澤の身体はどうなっているのか……子どもは――

「う、生まれる」
「え……?」

鬼灯を傷付けない為なのか、人型の姿に変化した白澤だったが、その代わり鬼灯の腕を掴み、その手に深く歯を立てた。

「……が、頑張って!!ひっひっふーですよ白澤さん!!」
「お湯を用意させろ!!」

鬼の身体には爪や歯などで傷つくことは無いが、その苦しげな様子を見る方が辛かった。
イザナキが下半身に回り、子どもが出てくる所を見守る、正直白澤の露わな部分など他の者に見られたくなかったが、白澤が鬼灯の腕を離さないから仕方が無い。
赤子を取り上げるのはイザナキに任しておけば安心、相手は子沢山のお父さんで、イザナミの出産を何度も経験してきた者だ、というか神だ。
たしか生まれた子は自分に一番に抱っこしてもらいたいとか可愛らしいことを言っていたが、助産師は除外されると思う。

「頑張れ白澤さん!!きばれ!!」
「きばれは可笑しいですよ鬼灯」

白澤から流れる玉のような汗を拭っているナキサワメからツッコミを入れられた。
どうせなら自分達の子もこの人の様に涙から生まれてくれば良かったのに、ナキサワメからすればこうやって母親に腹を痛めて生んでもらいたかったのかもしれないが……ああそうか、だから白澤に尽くしてきたのか。

「白澤さん、はくた……」
(……え?)

その時、白澤は信じられないものを見た。
鬼の目の涙……あの鬼灯が自分を見て泣いていたのだ。

「白澤……」
「ほぉ……ずき……」

つられたように白澤の瞳からも涙が流れた。




* * *




ここは桃源郷、桃太郎が本来の役割であった桃園の手入れに精を出していると、ポタリと頬に液体が落ちてきた。
ポタリ、ポタリ、空を見上げるとまた何粒も落ちてくる。

「雨……」

桃源郷に雨なんて珍しい。
そう思っていると、その雨が落ちる音が誰かの声に似ていると気付いた。


――嬉しい

――嬉しい

――私の子

――私と、私の愛する人の子

――生まれてきた

――ずっと待っていた

――嬉しい

――ありがとう


――生まれてきてくれてありがとう



――幸せ……




その雨は地獄の全土にも降り注いでいる。

「鬼灯君の声?」

そう、閻魔殿でも聞こえた。



――よかった

――無事うまれてきた

――あいつの子

――あいつの生きた証

――おめでとう

――僕が生んだ

――よかった

――可愛い

――我喜??

――我很快?





「これは白澤の声だな……」
「そうか……無事に生まれたのか……」

雨は中国の天界にも降り。


「……近々祝いに行ってやるか」
「アタシも久しぶりにお二人にお会いしたいわぁ」

EUにも、そして――


「なんだか優しい雨ねえ、ねえ小百合……虹は出るかしら?」

現世にも降り注いだ。


ナキサワメを始めとする水神の神気に満ちた部屋の中で流した涙は、三千世界を下り、彼らの本心を音にした。
聞こえるものには聞こえる、鬼と神獣の心……歓喜と祝福と、我が子そして伴侶への愛情。

聞こえた者は皆こう思ったそうだ。


「お前らラブラブじゃねえか、末永く爆発しろ」


と――




* * *



生まれてきた赤子は泣き疲れ眠ってしまった両親に挟まれスヤスヤと眠っている。
白澤はともかく鬼灯まで寝ているのはどうなのかと思わないでもないが、彼の事だからこの休みをもぎ取る為に何徹もしてきたのだろう。

「父様、決めました私……」

そんな三人を見守りながらナキサワメは宣言する。

「なんだ?ナキサワメ」
「第二子を望む時は必ずあの子を私の眷属にします」

鬼火の熱を押さえる為、神気を限界まで使い果たしたナキサワメは、もう二度とこんなことは御免だと心底思ったのだった。



この後、何日か休んだ鬼灯と白澤が桃源郷へ帰ると、何故か大勢の顔見知りから出迎えられ小さなパーティを催された。
戸籍のない白澤とは事実婚という形しかとれなかったが、とりあえず極楽満月で一緒に棲み子どもを共に育てることになる、その際「俺は邪魔者ですから」と言って近所に居を構えた桃太郎だったが、仕事で何日も家を空ける鬼灯の代わりに店へ泊まる事も多かった。
父親不在が多い割に子どもは真っ直ぐ健やかに育ってゆく子どもを見て白澤は……

(この子が独り立ちしたら鬼灯も出て行っちゃうんだろうなぁ)

と我が子の成長が嬉しいのと同時に、いつかくる今の生活の終焉を寂しく思っていた。
そう、ふたりして肝心なことを伝えていないばっかりに白澤は一緒に暮らしていてもまだ片想いだと思っているのだった。
妊娠出産の後遺症が中々治らない白澤を気遣いセックスもしなければキスもしない(したら歯止めが効かなくなりそうで出来ない)ことがその誤解に拍車をかけている。

結局、その誤解が解けるのは子どもが独り立ちしして……

「これで漸くお前もちゃんと彼女が作れるな」

と白澤が言ってしまった後だった。
この所為で久しぶりに殴り合いの喧嘩が勃発し、天国の一部が崩壊、白澤は天帝から大目玉を喰らい。
両想い発覚後、初めてのキスに感極まって号泣した白澤の所為で地獄にまた大雨が降ることになり仕事は大きく滞ってしまったけれど、まぁ鬼灯の自業自得でしょう。



めでたしめでたし?

とっぴんぱらりのぷー






END