一応イル誕に間に合わせようと頑張ってたけど間に合わなかったので、もうマイペースでいいやと思ってるカカイル告白話です。 捏造設定てんこもりなので何でも許せる人向けです(公式NL要素があります) 過去は過ぎ去ったことで未来は未だ来ていないこと、それならば現在は現に在ることだ。 でも自分が見ていることが現ではない幻だとしたら……それはなんなのだろう、これはなんなのだろう。 「ああ、よかったカカシ無事だったんだな」 「ほんっと、駄目だなぁお前」 「ふふふ、でも、もう大丈夫だよ……」 ――ミナト先生……オビト……リン…… 「今度火影になるんだろ?だから特別にお祝いにきたんだ」 「なにかお願いがあったらなんでも言ってね」 「お前には色々任せすぎていたからね、ご褒美もかねて」 ――嗚呼それなら俺の願いはたった一つ 《Stay Gold》 はたけカカシ 後ろ暗い経歴はあれどそれは同時に忍びとして誉れ高い経歴となっている、能力は彼が指揮した任務のメンバー生還率の高さを見ても明らかで、仲間命優先の作戦はあまっちょろく思えたとしても彼のそれまでの功績が大戦前の戦力の低下を食い止めたと上層部の御眼鏡にかなったわけだ。 また小さい頃に父親からまともに愛情を受けて育ったからか、その後出逢った仲間や恩師に恵まれていたからか、情の深さにも定評があり、部下達も先の大戦で揃って武功を立てていたゆえに指導力・カリスマ性もあると判断された。 それが、彼が六代目火影に任命された理由である。 一番気に掛けていた部下が問題児ふたりだったからか指導力やカリスマ性と言われても本人は納得いかないようだったがイルカは大いに納得した。 人格に問題あったらそもそも上忍師に選ばれないし、ナルトが警戒心ゼロで懐くわけがない。 一見誰にでも強気に見えていたナルト、確かにサスケやサクラやアカデミーの同級生に対してはガンガン行く性質だが大人に対してはどこか冷めた目で見ていたように思う、そんな彼が全力で寄りかかっていく姿勢をみせた稀有な存在としてカカシはイルカの目に映った。 七班の中忍試験時に一度諍いを起こしたものの、木ノ葉崩しの前には和解し、七班が事実上解散となっていた期間もカカシとイルカはそれなりに親交があった。 二人とも人当りはいいのだが狭く深い付き合いをするタイプなので友人と呼べるものは少なく、また大戦前後の結婚と出産ラッシュにより他の友人との付き合いが極端に減り、今では一番の呑み仲間という関係を築いていると自負していた。 「カカシさんがいまだに敬語を崩してくれない」 「はい?」 ぽつりと呟いた言葉にサクラが反応した。 甘味処であんみつを食べながら作戦会議中だ。 作戦と言っても任務じゃない、カカシが火影に内定した祝いとイルカの誕生日の祝いを合同でしようと計画が出たのでその日取りの確認だった。 『カカシ先生がイルカ先生の誕生会と一緒だったらいいよーって言ったんです。ひと月にパーティーを二回もするの大変でしょって』 それを生徒たちから聞いた時には眩暈がした。 公式な祝いではなく親しい者達だけで祝う内輪の会とはいえ、一里の長と一介の中忍のパーティーを一緒にしてしまっていいのかと聞くと、更にこう続けた。 『あとイルカ先生の誕生会も兼ねてたらサスケがもし帰ってきても居やすいでしょ?って、たしかにカカシ先生だけお祝いするならサスケくん照れちゃいそうだなって』 合同ですれば祝いとは名ばかりの食事会のような雰囲気になるだろうとの目論見だ。 この場合、照れ屋なのはカカシの方ではないかと思う。 「カカシ先生がイルカ先生に敬語なのは習慣になっちゃってるじゃないですか?あとイルカ先生もカカシ先生に敬語だし」 「俺はいいんだよ、階級も年齢も下だし、教え子以外には基本は敬語だろ?でもカカシ先生が年下に敬語使うのなんて里中では俺くらいじゃないか?」 カカシは同世代の上忍や仲の良い相手は呼び捨てにして相手が年上なら中忍でも下忍でも丁寧語を使うこともある、あとは依頼主には敬語を使うがこれは忍としてのマナーなので置いておく。 「俺もしかしてカカシさんから年上だと思われてる?」 「ないない、イルカ先生の誕生日おぼえてる人が年齢間違えるわけないでしょ?去年だってケーキ屋さんで年齢分のロウソク頼んでたし」 「そうか……」 そういえば去年も生徒たちと一緒にお祝いをしてくれたと思い出す。 チョウジが年々食べるようになるからケーキも年々大きくなる、でも大きなケーキをみて喜ぶ顔を見るとアスマに自慢してやりたくなる、なんて言って可笑しそうに笑っていたカカシ。 「まあカカシ先生の敬語じゃない喋り方ってちょっと抜けてて面白いですよね」 「抜けてるって、ああいうのは柔らかいって言うんだぞ?」 「えー?休日のお父さんみたいですよ、わりと緊迫した場面でも」 「それは部下を不安がらせまいとしてだな」 イルカはカカシと共に任務に就いた中忍仲間や元教え子たちから任務中の彼について聞いているが、いつも飄々としているが常に部下の様子を気に掛けてくれる良い上司だという、それを早く知っていれば下忍を潰す気かなんて聞かなかったのになと後悔したりもする。 「羨ましいんですねー先生」 「え?」 「カカシ先生から呼び捨てでタメ口きかれてる人たちが」 「なっ!ちがっ……うん??」 咄嗟に否定しようとして否定しきれなかったイルカは顎に手を当て首を傾げる。 サクラは「まあ敬語で話すってことは敬意を払われてるってことじゃないですか」と含み笑いを浮かべて残りのあんみつを食べ始めた。 「日時は俺の誕生日で本当にいいのか?」 「はい、その方がカカシ先生も逃げないでしょ」 「逃げ……まぁ自分だけのお祝いだったら理由付けて流してしまいそうではあるな」 戦後一年は喪に服すべきだとかもっともらしい理由を付けて公式の就任式も質素なものにすると言うし……こちらの本音はおそらく面倒くさい目立ちたくないだろうが、子ども達がしてくれるお祝いは照れ臭くて苦手に思うんだろう。 「誕生日祝いも毎回恥ずかしそうだもんな」 毎年アカデミー生から力いっぱいのおめでとうを言ってもらえるイルカと違い、そういう機会に恵まれなかった。 ガイが毎年勝負をしかけ紅が酒と料理を持ってきて飲み食いして(その間ミライの世話をするのが何故かカカシ)暗部がそんな風に忙しいカカシの代わりに仕事を頑張ってくれるくらいでカカシはまともに普通にあたたかい祝福を得ると居たたまれなくなるらしい。 「祝い甲斐があるってものよね」 いつもは勝てない相手(なんせ黒歴史をいくつも知られているから)の上手がとれそうだとニヤリと不敵な笑みを浮かべるサクラ、こういう笑みはサスケに似ているから案外相性が良いのではと思う。 「プレゼントも写輪眼を超えるインパクトのあるものを用意しないと」 「それは無理があるんじゃ……」 「えー?イルカ先生悔しくないんですか?一番印象に残ったプレゼントくれた相手いまだにオビトさんなんですよ」 「……」 悔しいかと言われてしまうと困るのだが、一種の観念はあった。 だって、死んだ人にはどうしても勝てないだろう。 * * * 朦朧とした意識の中でカカシはまだ夢を見ていた。 夢だと分かるのは肺を潰される怪我を負ったのに滞りなく喋れているからだ。 「あの人が幸せならそれで……他はなにもいらない……」 「あの人って?」 「イルカ先生」 そう答えるとミナトとオビトとリンは円になって「イルカ先生ってペインにやられそうだったとこ助けた男だよな?他は見てないけど、って男!?」「そういえばうみのさんちの子がそんな名前だったような」「私ずっと見てたから知ってる、ナルトくんの担任の先生だよ」なんて話しているのが聞こえた。 丸聞こえなんだからコッチで話せばいいのに、チームの中でひとりだけ除け者にされたみたいで悲しいとカカシが思っているとリンはミナトとオビトの手を握っている、すると何故かミナトがオビトの手を握って三人で「えへへ」と笑いだした。 くそ羨ましい、仲間に入れろや、とカカシが思っているうちに記憶の共有が出来たようた。 「イルカ先生っ……いい先生だなぁ!!俺はお似合いだと思うぜ!!男だけど!!」 「ナルトがそんなお世話になってたなんて!!そして想像以上にナルト苦労してたゴメン!!」 「ナルトくんが素直に育ったのはイルカ先生のおかげでしょうね、それにカカシの大事な人だもんイイ人に決まってますよ」 三人が仲良さげでやはり羨ましい、というかミナトはオビトを許しきっているのだろうか?ナルトが苦労した理由の根元なのだけど、あと何故オビトは少年時代の姿をしているのだろう?リンと並んでも犯罪臭をさせないためか、ズルい。 「でもなぁカカシー、本当に願い事その人の幸せでいいのか?」 「うん多分あの人の幸せの中に里の安寧も入ってるし」 そう言ってカカシははにかむ、三人がやっと自分の所へ来てくれたのも嬉しいが、イルカのことを話すのは少しこそばゆい。 「そうなんだ……イルカ先生の幸せは里の安寧なんだね」 心なしか幼い口調で語り合う。 「そうだよ……だってみんなが笑ってない世界であの人が笑えてるわけないし」 お人好しで穏和で泣き虫で、あたたかい、あんな優しい人はそうそういない。 「あんな人こそ幸せにならなきゃ……だーよ」 そう言って穏やかな寝息を立て始めたカカシ。 その顔を見てチームメイト三人はクスクスと笑って目を合わせた。 まったく……これだから生きてる人には敵わない。 その日の夜、はたけカカシが木ノ葉の門柱に寄りかかって眠っているのが発見された。 つづく 導入部分なので短めに 次回から恋心を自覚した上忍にラッキーイチャイチャ(ラッキースケベみたいな感じ)が降りかかります ところで今まで台詞の中でしか登場させられなかったサクラがやっと書けたことに深い感慨があります |