四月の中旬。
上忍としての最後の任務を終え、暫くの暇を命じられたカカシは人並みの生活をしようと朝起きて洗面を終えたら洗濯機を回し、軽めの朝食を済ませ、洗濯物を干したあとは映画を観ながら掃除をした。
イルカ先生も観るものだからと初めは真剣に観ていたが、アクションシーンになると無意識に相手の動きを覚えようとしてしまうので疲れる、バトル描写のある作品は映像よりも文字を追った方が純粋に楽しめるなと思った。
ワイヤーを使った動きだから、誰かのチャクラ糸を繋げば可能だろうか、分身の術で自分を自分で操れたら……じっと手を見る。
カカシは傀儡を作ることがないので傀儡使いの術はあまりコピーしてこなかったが、攻撃を見切る為にチャクラの動きは写輪眼で見ていた筈だ。
それをどうにか思い出そうとするが、結局サソリ戦の時は見ていなかったし、カンクロウに教わればよいか、いやわざわざあんな大物に頼まなくても虎の巻的なものが手に入れば……

(いや待て俺は火影、俺は火影、俺は火影、俺は火影)

正解には時期火影。
有事以外は実戦に参加しない、有事もなるべく起こさせない、里の優秀な後輩達に任せてどっしり構えてなければいけない、四代目も三代目も五代目もそうだったし、ダンゾウだってきちんと地位が確立されていればそうだった筈だし、火影ではないが尊敬する父なんてそれができて当たり前だ。
そういえばサソリの両親はサクモに殺されただとか言っていたが、そうやって親世代が残してきた恨みが大きな組織となり里へ牙を剥くのかもしれない、孫世代まで届かぬようにするにはどうすればよいのか、チヨはカカシがサクモでないと判るとすぐに許してくれた。

(……)

手を見たまま、集中すればそこへチャクラではない光が宿る。それはカカシの生命力、チヨの蘇生術の真似事だ。
この術を手に入れてから仲間の死をなんども見ていたのに未だ生き永らえている、あのとき、もしオビトに蘇生術をかけていればオビトによってあの戦で亡くなった全ての人は生き返ったかもしれないのに自分は使わなかった。
そんなことを考えていられる状況ではなかったとはいえカカシの胸に後悔は残った。
手に込めた生命力をその胸に当てると全身に均等に力が巡ってゆく、この術は今後自分の回復へ活用できるかもしれない、火影の職務はハードだと言うし、自分に還元するなら寿命などには影響しないだろう、おそらく。

「散歩いこっか」

忍犬達との契約は更新しようか迷っているが他の主人は認めないというし、ならば加齢や怪我や病気で介護が必要になった口寄せ動物を保護する施設を作ってそこで働いてもらおうかなんて考えている。
忍の相棒として生きてきた彼らは里の機密を知り過ぎているから機密保持の為にもそういう施設は必要だといつかイルカが話していた。
というのもカカシが『俺が死んだら忍犬達はどうなるんだろう、野犬になるにしても戦の臭いが染み付いているし、新しい主人を受け入れるなら生き永らえるけど、そうじゃないなら殺処分されるかもしれない』と泣き言を言ったからだ。
あの時は、あわよくばこの話を憶えていてくれたイルカがカカシの死後の忍犬達をどうにか説得して新しい主人を斡旋してくれたら……などという打算があったが、イルカの答えはカカシの想像の範疇を越えていた。
そして『俺は自分のことしか考えていなかったんだなぁ』と自分を責めだしたカカシをめいいっぱい励ましてくれた。
そうやって元々高かったイルカへの好感度がぐんぐん上がって、今では月まで届きそうなほど育ってしまっている、優しくて温かくて本当に俺なんかが好きになってはいけない人なのにと、自覚した時からカカシを苦しめる恋心は会えない時間すら糧にしてしまう。

何やら溜まってきそうだから今日はちょっと多めに駈けるかとカカシは思う、ちなみに忍のちょっとはちょっとじゃない、付き合わされる忍犬は久しぶりだから喜びそうだ。
カカシの散歩は忍犬と野山を跳び跳ねて回るので、散歩というよりも散走どころか散跳と言った方が正しいとたまたま気配を感じた上忍たちは思うのだった。

「やっぱ引っ越し先は郊外がいいかなぁ、あんまり近いと運動不足になっちゃう」

時速数十キロで飛ばしながら言うと忍犬たちに呆れられた。
護衛に入る暗部が可哀想だろうと言われてしまえば、じゃあもう面倒くさいからサスケに頼んでうちは居住区貸してもらうーなんて呟いた。
今住んでる所は『里に戻って来たときの根城にするといいよ、鍵はナルトとサクラに預けてるから』とかなんとか言ってサスケに貸す予定にしてある、そうすることで部屋の掃除などをナルトとサクラにさせるという姑息な手を使うつもりだ。
その代わりにサスケからうちは一族の土地を借りるというのはどうだろうか?あそこは更地でまだサスケに家を建てる程の余裕はない。

「テンゾウに頼んで木遁で家建てたりしたらマダラが化けてきそうだね」

それはそれで面白そうだと笑う主人に呆れた忍犬たちは、それもそれで護衛が可哀想だからやめろと言った。

「でもサスケやオビトの親御さんとは話してみたいかもしんない」
「それならイルカの生家の辺りに居を構えればイルカの親と話せるんじゃないか?」

そう言われた瞬間チャクラが乱れ、着地した細い枝を踏み抜き木から落ちてしまう。

「カカシ大丈夫?」
「あれしきのことで動揺するとは情けない」
「ははは……」

木から落ちて足を挫いてしまったので、カカシはそれを治そうと手のひらを翳した。
朝も行った蘇生術の応用で、普通の治療よりも治りが早い、やっぱり使えるなと満足げに笑う。

「それ、あんますると綱手様やサクラに怒られるよ?」
「うん……」

忍犬たちもけして良い顔はしない、カカシのコレがいずれくる時の為の"練習"に見えてハラハラするのだ。

「引っ越し先のことイルカに相談してみてはどうだ?」
「は?なんで?っていうか不動産屋じゃなくて?」
「別に内勤で働く忍なら誰でもいいが……たとえばシズネなど適任かもしれないが、火影の仕事を身近で見てきた者に火影に相応しい住まいとは如何なものか聞いてみたらどうだ?その上で不動産屋に条件にあう部屋を探してもらうというのは?お前が相手なら不動産屋も少々無理も聞くだろう」
「そんな、無理を聞かせるなんて」
「では言葉を変えよう、お前の事情や希望を聞いてもらえ」

そう言われても……と、なまじ適応能力が高いゆえに住み処なんて何処でもいいと思ってしまう、どうせ殆ど帰らないのだろうし……どうせ帰っても一人なのだし。

「みんな俺と一緒に棲も……」
「カカシ火影になったらボクたちになんか頼みたい仕事あるって言ってたよね?」
「……うん、そう、高齢で引退したとか病気とか怪我した口寄せ動物を引き取る施設を……」
「それは住み込みでなければならないんじゃないか?」
「……」

木の間に座り込んだカカシは、はぁと溜息を吐く、なんだかなぁ……火影になったらお見合いの話もくるだろうし里の為に伴侶を迎えるのもいいかもしれない。
恋は与えられなくても好意という気持ちなら注げる気がする、心動かされることはなくても感謝ならできると思う、しかし自分が好きなのは生涯イルカだけだろう……やはり申し訳なくてそんなことは出来ない。

「わかってたけど……俺ってひとりなんだね」
「それなら誰かに手を伸ばせばいいじゃないですか」

そう言って目の前に現れた教え子にカカシは少し驚いたが、目の前の彼女はあえて気配を消していたようだった。

「任務帰り?お疲れ様」
「ちがいます、綱手様から伝言です」
「え?」
「山で薬草採ってくると言ったらついでに犬の散跳してるカカシに火影執務室に来るよう声を掛けてくれって言われたんです」
「ああそう、よかった……わざわざこんなとこまで御使いで来たのかと……」
「あ、それとこれはイルカ先生からの差し入れのスポーツドリンクと犬用のミルクです。物凄いスピードで駆け回ってるから喉乾くだろうって」

渡されたビニール袋にはご丁寧に紙皿まで入っていた。

「走り回ったあとならサッパリしたもの飲みたいだろうけど犬にミネラルウオーターあげたらいけないって聞いたことあるからミルクにしたそうです」
「イルカ先生ったら……」

毒の耐性を付けている忍犬が今更ミネラルウオーターの成分など気にしないのだが今は任務中ではないので忍犬を甘やかしてやるのもいいだろう。

「俺の分まで差し入れてくれるなんて、やっぱいい人だぁねえ」
「逆に忍犬たちの分は用意して先生の分がなかったらかなり酷い人だと思いますけど」

そう言うサクラの顔にははっきり不快と書いてあった。

「カカシ先生はイルカ先生の好意をもっと素直に受け取ればいいんですよ」
「え?俺いつも有り難くもらってるよ?」
「そういうことじゃなくて、イルカ先生がわざわざカカシ先生にだけ向けてる好意のことですよ?」
「……いや、そんな打算的な人じゃないでしょイルカ先生は」
「そうなんですけど!そうなんですけど!!」

イルカと出逢って最初の頃に『俺のことまで気に掛けてくれるって、あの人いい人だね』と言ったこの男に『俺たちのついでだってばよ』『気を遣うのも教え子の上忍師だからよ』『勘違いすんなよ』と言ってしまった事があるのだが、それから何年もたった今も頑なに信じているカカシである、何故だか『イルカ先生のことはお前らに聞くのが一番でしょ』が抜けきれないのだ。
三人ともイルカが第一印象からカカシに好感を抱いていたのは解っていたが、なんせあの頃はカカシを非常識な距離の取り方をする人だと思っていたので大切な恩師を新しくできた上忍師の毒牙に掛からせないために必死だったのだ。
自分達も大きくなった今なら初めて出来た担当下忍と少しでも馴染もうと距離を詰めてきたり、独り暮らしのナルトの食生活にまで干渉してしまう気持ちが理解できた。

「イルカ先生は包容力おばけですよ……」
「うん、そうだね」

たしかにイルカは周囲への気遣いの出来る大人の男であり、アカデミー生にとってはいつまでたっても頼れる先生だけれど、カカシに対してはどこか他の人と違うのだ。
担当でもないのにカカシの赴く任地の情報はチェックし、帰ってくる日には偶然を装って出迎え、疲れたカカシの世話を率先してやりたがる、だいたいあんなに"カカシさんは俺専用!"みたいな態度をとっているのに本人もカカシも無自覚とはどういうことなんだってばよ、ちなみにイルカも『カカシさんのことはお前らに聞くのが一番だからな』と思っている、おそらくサスケに対してもそう思っているのでそこのところはサクラも有り難い気持ちがあった。

「はぁ……カカシ先生イルカ先生傷付けたら許しませんからね?」
「へ?うん、うんわかってるよー」

脱力しながら言うサクラに対しカカシは二回ほど頷いた。
イルカを傷付けるつもりなど毛頭無いが、万が一イルカを傷付けてしまったときに誰も怒ってくれる人がいないのは不安なので、火影という肩書きをもろともせず己が暴走しそうになったときに止めてくれる人がいるのは有り難い。
サクラなら怖くないし〜とカカシはへらりと笑った。

「は?わたしだって怒ると怖いですよ?」
「……サクラのは怒るというより叱るだもん、怖くないよ」

余計なことを言うナルトやサイには鉄拳を喰らわせていたが、つまりは余計なこと言わなければよいのだ。

「心配性すぎてちょっとウザいけど」

と、早速余計な事を言ってしまうカカシ。

「はっ!?」
「あんま心配されるとサスケにヤキモチやかれちゃう」
「ほっ!?」

真っ赤になって合いの手のような声を出す教え子をイルカとは違う意味で可愛く思ったカカシはヨッと弾みを付けて立ち上がった。

「ありがとねサクラ」
「……はい」
「俺は今から綱手様のとこ行くから、みんなそれ飲んだら先生のとこお礼言いに行くんだよ」

やさしい声でカカシが言うと皆はーいだの了解だの返事をする、紙皿にミルクを注ぎ皆が勢いよく飲みだしたのを確認するとカカシも袋からスポーツドリンクを取り出す、中に紙コップもあったので一杯分サクラに分けた。

「ありがとうございます」
「じゃあ俺もう行くね」

カカシはペットボトルを腰のホルダーにつけると、紙皿をミルクのパックの入った袋に入れ、サクラの方へ手を出す、ゴミを捨ててくるという意味だろう、任務中は痕跡を消す為に火遁で燃やしてしまうのだが、今はそんな必要もないので普通に家に持ち帰って捨てるのだろう。

(常識はあるのよね一応)

遅刻魔だとか成人向けの本を堂々と読むだとか胡散臭い風貌だとかはさておいて、案外ふつうのひとなのだ。
ふつうのひとが火影になってしまう。
同期のアスマはもういないし紅は子育て中でガイも大戦で後遺症を負った今、カカシが素直に頼れる者はどれくらいいるのだろう、カカシも非常にわかりにくいが包容力おばけの亜種なので部下や後輩は頼ってもらえないだろう、そこのところを包容力おばけ原種であるイルカに包容してもらいたいとサクラは個人的に思っている。
イルカの周囲にいる人間だってだいたいカカシに協力的だろう。
カカシの想い人がイルカだと仮定した場合カカシはイルカと親しい者に嫉妬してしまうことを怖がっているけれど、イルカの中身に親しみを抱く人は同様にカカシの中身にも親しみを抱けるタイプの人間ばかり。
噂によると二人とも来る者を拒まずに裏切られて傷付いたり無自覚に不誠実なことをして傷付けたりしてきたらしいので、好い加減人を見る目と普通の人とのかかわり方は培われている筈だ。
カカシの外身だけを見て評価するタイプの人間はイルカは突っぱねるだろうし、逆もまた然りなので交友関係云々嫉妬云々は特に大きな問題にはならないだろうと思う。

(カカシ先生がイルカ先生を好きならだけど)

十中八九そうなのだが、まだ実感が湧かないなぁなんて思いながら隣を見ると、カカシがイルカから差し入れられたペットボトルの蓋を撫でて幸せそうなオーラを発していた。

(やっぱイルカ先生が好きなのよね)

大人の恋愛に下手な口出しをして破綻させるのはイヤだけれど恩師二人の場合は口出しどころか手出ししないと一歩も先に進めない気がする。

「ってカカシ先生!早く行かないと綱手様に怒られますよ!?」
「あ、そうだねーーじゃあねサクラばいばーい」

瞬身をきって消えた元上忍師を思いながら、なんとかならないものかと途方にくれるサクラだった。



* * *



さて、綱手の所に連れられてきたカカシは一人の見知った子どもと一人の見知らぬ女を紹介された。
今後新しく柱部と天文部という部署が出来るらしい、天文部の説明は長くなるのでおいおい皆を集めてされるそうだ。
挨拶の後、天文部の女を退室されて、部屋には綱手とシズネとカカシとサイが残る。

「本題は柱部の方なんだが」

柱部はダンゾウ亡きあと解体されたが根のメンバーで結成される諜報部員だと聞いて、難しそうですねえ、なんて頬を掻く。
大人になった根の大半は先の戦争で無茶な戦いをして散ったという……生の指針にしていたダンゾウを失い死に処を探していたのだろうと綱手は眉を顰めながら言った。
カカシは戦争の原因になったオビトをあんな風にしてしまったのは自分だと、口に出せばきっと怒られるだろうことを飲み込んだ。
残されたのはサイと同世代かその下の子ども達、中途半端に教育されたまま野放しになってしまった子達、もう既に下忍か中忍程の実力を持つ彼らをどうしようかと綱手も頭を痛めているのだ。

「サイひとりじゃ持て余してしまいそうだね」
「まあ、そうですね」

と、まったく困っているように見えない部下を労うように肩を叩くと、カカシは綱手に進言した。

「もう実力は充分あるけどメンタル面が心配なんですよね?だったら一度、上忍師の資格を持つ者と精神科の医師で話し合いの場を設けましょう」
「上忍師と?」
「はい、俺の時もそうでしたが暫くスリーマンセルを組んでDランクの任務をさせるのも大事なんじゃないかなって思います……自分たちの守る里の人間と直接触れるのは新鮮ですから、ね?サイ」
「そうですね、暗殺や諜報しかしたことがなかったので、任務を熟してもあまり人の役に立てている感覚がなかったと思います」
「あと、あまり小さい子はやっぱりアカデミーに通った方がいいと思うので……」
「解かったアカデミーの教師も交えて話し合おう」
「はい」

とりあえずの対策はそれでいいかということになった。

「それにしても"小さい子"という言い方、昔のお前ならしなかったろうな」
「え?」
「私が放蕩する以前なら"幼児"だとか"児童"だとか、生意気な奴には平気で"ガキんちょ"なんて言ってなかったか?」
「あーいやーー」

今でもたまにナルトと同期の忍たちを心のなかでガキんちょ呼ばわりしているカカシはスーーと目を逸らせた。

「お前がそんな慈しみを込めた言葉を使えるようになるとは嬉しいよ」
「綱手様の中で俺のイメージどれだけ悪かったんですか」
「すまんすまんお前自身が里の大人からあまり大事にされてなかった子だからな、ちゃんと子どもを大事にできるようになっていて何よりだ」
「……」
「お前が早い段階で憎しみのループを断ち切れたのは親友やミナトのお陰だが、そこから更に仲間を大事にするようになって、子どもを慈しめるようになって……そうやって、空箱のようだった心に大切なものを蓄えてきたんだな」

目線を再び合わせると綱手の瞳が慈愛に満ちたものに変わる。

「自分がそうやって変わってこれたから根の子たちも変われると信じているんだろう?生まれ育った環境がどんなものであれ、人は人を愛せると」

そこまで言って照れたように笑う綱手を見て、カカシは「くさいですよ」とわざと茶化した。
なんだか胸の中がスッと軽くなったように感じるのは気のせいか。

カカシの"小さい子"という言い方はイルカから感染したものだ。
子どもを慈しんでいるように見えるのはイルカの影響だ。
自分の中に生きている人間の影響が見えることが以前は罪悪感を覚えることだったのに、今は死んでいった人達がそれを祝福しているように思う。
心の中にカカシが大切に想う生者と死者が混在していて、上手く折り合いをつけて一緒に笑っている。

(イルカ先生に感謝しなきゃね)

幸せな気持ちになれたのも彼に恋したからだと感じたカカシは火影の執務室だというのに和やかな雰囲気を醸し出していた。

「ところでお前、今新しい住まいを探しているんだってな?」
「はい」
「ふーん、決まりそうかい?」
「ああ……そうですね、うーん……それがなかなか条件というものを思い付かなくて……やっぱ火影邸になるんですかね……もう、いっそのこと此処に棲んじゃおうかな」

パイプベッドくらいなら置けそうだし簡易シャワーもあるしーーなんて冗談めかして言っていると真面目なシズネが真面目にツッコミをいれてきた。

「やめてください!報告に来た人がびっくりします!!」
「やだな本気でしないでください、棲むとしても空いてる部屋を借りて寝ますって」
「はぁ馬鹿が……」

呆れたように頭をふる綱手に、あははと感情のこもっていない笑いで場を和ませようとして失敗するサイ。

「そんなことだろうと思って、アドバイザーを見つけてやったぞ?」
「は?不動産屋さんですか?」
「いや違う、内勤歴が長く火影の仕事もよく見てきたからお前が思いつかないという火影の棲み処の条件というものも知っていると思うぞ?ちなみに私の条件は規格外だから恐らくなんの参考にもならん」
「綱手様それ自信満々に言えることじゃないですって」
「え?」

パックンに揶揄いで言われたことが脳裏によぎる……まさか……


「イルカには任務として頼んであるから、一緒に不動産屋巡って来い」


そしてカカシの声にならない絶叫がチャクラの乱れへと姿を変え、昼間の火影室を揺らし暗部が大騒ぎすることになるのだった。





つづく


どうしよう、カカイルがイチャイチャしてない
すみません次回こそ引っ越し先探し編ですから…