――たった一人の少年には、たった一人の少女がいた――

「だーかーらー!!ナルトとヒナタが先に上手くいきますって!!見てないけど大戦のとき目と目で通じあってたんでしょ?」
「えぇー?でもぉ目と目で通じあってたっていうなら俺とオビトもだしぃ、それにぃナルトってサクラが好きじゃないですかぁー」
「腹立つ!その言い方!!そんなサクラはサスケが好きなんでしょ!!」
「はい、うちのサクラはうちのサスケが嫁にもらいます!」
「急にキリッとすんな男前!!だからナルト失恋するじゃないですか、そうなったら絶対ヒナタの方振り向くでしょうよ」
「ナルトの失恋ってやっぱりサスケとサクラの結婚だと思うんですよね、ほらやっぱりうちのサスケとサクラが先にくっつくじゃないですか」
「サスケは暫く旅に出て帰って来ないでしょー!!」
「痛いとこつきますね、大丈夫です!!アイツ旅に出るまえにデコトンしていきましたから!!サスケとサクラのやりとり写輪眼で録画出来ないのが残念でしたが、あのとき俺マジで空気でしたよ」
「デコトンってなんですか!?アイツまだ必殺技があるんですか!?」
「壁ドンみたいなものです、サクラきゅんきゅんですよ女の顔してましたよ、あ、やっぱり録画しなくてよかった、してたらサスケに殺される」
「ナルトとヒナタだってデコツンはしてますよ!ヒナタすぐ真っ赤になりから熱はないかって心配して!ナルト優しいから!気絶させるけど!!」
「気絶させる優しさってなんですか!むしろ酷でしょそれ!彼女でもない子にそれするってことは誰にでもするんでしょ?俺がヒナタの上忍師だったらそんなデリカシーない男やめさせますよ!?」
「デリカシーないですけど!カカシさんだって俺が熱っぽかったりしたらそうするじゃないですか!首筋とか触って!!」
「脈のチェックをしてるんです!!あと任務外なら貴方にしかしないからいいんです!!」
「アンタに触られたら脈も上がるわ!!ていうかナルトだってヒナタにしかしませんよ!アイツあれでパーソナルスペース狭いですから?ある程度の好意があって自分のこと嫌がらない子にしかしません!!」
「なんでアイツそれで気付かないんですかぁ!?」
「そんなん俺が聞きたいですよぉ!!」

と、一頻り叫んで項垂れているアカデミー教師の中忍と、時期火影に内定している上忍見て、なにやってんだろ?と火影付の忍たちは思った。
綱手・シズネ・コテツ・イズモ・ハヤテ・イビキと綱手の特に信頼している暗部達と、カカシ・シカマル・サイ・シホ・カカシの特に信頼している暗部達、そして内勤の中忍達が揃う引き継ぎの真っ只中だ。
誰も暇をもて余しているわけもない。

「ナルトが火影になるまでの中継ぎだとお思いなのは貴方の勝手ですが、火影邸へ住まいを移さないってどういうつもりなんですか、同じアパートに住んでる俺達は気が気じゃないですよ」

そうやって、イルカがカカシに突っ掛かるまでは……

「ちゃんと結界も張りますし暗部が警備につくんですから今まで以上に安全だと思いますよ?先生達の住まい」
「そういう問題じゃなくて、六代目様に美味しいもの作ってあげてねぇって差し入れが来るんですよ同じアパートってだけで」

そんなのお前だけだと同じアパートに住む忍達は思ったが口出しするとややこしくなると思うので黙っておく。

「別に俺、料理上手ってわけじゃないのに」
「先生の料理、俺は好きですよ」
「なっ……あっ」
「そんな慣習があるならナルトにもアパートに住まうよう助言した方がいいですかねぇ、俺とイルカ先生が両隣に住んでたら他の人に迷惑かけませんし」

いや、だから別にお隣さんだからという理由でイルカに差し入れしてくるんじゃないってばよ!!
その場にいた者たちは心の中で思ったが口出しすると〜(略)さっさと終わらせて仕事に戻りたい。

「なに勝手に……ていうかナルトへの差し入れだったら奥さんにするんじゃないですか?」
「え?サクラはサスケと結婚するんですよ?」
「誰がサクラが奥さんって言いましたか!ヒナタですよ!ヒ・ナ・タ!!」

そこから怒涛のヒナタ推しトークが始まった。
アカデミーの一年生からナルト達の担任だったイルカは生徒達の恋愛模様をあたたかく見守ってきたのだ。
閉鎖的というかあまり広い範囲で他人を信用しない性質上か忍には一途な者が多く、いつ誰が裏切るか解らない無情な世界に生きるゆえか唯一の伴侶を大事にする。
まぁ言うなれば大人になってからは人間不信に拍車がかかるのでアカデミーや下忍時代に恋した者とそのまま結ばれて一生を添い遂げる率が高いのだ。
大人になってからお互いを信頼し愛を交わしたアスマと紅や他国の忍と絆を築いている若い世代は凄いと思う、そして烏合の衆でありながら仲間意識のあった暁などは敵ながら天晴れに思うこともある、許さないけれど。
話はズレたがイルカは早い段階からナルトにはヒナタと決めていたそうで(んな勝手な……と皆は思った)ヒナタがいかにナルトを恋慕っていてナルトもヒナタには安心感を抱いていたことを力説する。
生徒の恋愛事情を勝手に暴露し熱弁する教師に若干引きながら、しかし口出しすると〜(略)すると何故かカカシの方にも火がつき此方も此方でサスケがいかにイケ好かないスカした野郎で、でもサクラには優しかったこと、あの世の中全て恨んでいるような青年がサクラの愛(ナルトの友情と自分の仲間愛)によって変わったこと、サクラの方も昔よりサスケの心に寄り添い、サスケの解りにくく、しかし深い情に気付けるようになったと話した。
コイツら親バカだ!親バカップルだ!!いい加減にしてくれ!!そう思って助けを求めるように火影の椅子へ視線を向けるも、サクラの師匠でナルトを弟と重ねて見ている綱手にとっても二人の話は感慨深いものらしく面白そうに瞳を細めるだけだった。

「ウスラ鈍いナルトと奥手そうなヒナタじゃ付き合うまでにソートー時間かかると思うんですけど!?」
「ナルトはやるときゃやる男ですからキッカケさえあれば一気に告白そしてプロポーズまでいきますよ!サスケこそアンタに似て無駄に自戒心強いですから幸せ掴むの遅いんじゃないですか?」
「サスケにはナルトや俺が生きてついててやるから大丈夫です!!」
「ああそうですね!俺だって微力ながらサスケには協力しますよ!アンタより素直で純粋そうですし協力しがいありますしね!!」
「ていうか、あんまり鈍くてデリカシーないとナルトでも愛想尽かされるんじゃないですか?貴方に似て初恋だけど大人になってみたら少し違うような、手に入れるするよりも遠くからずっと笑顔を守ってあげたくなるタイプじゃないですか?」
「そんなのナルト寂しいでしょ!?遠くからってなんですか!!好きならずっと傍にいてくださいよ!!アイツと他の奴といったい何が違うって言うんですか?やっと世界が平和になろうとしているのに……自分が幸せになれない奴に民を幸せにできますか……」
「傍にいるならサクラくらいの積極性と行動力を求めますしナルトを信頼してほしいですね、時期火影だとかこれまでの境遇だとかから目を背けないで、ソートー重たくて息苦しい愛を受け入れてほしいし、そんなに愛される自分に自信をもってくれなきゃイヤです」
「イヤですって、子どもみたいな」
「子どもの我儘を聞いてやるの馴れてるでしょ?先生」

ナルトとヒナタとサクラとサクラの話だったよな?と、その場にいた者達は思ったが口出しすると〜(略)

「サスケは、きっと大丈夫です……アンタの教え子を信じてやってください……」

よかったまだナルトとヒナタとサスケとサクラの話だった。

「カカシさん……」
「というわけでサスケとサクラの方が先に上手くいくと思いますよ」

よくなかった。
すこし落ち着いた空気がまた不穏なものに変わった。

「だーかーらー!ナルトとヒナタが先に上手くいきますってぇ!!」

そして冒頭に戻る。

結局、ナルトとヒナタがくっついたのはそれから二年後のことでサスケとサクラは程なくして結ばれた。
二組とも口を揃えてこう言う。

「カカシ先生とイルカ先生はいつになったら上手くいくの?」

――と――


おしまい


本当ごめんなさい