※諸注意

映画RTNとTHE LASTネタバレ
設定をこれでもかってくらい変更・捏造しています
メンマ(月読ナルト)の性格よくわからないので、とりあえず黒ナルトっぽくしてます
メンマがヒナタに対して結構酷いです
チャラスケがそんなチャラくない感じです

ナルヒナは新婚さん
サスサクは付き合いたて
ボルト・サラダ妊娠前です

月読世界ではサクサクが付き合っていてメンヒナは両片思いみたいな状態って設定です

キャラ崩壊
特にサスケのキャラ崩壊とチャラスケのキャラ崩壊にご注意ください


この話はハッピーエンドとは言えない感じですが、この話しに続きがあるとしたらハッピーエンドです












その日ナルト、ヒナタは緊急任務だとカカシから呼び出された。
急いで火影塔へ向かう途中でサスケやサクラとも合流する、話を聞くと同じ案件で収集をかけられたようだった。
チームワークの関係で新旧七班が揃うのはよくあることだがそこにヒナタが加わるのは珍しい、機動力の高いサイや戦略家のシカマルならまだ解るのだけれどどうして自分も一緒に呼ばれたのかヒナタは不思議だった。
感知能力の高い八班メンバーが他の班に助っ人で入ることが多いから今回もソレだろうか、しかしこのメンバーに助っ人が必要だなんて相当の事態が起こっているのだろうか、思わず身震いし自分の腕を抱きしめた。

「ヒナタ?どうした?」
「へ?えっとなんでもないよ……」

隣を走るナルトに気遣わしげに訊ねられ反射的に答えると、ムッと顔を顰められた。
いつからかヒナタの不安や強がりを目を見ただけで解るようになった(しかし恋心には長年気付かなかった)ナルトに本人を隠すことは出来そうにない。

「私が呼ばれたってことはナルトくん達だけで解決できないことなのかな……まさかまた地球の危機とか」
「考えすぎだってヒナタ!あれだよ、ほらオレがサスケと一緒に任務に付きたいって言ってたからカカシ先生が叶えてくれたんだ」
「お前バカか……周囲の目を考えろ」

ナルトとサスケが組めば一瞬で小国を滅ぼせるレベルだ。
二人とも力のコントロールができるといくら言っても暴走した過去がある限り危険視され、待ったが掛かるだろう。

「その為にヒナタやサクラちゃんが一緒なんじゃねえ?」

――オレとサスケを危険視してる奴らも、まさか嫁の傍で暴走しないって思うんじゃ?
と、言えばナルトの隣でヒナタが赤くなる、自分達が付き合う以前から婚姻関係にあるのに嫁と呼ばれる事にまだ照れがあるのかとサスケは呆れた。
だいたい家族なんて力のストッパーにもなるが最大のトリガーにもなる存在だ。

「兎に角この四人で任務に当たれることになったら嬉しいってばよ」
「ナルトくん……」

不謹慎だと思ったけれど自分自身もナルトと同じ任務につけた時に喜んでいたと思い出したヒナタは苦笑いを零すに留める。

「どっちにしてもハシャギ過ぎんなよ、ダブルデートじゃねえんだから」
「うわっ!サスケの口からダブルデートって言葉出てくるなんて!明日隕石降るんじゃねえか!?」
「さ、サスケくん!私やりたい!ダブルデート!!」
「ああ、今度な……」
「楽しみにしてるからね!」

その“今度”がいつになるのやら解らないが、サスケのことだから約束は果たされるに違いない、サクラはニコニコと笑った。
緊急任務で呼ばれたというのに緊張感がまるでないけれど、任務になればスイッチが切り替わるだろう。

そう思いながら火影の執務室へ入った四人が見たのは異様な光景だった。



「だから!ここはどこだって聞いてんだってばよ!!」
「うっせーよ落ち着けメンマ!カカシ先生も困ってるだろ!!」
「てめえも落ち着け!!くっつくな鬱陶しい!!」
「男ばっかでむさ苦しい部屋だな……」

机には窓を背にしたカカシが座り、その両脇をイズモとコテツが固めているのはいつもの火影執務室なのだが、そのカカシにくってかかっている人間とその人間にくっついている人間と我関せずといった様子で外を眺める人間がいる。
よく見ると、いやよく見なくてもナルトとヒナタとサスケだ。
それも本人達より四つは若い姿をしている。

「なぁサクラちゃんあれって……」
「ええ、あれよね」
「お前ら心当たりあるのか?」
「……」

四人が傍観していると、気付いたカカシが手を上げる。

「漸く来たか、助けてくれ」

だらしない火影ですまない、とその顔には書かかれていた。



ナルト、ヒナタ、サスケ、サクラの前には只今
ナルトを百倍擦れさせたようなナルト。
ヒナタをワイルド且つ積極的にさせたようなヒナタ。
サスケをチャラくさせたようなサスケ。
この三人が立っている。

「どうして限定月読の中にいた三人が現実世界にいるんですか」

自分の少年時代と同じ顔をした雰囲気の全く違う人物と見つめ合っている三人の代わりにサクラが訊ねた。

「限定月読……ってオビトの作った面白世界か」

カカシはポンッと手を打った。
かわいい教え子ふたりが閉じ込められた空間を面白世界呼ばわりするなと思いながらサクラはカカシに言った。

「はい、この三人は私とナルトがオビト……その頃はうちはマダラだと思っていたけど……彼から掛けられた限定月読の世界にいたサスケくんとナルトとヒナタです」
「そんなことがあったの?」
「そこらへんの説明も今からするから」

そうヒナタに向きなおったサクラの耳に劈くような声が届いた。

「はぁ!?それじゃあオレ達は幻術世界の幻だってのかよ!!」
「コイツの話によるとそうみたいだな」

月読ナルト、たしかメンマという名前だった少年がサクラを指さし怒鳴っている、その隣で月読ヒナタが腕を組みサクラを睨んでいた。

「……お前らよさないか、サクラが困ってる」

と、月読サスケが止めた後、軽くサクラに頭を下げた。

「確かに此処はオレ達がいた世界とは違うみたいだ……」

そう言いながら窓の外の火影岩を見る、限定月読世界の火影岩にはサクラの父親の顔が彫られていた筈、それがないなら此処は別世界だと月読サスケは判断した。
暫く後、月読ヒナタがハッと気づいたように呟いた。

「そうだ早く任務を遂行させないと」

それを聞いて月読サスケやメンマもハッとする。

「そういえばそうだったな」
「ああ、さっさと終わらせようぜ!そんでオビトの野郎帰ったらぶっ倒す!!」
「は?」

オビトの名前を聞きカカシの両目が見開かれた。

「お前らオビトを知ってるのか?」
「知ってるよ、オレらの世界じゃアンタの親友で六代目火影だ」
「……」

カカシの親友で、火影になっているオビト……恐らくこの三人がいた世界はオビトが望んだ世界だ。

「急に執務室に呼び出されてよ、なにかと思えば世界崩壊の危機が迫っているとか言いやがって」
「世界の危機?」
「それを救う為に現実世界に行けって……あ、やっぱりこの世界が現実で私らの世界が幻術ってことか?」
「六代目はそれを知ってたのかもな」
「うわーショックだ、オレら幻なのかよー」

等と月読組がひそひそ話出すのを聞いてカカシやサクラは思案する。
ショックという割にはすぐに自分が幻術だという現実(ややこしい)を受け入れているのは、やはり術者にとって都合のよい存在だからかもしれない。

「ナルトとサクラによって解かれたと思っていた限定月読の術がまだ残ってたのか……その世界で生きるオビトがこいつ等を運んだと思っていいのかもな」
「世界崩壊って……オビトの無限月読の術が解けかけてるってことかしら?」
「なあ、その限定月読って術にかけられた時のことを詳しく教えてくれないか?」

そうサスケに聞かれたサクラは、公園で仮面の男(その頃はマダラだと思われていたオビト)から水晶の中に閉じ込められた時から戻ってくるまでの間のことを簡潔に説明し始めた。
初めて聞く話にサスケとヒナタは真剣に耳を傾け、月読世界の三人も同じようにおとなしく話を聞いていた。

「オビトさんのチャクラが尽きることで世界が崩壊しそうなんだとしたら、その術の媒介になった水晶にチャクラを送り込めばこの子たちの世界は保たれるんじゃないかな?」
「けどあの水晶はもう割れちまったってばよ……綱手のばあちゃんが調べてみるって言ってたから破片とかとってあるかもしれないな」
「おい何故こいつ等の世界を救う方向で考えてるんだ、お人よし夫婦」

サスケがナルトとヒナタに突っ込みをいれるとメンマと月読ヒナタが同時に振り向いて「夫婦!!?」と叫んだ。

「こ、この世界では私とメンマが夫婦なのか!?」
「え……ああ」

月読ヒナタから思いっきり胸倉を掴まれ問い詰められたナルトは、露出度の高い彼女に密着され目のやり場に困る。
一方メンマは「ウソだろ」と呆然と呟く、それを見たヒナタが困ったように眉を下げていた。

「いやだ認めない、こんな世界認めない」
「そんな落ち込まなくてもいいだろ!!」

ずーんと頭を抱えるメンマにヒナタはずかずか近づいていって叫ぶ。

「オレは大人になったサクラが見れてラッキーだけどな」
「え?」

月読サスケはというと自分が知るサクラより数歳上のサクラを見て、素直に綺麗だと思っていた。
少年時代のサスケに愛おしそうに見詰められサクラの心臓がどきっと高鳴る、以前の彼より男前度が上がっている気がした。

「あまりジロジロ見るな」

と、月読サスケとサクラの間にサスケが立ち塞がった。

「あ?オレのサクラをオレが見て何か問題でもあるのか?」
「オレの……だと?」
「そうだ、オレはサクラにプロポーズして了解をもらったんだ」
「プロッ!?」
「プロポーズ!!?」

思わぬ衝撃でサスケの顔は青く、サクラの顔は赤く染まった。

「ところで一つ訊ねたいんだが」
「……なんだ?」

固まっているサスケとサクラを尻目に、月読サスケはカカシの方へ向き直る。

「あちらとこちらでは火影が違うようだが……もしかして現実ではサクラの両親生きているのか?」

それを聞きサクラは月読世界のことを思い出す。
あの世界のサクラの両親は四代目火影とその夫人で、里を命がけで守った英雄と言われていた。
火影ではないなら生きている可能性もあると思いサスケは訊いたのだろう。

「ああ、サクラの両親は今もご健在だ」
「……そうか……」

フッと嬉しそうに笑む月読サスケにサクラは胸があたたかくなる。
しかし、次の瞬間メンマの方へちらりと視線をやって顔を曇らせる月読サスケを見て「ああナルトの両親が亡くなっている可能性に気付いたのだな」と胸が痛くなった。
もしそうならメンマにショックを与えると思い口を閉ざす優しさは、こちらの世界のサスケと違いない。

「ということはつまり、この世界ではサクラの両親に「娘さんをオレに下さい」って言える……ッ!!」
「お前チャラそうなくせにそんなとこ真面目か」

今度は打って変わって瞳をキラキラと輝かせる月読サスケにサスケは呆れサクラは再び顔を赤くさせた。

「そうと解れば早速サクラの家に……」
「待て!!サクラの両親への挨拶ならオレが先だ!!」
「なんだよ!こっちのオレはまだ挨拶もしてねえのかよ!!ちんたらしてるなぁ」
「十六かそこらでプロポーズしでかすお前が早すぎるんだよ!!」
「おーい、そこら辺でやめとけーーサクラが茹蛸みたいになってるぞぉーー」

緊張感のないカカシの声にサクラの方をみれば確かに真っ赤になってへなへなと床に座り込んでいた。

「大丈夫か?サクラ」

サスケが抱え上げ椅子に座らせる、月読サスケはそのサクラの前に立ち真剣な表情で見下ろして語りかけた。

「なぁサクラ、この世界のお前のこと良く教えてくれ、オレ、サクラのことなら何でも知っておきたい」
「え?え?」

さっきから「サスケ君はそんなこと言わない」のオンパレードである、嬉しいが確実に幻術だと思うと侘しくもあった。

「なあ……お前、そんなこの世界のこと知りたいなら教えてやるよ」

すると、すぐ横から冷たい声が落とされてきた。
サスケは月読世界の自分の眼を真っ直ぐ見て、半分垂らした前髪を上げる、そこには輪廻眼があった。

「それと、今は義手をはめているがオレの腕は片方ない、この世界のメンマの腕もだ」
「!?」
「メンマはオレとの戦いで片腕を失くした」
「おいサスケ!!」

サスケの敵でもない相手への精神攻撃を聞いて、ナルトが思わず駆け寄ってくる。

「そして現実世界ではオレの一族滅んでるぜ」
「……は?」
「しかもやったのはイタチだ」
「に、兄さんが!?」
「今は和解したが、そのイタチも既に亡くなっている」
「……」

月読サスケはあまりのショックに全身から血の気が引いている。
サスケは隙ができた月読サスケの首をトンと叩いて気絶させ、倒れた所を横抱きに抱える、里を抜ける時にサクラを気絶させた技だがあの後もこんな風に抱えたのだろうか。

「これでうるさいのが一匹減ったな」
「お見事」

ソファーに寝かせられた月読サスケとサスケを交互に見てカカシは薄く笑う。
デイダラ級の自爆技を披露したサスケは恐らく己の過去を乗り越えているのだろう、出来ればもっと別の機会に知りたかった。

「おい、なんでわざわざコイツを傷付けるようなこと……」

そんなにサクラを口説かれるのが嫌だったのか?と訊ねるナルトにサスケはフッと口角を上げる。

「このまま起こしておいたらコイツはこの世界やオレのことも訊いてくる……それをサクラやお前の口から教えるよりいいだろ」
「サスケ……」
「それにこう言っておいた方が、元の世界に戻った時に家族や友が健康に生きていることの有難味がわかるだろ」

サクラの両親が生きていたことを喜んだ彼なら教えるまでもないかもしれないが、元に戻った時により幸せを感じるのは此方の方だ。

「ってことは、お前もコイツらの世界を救ってやるつもりなんだな?サスケ」
「……ふん」
「サスケ君……」

ソファーに寝かされた月読サスケの頭を撫でていたサクラがサスケを見て溜息交じりの笑みを零した。
ナルトやヒナタだけでなくサスケもその気なら自分も協力するしかないだろう、幻術で作られた世界とはいえこうして人格のあるものが生きているのだから。

「じゃあ早速綱手様に連絡して――……」

限定月読に使われた水晶の破片の所在を知ろう、そう言いかけた言葉がもっと大きな声に遮られた。

「ふざけんじゃねえ!!オレはヒナタなんか大っ嫌いだってばよ!!結婚してるなんてなんかの間違いだ!!」

部屋の中央にいたメンマが傍にいた二人のヒナタに向かって叫んだのだ。
月読ヒナタは一瞬息を飲んだかと思うと、すぐに眉を釣り上げてメンマに詰め寄る。

「メンマてめぇぇぇえ!!!」

恐らく嫌いと言われるのなんて慣れているのだろう、一方ヒナタの表情はナルト達からは見えない。

「日向の宗家だかなんだか知らねえが!いっつも上から目線で、昔からオレが必死で修業してるときに「そんな修業の仕方じゃダメだ」とか「だから皆に認められないんだよ」とか言ってた癖にいきなりオレを好きだなんて言われて信じられるかよ!!」
「違う!あれは……!!私はお前を……」

それを聞いて一同は「あーー……」と残念なものを見る目でメンマを見る。
きっとその言葉は彼女なりに叱咤激励のつもりだったんだろう「皆に認められない」は裏を返せば「私は認めている」という意味にもとれるがそんなもの察せる子どもなんて少数派だ。
恐らく月読世界のヒナタもナルト(メンマ)を幼い頃から見守り続けてきたのには違いないが応援の仕方が壊滅的に下手だったのだ。

「まぁお前を見返してやろうって思って頑張ったおかげでオレは強くなれたんだけどなあ……そんなオレをお前はまだ駄目だって言うじゃねえか」

メンマの言葉は尚も続く。

「オレは火影になりたいのに!お前はその邪魔ばっかりする!!」

月読ヒナタとヒナタの肩が同時に震えた。

「てめぇ言わせておけば……」

堪らずナルトが割って入ろうとするが、その前に月読ヒナタがメンマの襟首を掴んで持ち上げる。

「お前オレを弱いだとかオレを守ってやるとか言ってるくせに、自分は妹よりも弱いだろ!!」

それでも構わずメンマが月読ヒナタに叫び続けた。

「弱いお前が火影の嫁になんかなれるわけねえだろ!!」
「いい加減にしろ!!!」
「!!!」

と、堪忍袋の緒が切れたナルトの鉄拳が入り、メンマは床に沈められた。
周りの者達はナルトにしてはよく耐えた方だと思ったが、至近距離で見ていた月読ヒナタは違うようで、倒れたメンマの上へ庇うように被さりナルトを睨み上げた。

「アンタ!!私のメンマになにすんだよ!!」

――これがヒナタの強さだ

ナルトには月読ヒナタも自分のヒナタと変わらず強く美しい女性に見える。
それなのに、幻術世界のもう一人の自分はそれに気付いていない。

「貴女も少し眠ってようね」

ころりと、優しい声が聞こえたかと思えば月読ヒナタがそのままメンマに覆いかぶさるよに倒れた。
傍にいたヒナタが気絶させたのだ。

「ヒナタ……」
「ナルトくん、今本気だったでしょ」

ヒナタが咄嗟にナルトの手を掴まなければメンマは今頃最下階まで貫き落とされていた筈だ。
責めるような眼差しで妻に見られナルトはバツの悪そうに頬を掻いた。

「だってコイツがヒナタに酷いこと言ってたからよ」
「……別に、私は気にしないよ」
「ヒナ……」

ナルトが何か言おうとした、その時。

「アンタ……ヒナタとメンマに何したんだ?」

タイミング悪く月読サスケが起きてナルトへ獣のような瞳を向けてくる、仲間が傷付けられて怒っているのだ。

「ご、ごめんサスケ、オレってばつい感情的になっちゃって」
「そうよナルト、メンマ酷い怪我じゃない」

そう言いながらサクラがメンマに駆け寄り脈を図ったり傷口を診たりし出したことで月読サスケから殺気が消えた。

「ではサクラとヒナタその三人を医療室に連れて行ってくれ、治療を頼む」
「カカシ先生……」
「お前のせいだからな?ナルト」

ナルトはぐっと黙り込む、ヒナタを侮辱されたようで腹が立ったとはいえ怒りに任せて敵ではない相手を殴り気絶させたのだ。
ちゃんとメンマと向き合おうとした月読ヒナタが言い返す前に手を出してしまったことも問題だ。
同じようにヒナタを侮辱された中忍試験のネジとの対決の時は出来たことが出来なかった。
それはきっと、メンマの言葉にナルト自身が傷ついたから――

『オレは火影になりたいのに!お前はその邪魔ばっかりする!!』

あんな駄々を捏ねる子どものような言葉、自分と同じ姿の者に言ってほしくなかった。
記憶の隅に追いやっていた弱い頃の自分を見せつけられたようで、悲しい。



「なぁナルト、お前本当にヒナタが好きなのか」

サクラとヒナタが退室したあと、自己嫌悪に駆られているナルトへ、カカシが追い打ちをかけるように問うた。

「はぁ?なに言ってんだカカシ先生、好きに決まってんだろ?奥さんだぞ」
「いやヒナタやサスケを見たところ、幻でも好きな相手は変わらないようなのに、お前だけはヒナタを大嫌いなんて言ってるから」
「それは!」

怒気を含んだ声を上げた時、執務室の扉が静かに開いた。

「メンマはちゃんとヒナタが好きだぜ」

そして月読サスケが入ってきた。
メンマと月読ヒナタを医務室に運んだ後に二人を任せて帰ってきたようだ。
月読サスケはナルトを見て小さく頭を下げる。

「どうせアンタ、メンマの毒舌に耐え切れずにキレたんだろ?悪かったな」
「いや、オレも大人げなかった」

しかし、凄く友達想いの発言なのだが服装と雰囲気がチャラいせいで八割くらいしか心に入ってこない。

「アイツも、ヒナタさえ絡まなければイイ奴なんだが……」

月読サスケは先程寝ていたソファーにドカッと座ると首をすくめ、語り始めた。

「さっきメンマはこう言わなかったか?ヒナタを見返してやろうって思って頑張った……って」
「ああ、言ったけど、アイツそれよく言うの?」
「まぁな……で、アイツのあれは感謝の気持ちだ」
「は?」
「自覚はねえけど、自分はヒナタがいるから努力し続けられたんだって解ってるんだろ」

自分はヒナタがいたから腐らずに済んだ。
落ちこぼれで誰からも相手にされてなかった時からずっとヒナタは自分を見ていてくれた。

「解ってるけど、認めたくなくて意地張ってるだけだ」

ククク、と月読サスケは可笑しそうに笑う、だがその瞳には心配の色も見て取れた。

「お前もアイツのことよく理解してるんだな」
「……まぁ、親友だからな」

なんの照れもなく答えた月読サスケにナルトとサスケが面食らう。
限定月読の中のサスケは、現実よりも精神的に早熟でメンマにとってはずっと兄のような存在だったのだろう、サスケの有り得たかもしれない過去だ。
チャラいけれど、チャラいだけではなく、良いところも残っているから月読世界のサクラを射止められたのだ。
師として上司としてじーんと温かい気持ちになっているカカシとは反対にナルトは月読世界の自分に余計イライラしていた。

(ヒナタにもサスケにも大切に想われてるくせに駄々捏ねてんじゃねえってばよ)

両親がいて、里の者に差別されることなく、理解してくれる親友がいる。
自分と同じく最初は落ちこぼれだったかもしれないが、それでもヒナタが傍で励ましてくれたから強くなれたんだろう、それなのに意地を張っているとは何事だ。

「……決めたってばよカカシ先生」
「ん?何をだ」
「アイツらが此処にいる間に、メンマの目を醒まさせてやる」

ゆらゆらと、九尾のチャクラが揺れている。
どうやらクラマも先程のヒナタへの態度に腹が立っていたらしい。

「メンマにヒナタを好きだって自覚させてやる!!」

そして告白させてやる!!
グッと拳を握り気合を入れるナルトに、カカシやサスケは大きく溜息を吐いた。
面倒くさいことが増えたがこうなった以上協力してやるしかない、月読サスケもフッと可笑しげに笑みを零した。

「で?具体的にはどうするんだ……?」
「そうだなぁ」
「突然恋敵でも現れたらアイツも焦るんじゃねえか?オレらの世界じゃヒナタがメンマ一筋なの解り易過ぎて誰もちょっかいかけようなんて思わなかったけど」
「こっちもそうだよ、まぁ当のナルトは全然気づかなかったけど……恋心を解ってる分メンマの方が大人なのかもな」
「ちょ!カカシ先生ぇ!!」
「しかし恋敵か……難しいところだな」

なんせヒナタの同年代で恋人がいない者など、キバかシノくらいしかいないがあの二人とヒナタが並んでいても仲間か家族にしか見えない。

「よし!ちょっと月からトネリ連れてくるってばよ!」
「それは本気やめてあげて……」

月で罪を贖うことを選んだ彼をそんなことで地球に連れてこないでやってくれ、彼を地球に迎えるのは本人の気が済んでからでいいじゃないかというか、里としてもこれ以上他国とのパワーバランス崩すような相手を抱えていられない。

「では忍界大戦の時サクラにラブレターを渡した忍者に一芝居うってもらうってのは?」
「そんな野郎がいんのか、そいつにしようぜ」
「お前なんでそんなこと知ってんだよ!!っていうか誰かを当て馬にする方向はやめよう!な?」


と、こんな風に男性陣が真面目なのだかふざけているか微妙な話合いを行っている時、サクラとヒナタはというと医療室でメンマの治療を行っていた。

気絶しているだけの月読ヒナタとは違い、メンマは骨折はしていないものの床に叩き付けられた部分すべてに打撲傷を負っていた。

「よし、これで後は目覚めるのを待つだけね」

治療を終えたサクラがメンマに布団をかけると横で見ていたヒナタがホッと息を吐いた。

「ごめんねサクラさんナルトくんが迷惑を」
「いいのよ、あそこでナルトが殴んなかったら私がコイツを殴ってるところだったわ」

自分に惚れている女の子に吐くセリフではない、他人を突き放さなければならない事情がない分、反抗期全盛期のサスケよりも酷いとサクラは感じた。
まあそれはサスケに対する贔屓目もあるのだろう……それならメンマにも何か事情があるかもしれないし、やはり殴るのは駄目だ。

「……?どうしたのヒナタ?」
「え?ええっと」

ぼーっとしながらメンマと月読ヒナタを見るヒナタの目がどこか遠くを見ていたので、心配になったサクラが語り掛ける。

「月読世界の私って凄い格好してるなって……」
「ああー……そうね、最初見たとき私も驚いたわ……」

こうして二人を比べると余計に露出度の差を感じてしまう。
隠すべきところをきちんと隠しているのにスタイルが良いのが解るヒナタも凄いけれど、胸を出し鎖骨を出し腹を出し太ももを出している月読ヒナタは大丈夫かと心配になってくるのだった。


(よかった……サクラさん、うまく誤魔化せたみたい)

苦笑いを零しながらヒナタは思う。

先程メンマが月読ヒナタに言った言葉によって、彼女がしっかり傷付いていることに気付く人は今のところ皆無だった。





END