束縛の罰則
密罪を三つ積みの攻め目線


昔出逢った旅人に、この世で一番楽しいことはなんだと尋ねた
すると旅人は心の底から可笑し気に「そんなのその時どきで変わってくると思うけど、僕が今楽しいと思うのは好きな相手に罪のない秘密をつくることだよ」なんて
自分の相棒に聞こえないようコッソリと教えてくれた
罪のない秘密?ってなんだろう?秘密は悪いことじゃないのかな?と思いながら、聞いてたけど今なら解かる
こんなかわいい秘密だったら許せちゃうかもしれない



ニャンニャンニャン


「行ったな……」
「ああ」
「……ううう」


チョロ松に連れられて十四松とトド松が浴室へ降りていったのを見届けた(目を瞑っていたけれど)おそ松はさっと起き上がり頭を抱えている次男と身悶えしている四男へ声をかけた。
三人ともよく起きずに寝たふりを続けられたと思う。

「くっそオープンスケベ最高じゃねぇか、素直薬の効果かよ、普段からその半分でいいからデレろよ、寝てる時襲われんのは勘弁だけどよぉ」

布団の上でコロコロ転がりながら先程のチョロ松の言動を思い出して萌えている長男、あんまり布団にシワがつくと上がってきた三人に起きていることバレると思う(バレなかったけど)

「それよりおそ松」
「なんだ?」
「お前どうして今まで教えてくれなかったんだ?やはり弟を頼るのはプライドが許さないのか?」
「は?なんの話」
「……お前“チョロ松とキスしなきゃ死ぬ病”なんだろ?」

それは……さっきチョロ松がした弟達の前でキスしてくる長男のことをノロケたような発言のことだろうか……カラ松は本気で病気だと思って心配しているのだろうか。
そう理解した瞬間おそ松のあばらに電気のような衝撃が走った。

「痛ぇ……!!」
「なっ!?大丈夫かおそ松!!今すぐチョロ松の唇を……」
「いや、ちげえから!!アイツらの邪魔すんな!!」
「うっせぇ!!十四松たちに気付かれるだろ!!」
「お前が一番うっせぇよ!!」

ツッコミを入れるが効果はなく、一松はぶつぶつと語りだした。

「ああ十四松……もう一松由来の100パーセント一松製の匂いってなんだよ、メイドイン一松のフレイバーってなんだよ……なんでそんなのに釣られるんだよ十四松」
「嬉しそうだねぇ一松」
「うーむ、オレは違う場所や違う生き物の匂いが付いたトド松を抱くのもキライじゃないんだがな、アイツが過ごした一日を最後にオレの色で塗り替えているようで心が充足する」
「サイコパス発言やめて」
(クソ松……お前、神か……!!)
「変なとこ憧れるのやめて」
「フッ……だが可愛いなトッティさすがオレのマイラヴァー」
「ドヤ顔やめて、あと意味が重複してる」
「おそ松兄さんはすぐにからかうから相手がデレにくいんだと思う、こういう風にちょっと得意げになるとか十四松みたいに素直に嬉しがればチョロ松兄さんだってもっとデレてくれると思う」
「お前は照れやすいのか調子乗りやすいのかどっちなんだ?」
「冷静に分析すんのもやめて」

そうこうしてるうちに一階から騒ぎ声が聞こえだした。
あれだけ騒がしければコチラの声が気付かれることはないだろう。

「どうしたんだろう……」
「おおかた十四松が恥ずかしがっているんじゃないか」
「チョロ松の近所迷惑だろって怒鳴り声聞こえたけどその声が一番近所迷惑だよな」

今チョロ松とトド松が十四松にセックス前の準備の方法を教えているところだと思うのにギャーギャー言っていれば色気がない。

「……」
「童貞には刺激が強すぎたか……」

前かがみになってモジモジし始めた一松に、おそ松が苦笑を零す。
とりあえずなんか萎えさせよう。

「一松」
「な、なに?」
「注射器が一本、注射器が二本、注射器が三本」
「なに!?」
「注射器が四本……なぁタッティ収まった?」
「へ?」

一松はハッとして己の股間を見ると先程まで半勃だったものがスッカリ収まっていた。
新手の睡眠導入法かと思ったが違ったようだ。

「フッ……オレが注射器の歌うたってやろうか?」
「いらねえよ、なんだよソレ」

とりあえず興奮して十四松に無体を働きそうな時はまず心の中で注射器を数えようと思い、それなら次男の注射器の歌を思い出すのもアリなのではないかと一松は思う、次男の歌声は低いから精神安定に……ならない、どうしても腹が立つ。
一松は首を何度か振って布団の中野定位置に戻る、次男はキョトンとした顔のままその横へ並び、長男も少し布団のしわを伸ばした後で自分の位置に戻った。
浴室の方からの騒ぎ声が続く中、おそ松がぽつりと弱音を零す。

「やばい睡眠薬盛られて逆レされそうってことが今更ながらショックになってきた」
「……泣くな、おそ松……というか、お前にそんな繊細さが残されていたんだな」
「デリカシー無し松のくせに」
「デリカシーか……チョロ松のやつ日頃のセックスに不満があるんじゃないか?」
「そもそも最初が酔った勢いって……童貞松兄さんならもっと夢見てたろうに」
「お前と両想いになってから浮き足だって妄想していたからなぁ……おそ松がそんな期待に応えられるわけがないのに」
「今回だって素直薬使って「ゆっくりして」って頼めばよかっただけのことなのに……聞いてもらえる雰囲気じゃなかったのかな?」
「だいたいお前たちはコミュニケーション不足じゃないのか?お前もチョロ松も自由人なトド松より単独行動多い気がするんだが」
「そういえば、おそ松兄さんおれらと一対五の構図が多すぎてチョロ松兄さんだけになんかするってことないじゃん?特別構うのはボケる時と攻撃するときくらい?そりゃすれ違いもするよね」
「熱海に誘った件もあのあと臨時収入あったのに有耶無耶になったからアイツお前の冗談に振り回されたと思ってるぞ?」
「もうやめて!お兄ちゃん泣いちゃうよ!」

ショックを受けていた上に自分が悪いという流れになってきたおそ松は泣きそうだ。

「それとこれとは話が別だろ……もうチョロ松お仕置き決定」
「だからそういうところが……」

罰としてのセックスなんて虚しくないのかと思った一松だったが、さっきのチョロ松を見るに結局気持ちよくなるんだろうなと思う、おそ松だから気持ちよくさせようとするだろうし、クソ兄たちの性関連はもう間に愛があればオーケーだと思っておこう、そうしよう。

「カラ松もそんなこと言ってるけどトド松もお前とのエッチに満足してるかわかんないじゃん」
「まって、おれらもそういう話に突入してくの?」

兄弟の赤裸々な性事情なんて聞きたくないのだがと思いながら、後学の為に知っておきたい気持ちもある一松。

「不満があったら言ってくるだろアイツ……あとオレもアイツに負担にならないよう気は遣っている、それが功を奏してか、最中に同じペースで楽しめるのは嬉しいと言ってくれたことがある」
「ん?」
「昔は何をするのも一緒だったのに大人になってから歩くペースや食べるペースが違ってきたから、オレとのセックスで同じように気持ちが高まっていく過程がイク瞬間よりもずっと幸せなんだそうだ」
「ドライモンスターとは」
「……成程なぁ……そうだ一松、十四松がアイツらに準備教えられてる間に俺とカラ松もお前に色々教えてやるよ」
「え?」
「そうだな、十四松だけが勉強しておくというのも不公平だ」
「はあ?」

そんなわけで、そこから十数分間に渡りかなり濃い内容の下ネタを聞く羽目になり、下半身が反応するたびに心の中で注射器を数え、途中で注射器の歌もうたってもらった一松なのだった。



END

おそ松兄さん絡むと色松が謎に喋るし仲良くなるので楽しいです(ちなみにサイバー松が絡むと十四松はおとなしくなります多分ツッコミは二人だから)