せかいのおわり

Twitter企画数l字l松でおわりの話に寄せたものです。ちょっと特殊設定です。オマケ話で死後ネタ入ってます。二人とも口調・一人称・二人称が安定しない仕様です




【END OF WORLD】




+ぼくは此処がすき


あったかいしゆらゆら揺れて心地よいし


何よりきみとずっとくっついていられるから


ねぇ行かないでぼくらずっと一緒にいようよ+




-それはダメ


もう三人が出ていっちゃったし


ぼくやお前がいかないと最後のアイツも出ていけないよ-




+やだよ


外にでるのはこわい


だって時々へんな生き物の声がきこえてくるんだ……


にゃーとかワンワンって+




-あれか、


でもさ、どんな生き物の声なのか気にならない?


それに優しい声のほうが聞こえてくるじゃない?ぼくらを待っていてくれてるんだよ

たしかに外に出るのはこわいよ、でも大丈夫


ぼくにはきみがきみにはぼくがついてるもん


ずっと一緒にいて守ってあげる-




+でも…+




-ずっと此処にいたんじゃぼくはきみの声も聞けないし姿を見ることもできない


だから外にでるよ-




+ぼくのため?




-ううん、ふたりのためだよ


ぼくはきみにもう一度出逢いたいから


きみの名前が知りたいから


ぼくはもう行くよ、きみも早くおいで-




+ま、まって!ぼくね!


きみのことが……+




-その話は外に出てから聞くよ-




+やだ!だって外に出たら全部わすれちゃうでしょ?+




-大丈夫


きっと新しいせかいでも同じ気持ちになれるよ


だってぼくらは……-




『おめでとうございます!四番目の赤ちゃんも無事生まれましたよ!あと二人頑張って!』




+-その声と四人分のなきごえに呼ばれてぼくもそのせかいにサヨナラしたんだ-+




「一松にーさん!ぼく十四松だよ!!ぼく十四松だよ!」

「知ってるよ、そんなの……で?なんの用なわけ?」

「野球しよ!!」

「またか……他にすることないのお前……っていうかなんでオレなんか誘うの?」

「えー?だってぼくは兄さんのこと………あれ?」

「どうしたの?」

「あれ?ぼく前にも一松兄さんに同じこと言おうとしたことあったような…」

「……十四松、思い出したの?」

「へ?なにを?」

「……ま、いっか、その話だったらオレの方から先に言わせて」


「なに?一松兄さん」



「あのね十四松」





-ぼくはきみのことが――……-





【AND START】




目の前には大きな川



ああ、久しぶりに来たなーーと特に感慨もなく思っていると「うおおおおおお」という声とバシャバシャという水しぶきの音が聞こえてきた。

以前見た時は日本泳法という日本古来の泳ぎ方だったが今はバタフライで川の向こう岸からやってくる弟。

くすりともせずに見詰めていると、バタフライの体制のまま岸まで登ってきた(蝶というよりシャチホコみたいになってる)


「いやぁ、あんさんまた死んだんでっかー」


今度は笑って言ってやると弟も笑って「あいあい!」と手を上げてそのまま頭の後ろに回した。

あ、もう“弟”ではないんだ……“ジュウシマツ”ではあるけどね。


「そういうあんさんこそー?」

「ふひひ、また死んでまいましたなー」


久しぶりにクスクス笑みが漏れる。

そうだよ、俺たちは死んでいてココはあの世とこの世を繋ぐ三途の川の此岸側。

ここで会ったが百年目ってこういう時に使うんだっけ?まあ数日前に病院で会ったばっかりだけどね。

同じ時期に同じ地域に生まれて、似たような名前を付けられるコイツは、まあまあ一緒に生きて、だいたい死ぬ時も同じだった。

今回みたいに六つ子の兄弟だったことはないけどね、っていうか六つ子ってなんだよ六つ子って有り得なくない?と思ってると十四松は起き上がってこっちに近付いてきた。

ああ若い頃の姿、あの頃に着てたお揃いの黄色いパーカーに海パンにスリッパ。

そんな俺も昔通り、紫のパーカーを着てジャージとサンダル履いてる。


「そっか……」

「うん」


焦点の合わない目を俺に合わせて、十四松は微笑んだ。


「楽しかったよね」

「まぁね」

「次はどんな姿に生まれ変わるのかな?」


十四松は指折り数えながら今まで僕らが生きてきた人生を振り返る。

飛鳥時代に太子と妹子だった時もあれば、警察官だったこともあって、医者と操縦士の時もあったよね。

職業も生き方もバラバラだったけど、いつもお前は傍にいてくれた。

それで、今回は六つ子の兄弟だったわけだけど……


「また、一緒にいられたらいいね」

「そしたら結婚する?」

「……」


気持ちが結ばれたのは初めてだったね。

今度こそ結婚できる国や時代に生まれたら良いけど、正直また兄弟でもいいかなって俺は思ってるよ。


「一松……ぼく、眠りたくない、ずっとこのままがいいよ」

「お前、前もそんなこと言ってたね」


あの世界に生まれ落ちる前も、怖いから出たくないって言ってた。

生まれてからはお前の方が元気でいつも俺の手を引いて歩いてってくれてたのに、こんな時は俺の方が手を引いてあげなきゃいけない。

離れることを怖がる君と、離れてしまっても大丈夫って思ってる僕、だからいつも僕の方が先に生まれるんだよ。


「十四松、聞いて」

「……」


僕が真剣に言うと十四松も真剣な顔して頷いてくれた。


「大丈夫だよ、僕はどんなに離れても君を忘れないし、ちゃんと探して迎えに行くから」

「……一松」

「僕が君に嘘を吐いたことあった?」


と、訊いたらぶんぶんと首を横に振ってくれた。

本当は嘘なんて数えきれないほど吐いてきてるけど、十四松の中でそれは嘘にカウントされてないみたいだ。


「じゃあ、一緒にいこう?」


また、ねむりの泉に行って、天使の卵のなかで眠ろう?

そしたら、またあの世界で巡り逢えるからさ。


「……うん」


手を差し出すと十四松がぎゅっとその手を握ってくれたから僕も強く握り返して自分の方へ引いた。

十四松の袖が長くて見えないけど所謂恋人繋ぎってやつ?他の奴らが見たら冷やかしてくるね。


「ねえ、一松」


もう少しでねむりの泉に着くという所で、急に十四松は立ち止まって、僕の手をギュッと握った。


「なに?十四松」

「……また、暫く話せなくなっちゃうから、言うね」


久しぶりで照れくさいけど……って顔を真っ赤にさせた十四松はここ十数年見てきた余裕のある大人の顔じゃなかった。

まだ若い頃の、不器用でなんでも一生懸命やってた君に似てる。


「あのね一松」

「ちょっと待って、十四松、それだったら僕から言わせて」

「え?」


ごめん、お前は勇気を出してくれたんだろうけど、もう兄弟ではないけど、まだお兄ちゃんとしてのプライドみたいなの残ってたみたい。

目をまん丸にして見詰めてくる十四松の頭をぽんぽんと叩いて、あの日みたいに微笑んで見せた。



「あのね十四松、僕はお前が大好きだよ」




たとえ世界が終わっても

また君と始められるくらいには



【ENDLESS END】



ごめんなさい、なんかよく解らないものが出来上がりましたが、楽しかったです

素敵企画ありがとうございました〜!