オーマイブラザー


「一松兄さんストレス溜まってるんなら僕で発散していいよ……?あの……だからあんまカラ松兄さんばっかり殴るのは……」

「は?」




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――好きな人が傷付いて嬉しい人なんているんだろうか……いや、いるだろうけどさ……僕はイヤだな――



(ああ、まただ……)


夕食後、話の流れで兄弟みんなが一松をからかう中ひとりフォローを入れたカラ松が絞められていた。


(わー痛そう)


そう思いながらも他の兄弟同様に笑いながらその光景を見ていたトド松だったが、カラ松が泡を吹き始め一松から「汚なっ」と言って床に転がされた時に一瞬くらりと気分が重くなった。

最近こんなことが多い。

隅で落ち込むカラ松を慰めるようにチョロ松が肩を叩いたり十四松がへばり付いて癒しているのを見て安堵を覚えるけれど、先程感じた嫌悪感は拭えない。

別にいいのだ。

カラ松は怪我なんてすぐに治るし、数分後にはケロリと忘れてしまうだろう、兄弟喧嘩で後を引かないのが自分たち六つ子の良いところであるし、あれは次男と四男のコミュニケーションなんだとトド松は自分に言い聞かせる。

一松がカラ松を嫌っているわけじゃないとカラ松を含め皆知っているし、あの一松に「普通にできないのか」なんて言ったら深く傷付けるに違いない、それこそカラ松が肉体的に受けている数百倍の傷をだ。

カラ松は自分が傷付くより兄弟が傷付く方を厭うであろうし、なによりトド松自身が一松が傷付くところを見たくない……。

そもそも自分の世界に入り込み易く口で言っても聞かないカラ松と対話する為には一松のように拳で語りかける必要もあり、一松が暴力を辞めてしまうとカラ松が余計遠くに行ってしまう可能性もある。

だからトド松は一松に「兄さんを殴るのをやめて」なんて言えなかった。


(でもなぁ)


今日はまだ昼間の傷だって残ってるのに……と、トド松は風呂上がりに手当てしたカラ松の体を思い出して眉をひそめた。

昼間、カラ松は一松と喧嘩していて(その時は掴み合いの喧嘩だったけれど)その時たまたま足元に転がっていた缶を踏んで思いっきり庭石に突っ込んでしまったのだ。

背中を強く打ったカラ松を一松とトド松は家まで支え、とりあえず汚れた服を脱がすと背中に大きな痣ができていた。

一松がばつの悪そうな顔をして謝ってきたのが衝撃でその時のことはあまりおぼえていないし、Mの一松が痣を見て少し興奮しだしたのが怖くてすぐ隠してしまったからよく看ることもできなかった。

だから他の四人が銭湯に行く中、トド松は「僕は家でカラ松兄さんを風呂に入れる」と言って残った。

自分のことは心配しなくて良いと言うカラ松に、滅多に使わない恋人特権を行使したんだと言えば嬉しそうな顔をされてしまう。

湯船にお湯を貯めながら、そういえば自分達は恋人同士だったんだと、悲しいかな忘れかけていたことを沁々思い出して苦笑がもれた。

家の中でも外でもいつ他の兄弟が襲撃してくるか解らず、なかなか良い雰囲気を作れない、対女の子用の人心掌握術は使いたくないし、女の子がするような男心を擽るテクニックだって男の自分がしても効果はない。

キスどころか手を繋ぐことすらまだな状況に、このままロクに良いところも見せられず自然消滅してしまうのではないかと不安ばかりが募る。

自分にもおそ松のような男気やチョロ松のような色気や一松のような危なげや十四松のような可愛げがあったら……と思ったところで湯が貯まった。


トド松はまず自分がシャワーを浴びた後、タオルを体に巻いてカラ松を脱衣場に呼んだ。

彼の服を脱がしてやり、中には入らない方がいいだろうと湯船の縁にカラ松を座らせお湯に足だけ浸かった状態で髪の毛を洗ってやった。


「痛かったら言ってね」


と、トド松は言って手に石鹸を取って泡立てる、タオルで洗うと痛いかもしれないと自分の掌を使って撫でるように優しく洗ってやっていると時々カラ松はビクッっと肩を震わせた。


「ごめん、痛かった?」

「いや……」


この兄のことだから弟に心配かけまいと痩せ我慢しているかもしれない、トド松は急いでカラ松を湯船から出して全身を洗ってやり、脱衣場で着替えさせる。


「僕ちょっと温まってから行くから髪の毛乾かして布団で待ってて、もう敷いてあるから」

「あ、ああ」


トド松は泡の混じった湯船で体を温め、風呂を軽く掃除した後、髪を軽くタオルで拭き、少し駆け足でカラ松の所へ向かった。


言われた通り布団の中で待っていたカラ松が、トド松の持ってきた救急箱を見て盛大に脱力していたが、そんなに手当てが厭だったのだろうか、切り傷じゃないから染みたりしないのに。


(……なんて回想はどうでもいいんだよ、問題は怪我治ってないのにカラ松兄さんを締めた一松兄さん)


深夜に目を醒ましたトド松は隣に寝ているカラ松の背中を優しく撫でながら、カラ松の向こうに寝ている一松の事を考えた。

隣で眠れるくらいだから心を許しているんだろうし、喧嘩のない時間は普通に仲良くしていると思う、なんで一松はカラ松に暴力を奮うのだろう、さっき考えたようにカラ松を自分の世界から帰って来させるには刺激を与えるのが手っ取り早いからだろうか……?

たしかにカラ松はトド松よりも一松の言う事に反応する、でも兄のおそ松ともよく会話しているし、チョロ松に世話をやかれているし、十四松と一緒に歌ったりもしている、チビ太とも仲良くしているのを見た。

考えていく内になんだか自分が一番カラ松とコミュニケーションが取れていないというか、自分だけが一方的にカラ松にツッコミを入れている気がしてくる、家族どころか友達のチビ太にも劣るなんて……恋人なのに。


(……なんて感傷はどうでもいいんだよ、問題は一松兄さんの暴力!!)


もしかしたら一松はストレスがたまっているのかもしれない、クズだのニートだの言われている六つ子の中でネガティブ思考な彼なら人より余計ストレスを負っているのかもしれない、そのストレスを発散する為にカラ松に当たっているのかもしれない。


(わかる!カラ松兄さん八つ当たりしやすいもんね!)


この時トド松は一松へ不思議なシンパシーを感じていた。

カラ松には「まじドンマイ」という言葉を贈りたい。


(でもストレスが原因だとしたら止めさせるのは難しいな、そんな簡単にストレスが取り除けるようなら誰もストレスなんか貯まらないだろうし)

どうしたら良いのだろう。

途方にくれたトド松は先程感じた淋しさもあってカラ松の背中に寄り添いながら朝まで悩み続けていた。

カラ松には「まじドンマイ」という言葉を贈りたい。




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「一松兄さん」


翌日、一番遅くまで寝ていた一松が目を醒ますと目の前で末の弟トド松が正座をして自分の方を真剣に見ていた。


「ん?なにトド松」


一松が起き上がって目を擦りながらトド松の方を向くと、トド松は口を開き、一気に喋りだした。


「あのね一松兄さん、兄さんがねカラ松兄さんを殴ったり蹴ったり絞めたりするのはね、僕ちゃんと意味ある行為だと思ってるよ、すぐ自分の世界に入り込むカラ松兄さんを連れ戻すには一松兄さんの鉄拳が必要だと思うし、カラ松兄さんも本気で怒ることはないと思うんだ」


とりあえず最初にこれは一松の行動を咎める為に言ってるんじゃないですよーということを説明するトド松、フォローもなしに下手なことを言っては一松をネガティブ思考に落とし込みかねない、自虐タイムが始まれば面倒な上に此方まで気が滅入ってしまう。

だいたいこれはトド松の我儘なのだ。


一方、一松は「なに言ってんだコイツ」と思いながらトド松を見ていた。

自分がカラ松を殴るのに特別な意味はない、ムカつくから殴るし殴った後の本人や周りの反応が面白いからしているだけで、別にやめろと言われたらやめるけれど誰も言わないからやめないだけの話だ。

なのにこのドライモンスターはドライモンスターにあるまじき気の使い方をして一生懸命自分になにか伝えようとしている。


(……カラ松兄さん絡むとマジでポンコツだよなコイツ)

「多分ねカラ松兄さんだって一松兄さんから殴られるとちょっと嬉しいんだと思うんだけど」

「いや、それはないから」


Mキャラは自分の専売特許だ。


(やっぱゴミの弟はゴミなんだな……)


一松は自分の末の弟を本気で馬鹿だなあという目で見た。

六つ子それぞれ兄弟へ対するコンプレックスは少なからずあるがカラ松関連でトド松が持つコンプレックスはただの被害妄想のような気がする。


「でもね、もし一松兄さんがストレス発散で殴ってるんだとしたらそれをカラ松兄さんだけでまかなおうってのは無理な話かもしれない」

「は……?」

「わかるよ?世知辛い世の中だもん一松兄さんみたいな繊細で優しい人はストレス溜め込みやすいもんね」


うんうんと頷いたトド松は一松の方をじっと見つめた。

そして数回スーハーと息を吸ったり吐いたりした後、意を決したように提案したのだ。


「一松兄さんストレス溜まってるんなら僕で発散していいよ……?あの……だからあんまカラ松兄さんばっかり殴るのは……」


ここで冒頭に戻るのだが、トド松はここまで言っておいて「やめてほしい」の一言が言えない。

辛辣な言葉ならもっとずけずけと言えるのになと自分で自分に苦笑した。


(何コイツ……)


トド松は縋るような瞳を見て一松はこの弟が盛大な勘違いをしていることに気付く。

語弊はあるがトド松だって兄弟からの暴力には慣れている、昔は弱いくせに兄達の喧嘩に付いて行き、どんくさい故に見捨てられたり囮にされ一人でボコボコにされることだって多かった。

だからきっと肉体的にも精神的にもタフに違いないという自信がトド松にはある、だからカラ松がひとりで請け負っている暴力を自分にも回してくれたらいいのだ、そう思っているんだろう。

ただ「カラ松兄さんばっか殴らないで僕のことを殴って」というのはなかなか酷い言い草なのでトド松も躊躇しているのかもしれない。


(面白れーー!!)


一松はその心の声を今にでも声に出して叫びたかったが寸前の所で耐えた。

俯いて震える一松を見てトド松は「やっぱりストレスが溜まってたのか……ツラかったね兄さん、でもカラ松兄さんに当たんないでよ」とまた勘違いしたことを思う。

一松はやっとのことで顔を上げ、トド松の顔を見るとニヤリと笑った。


「そっか、お前俺に構ってほしかったんだ」

「へ?」


なんでそうなる?

という表情をしたトド松に一松は内心で噴出した。

そういう表情をしたかったのは先程までの一松の方だ。


「朝食べたら出掛けるよ」

「うん?」

「誰かに見られたら厄介でしょ?」

「あ、そっか……あ、顔は殴らないでね?服で隠れるとこにして」

「うん」


ていうか兄ならともかく弟を意味もなく理不尽に殴らないよ、と理不尽な事を思いながら一松は頷いた。




朝食後。


「トド松、どっか出掛けるのか?」


一松と連れ立って玄関で靴を履いていると、後ろからカラ松に話し掛けられた。


「うん、一松兄さんとちょっと……」

「……俺も一緒に行っていいか?」

「へ?カラ松兄さん背中もう大丈夫なの?」

「ああ、お蔭さまでな」

「そっかーーどうする?一松兄さん」


だったらカラ松も一緒がいいとトド松は思った。

今はイタイ格好もしていないし、一松に殴られるのはいつでも出来る、三人で出掛けるのも大歓迎だ。

なんせカラ松と恋人同士になってからまだ一緒に外出したことがないので最初は第三者がいた方が緊張しないのではないかと期待できる。

そう期待も込めて一松の方を振り向くと、彼は頭を横に振った。


「ダメ、ふたりで行くの、ほら急ぐよ」


と、言ってトド松の手を掴むと強引に玄関から引っ張りだした。


「えー?ちょっと待って、こける!あ、カラ松兄さんやっぱりダメみたいっ行ってきまーす」


ああ、残念。

一松はストレスが溜まっていて今日トド松を殴りたいみたいだ。

まあカラ松への暴力が少しでも減ればいいか、と思いながらトド松は一松に手を引かれ歩いた。


(見た!カラ松兄さんの!あの顔!)


自宅から一つ目の角を曲がったところでトド松の手を離した一松は心の中で大爆笑していた。

トド松の手を握った瞬間に見たカラ松の顔は本当に見ものだった。

あの顔を思い出せば暫く何があっても大丈夫な気がする、と顔には出さないが内心テンションが最高な一松。

Mってなんだろう……マッドの方のMなんだろうか。


「ねえ一松兄さんどこ行くの?」


そこら辺の路地裏や橋の下でこっそり殴られると思っていたが、一松の足は街の方へ進んでいく。

正直パーカーにジャージのズボンを履いた男と街中を歩きたくはない、まあそのうちスパンコールの男とデートする予定なので気持ち的な予行練習だと思えばいいのか――


「え?ここ?」

「一回入ってみたかったんだよね」


一松が立ち止まったのは大きなペットショップの前だった。


「行くよ」

「うん……」


戸惑いつつ後を追って入店すると、中には色んな種類の犬や猫、ペットグッズが並んでいた。


「見て兄さん!これ大型犬のベッドだって!人間も寝れそうじゃない!?」

「うん、ふかふかしれるね」

「十四松兄さんならここで寝ちゃうんじゃないかなあ?」

「十四松ならこれも似合いそう」

「兄さんそれ首輪首輪」

「見て丁度これ六色あるよ」

「イヤだからね!兄弟でお揃いの首輪とかイヤだからね!」

「仕方ない……」

「なに黄色いのとピンクのだけカゴに入れしてんの、やめて十四松兄さんを穢さないで」

「青の方がよかった?」

「残念ながら僕にはそんな趣味ありません!」


なんていう会話をしていたせいで他の客から白い眼でみられているが、二人は特に気にしない。


「あ、このミニブタ六つ子なんだって、僕らと一緒だね」

「ハッ……この豚野郎ってか」

「いやいやいや」

「いいな豚野郎、メモっとこ」

「兄さん豚なら弟の十四松兄さんも豚ってことになっちゃうよ?いいの?」

「……アイツは猪八戒になれる奴だから」

「豚界の出世頭だね」


またまた白い眼で見られているが、こんなことを気にする人なら銭湯でちんこ当てクイズなんてやっていない。


「ああ!この猫のぬいぐるみかわいい!」

「そうか?なんか目付き悪いけど」

「なんかカラ松兄さんみたいじゃない?奇跡のように青いパーカー着てるし……よし、買おう」

「片手に乗せられるサイズなのに値段が千円以上も……」

「いいじゃん小っちゃい方が隠れて持っとけるし、一松兄さんこの子のこと皆には内緒だよ」

「はいはい」


そんなこんなで会計を済ませ店を出た。

最後は犬を見ながら十四松の話ばっかりしていた気がする、というか最初から十四松のことばかり話していた気がする。


「……ねえ普通に楽しんじゃったけど、当初の目的は……」

「薬局寄って帰るよ、昨日カラ松兄さんに軟膏使っちゃってもうないでしょ」

「ええ!?いや、確かにないけど」


戸惑うトド松を余所に一松はスタスタと歩き始めた。


「別に、ストレス解消ならなんでもいいじゃん」

「へ?」

「こうやって俺の行きたいところに付き合ってるだけで結構ストレス解消されんだけど、カラ松兄さん殴るよりずっと」


というかそもそもカラ松への暴力はストレス原因ではないのだけど、そこは黙っておく。

ついでに言えば行きたいところに付き合ってくれる要員なら既に十四松がいるので別にトド松はいてもいなくても変わりないけれど、それも黙っておく。


「またストレス溜まったら俺に付き合ってくれるといいよ」

「そしたらカラ松兄さんを殴る回数減るの?」

「うん多分……っていうかやっぱり俺が兄さんに暴力振るうのイヤだったんだ」

「……それはそうだけど、別に一松兄さんのすることを否定してるわけじゃないからね」


まだ気を使っている弟に一松は自然と微笑みが漏れた。

したたかで辛辣なドライモンスターだと思っていたが兄想いで可愛いところもあるじゃないか。


「わかった、今度カラ松兄さんにも優しくしてみる」


――その時のお前の反応も楽しみだしね――

と、心の中で付け加える一松、本当にMとはいったい何なのだろう……。


薬局に着いてトド松が傷薬や湿布薬を物色していると、後ろからトントンと肩を叩かれた。


「ん?なに一松兄さんって、うわっ」


振り返ったら頬に何か柔らかいものを当てられた。


「なにそれ?」

「化粧品の試供品」

「ちょ、なに持ってきてんの?っていうか何これ?」

「あの、女の人が頬に塗るやつ」

「チークか!もーー僕の洗顔で落ちるかなぁ?」


化粧品コーナーに試供品を戻すついでに鏡を覗き込むトド松。

頬がいつもより桃色に染まっているが、薄く塗ったためか化粧をしているようには見えなかった。


「さて買って帰るか」

「兄さんの所為で薬無くなったんだから兄さんが会計を」

「あーー金欠だぁストレス溜まるぅ」

「わかったよ買ってくるからちょっと待ってて」


すっかりストレスという言葉に敏感になった弟が会計に走るのを見て、一松は心底思う。


(あーーマジ面白れーー)


そして帰路に着く。

家から一つ前の角の所で一松に荷物を持つと言われ荷物を渡すと代わりにトド松の手を取られた。


「ん?」

「手冷たくなったからちょっと暖めて」

「ああ、いいよーー今日なんか肌寒いもんね」


と言って、家までの一本道を歩いていると、家の屋根から何かが転がり落ちたのが見えた。

「にーーさーーーん!!」という十四松の叫びも聞こえる。


「……あの人なにやってんの……?」


折角背中の怪我が治ったのに、とトド松が呆れていると家の門から飛び出してきたその人は自分達の方に走ってきた。

屋根から落ちてもこれだけ走れたら大丈夫だろうと安堵するトド松と一松、その人こと二人の兄であるカラ松は二人の前で立ち止まる。


「カラ松兄さん何してんの?大丈夫?」


砂だらけになった兄を呆れた顔で見て言うと、カラ松はトド松のいつもより桃色に染まった頬を見てショックを受ける。

一松は心の中で「作戦成功!」のガッツボーズを取ったが勿論無表情だった。

カラ松はトド松が一松と繋いでいる方の手を無理やり奪って、見せつけるように指を絡ませる、そして……


「大丈夫じゃない」


と言った。


「また入浴と手当てよろしくな、マイブラザー」

「な!?い、いいけど、丁度新しい薬買ってきたとこだし?もーーしょうがないな、怪我が多い兄を持つと苦労するよねぇ!?」


いきなり手を握られた(しかも恋人繋ぎ)トド松はチークの紅も解らないくらい顔を真っ赤に染め上げて焦りだした。


「もお、皆見てるじゃん恥ずかしい……」


そう言いつつギュッと手を握り返してくる恋人に気を良くしたカラ松は手を繋いだまま家の方へ引っ張って行った。

あれ絶対大した怪我してないよ、服が汚れてるだけだよ……と中てられた一松は呆れつつ、


(やっぱりウチの兄と弟めちゃくちゃ面白れーー!!)


と、内心で大爆笑していた。


松野家四男、松野一松、二十代独身無職。

彼がMなのかどうかは一先ず置いておいて、今回確実に言えるのは、彼は重度のブラコンだということだった。





END