えーぶいらんぶ
男兄弟というのは便利だ。 「一松兄さん!ちょっとAV貸して!」 なんて頼んでも不審に思われることはない、一松は「ん?トド松が観ても面白くないと思うけど」と言いながらDVDボックスを引っ張り出してきてくれた。 「観るなら誰もいない所にしてよね」 「わかってるって」 と、言いながら一松セレクションのAVを物色すると……ジャケットに妹と女王様しかいないのだが…… (あった!) 実の兄の性癖に一抹の不安を覚えつつトド松はお目当てのDVDを探し当てた。 ひょっとしてバッキバキに砕いて処分されているかもしれないと思っていたので安心した。 カラ松からのもので喜んでたのか嘆いてたのか不明だけれど泣きながら受け取ったプレゼントの中身がAVだったら泣き損した気分だったと思う。 「じゃあとりあえず三枚借りてくね」 「おーー」 『性なる夜のお悩み相談室』を比較的ソフトな感じのSMモノに挟んで退室した。 まるでエロ本を雑誌に挟んで購入する男子のようだけど、エロをエロで挟んで何になるんだ。 トド松はこっそりと倉庫に忍び込みそれをポータブルDVDプレイヤーで視聴する。 (カラ松兄さんこういうセクシーな女の人が好きなんだ……) 再生ボタンを押すとまずいきなりサンタの格好をしたAV女優が透明なテーブルに座っていた。 そうかお悩み相談室というタイトルだからそういう設定なのかとトド松が思っているとその女性は自己紹介しだした。 なんでもこの女性はカウンセラーらしい、なんでサンタの格好をしているんだとか突っ込んではいけない。 テーブルの下に見えるAV女優の太ももに生唾を飲みながらAV男優は「迸る性欲を我慢できない」とか馬鹿なことを相談し始める、流石カラ松チョイス、馬鹿DVDだ。 しかしトド松は内容の馬鹿さ加減よりもAV女優の容姿の方が気になっていた。 (僕だって美女薬を飲めば……いや、あれだと僕カワイイ系になっちゃいそうだな) イヤミが長身美女でチビ太がロリっ娘になったということは元が童顔のトド松はチビ太寄りの容姿になってしまいそうだ。 どうしてもカラ松の好みのセクシー系になれそうになれない事がトド松の頭上にドンと圧し掛かってくる。 (ま、負けるなトド松ッ!男は見た目じゃない!!) AV女優と張り合っている時点で「男は〜」と言ってもなんの意味もない気がするが、トド松はそう思って自信を取り戻した。 彼は実の兄であるカラ松の恋人だ。 しかしノンケなのか弟以上に想ってはもらえていないのかでカラ松はなかなかトド松に手を出してこない。 そんなわけでカラ松の持つAVよりもエッチな自分になって、性的な目で見てもらおうと思ったのだが…… (カラ松兄さん、この女優さんで抜いたんだ……) 観ているうちに自分は『メリークリ××ス』なんてAVを購入したことはスッカリ棚に上げ、シクシクと悲しみに襲われていた。 最初から賢者タイム……傍から見たら愚者タイムに突入しているトド松は薄暗い倉庫の中でひとり涙したのだった。 それから数日後。 「というわけなんだよ十四松兄さん」 「へーそっかぁ」 兄達が出払った部屋でトド松は唯一自分に味方してくれそうな兄十四松を捕まえ数日前の出来事を説明していた。 なにが「へーそっかぁ」なのか解らないが恐らくトド松の言いたいことを理解した十四松は「わかった、僕も協力するよ」と言って胸を張っていた。 「でも一松兄さんのAVの趣味ってさ……」 「わかる、不安だよね……兄さんまでカラ松兄さん狙ってたらどうしよう」 「……」 そっちかよ!自分達の身を案じろよ!! チョロ松が居ればそうツッコミを入れてくれただろう。 「十四松兄さんは僕と一松兄さんが恋敵になったら一松兄さんの味方だろうけど、僕負けないからね」 「……」 真剣な顔で宣言されてしまったけれど、十四松としては一松が誰かと付き合ったら寂しいのでトド松の方を応援するし、そもそも一松はカラ松を狙っていないのに何を不安になっているのだろう。 しかも「兄さんまで」ということは他にも恋敵がいると思っているようだし、恋は盲目というか岡目八目というか恋をすると人はこうなってしまうのだなと十四松はなんだかしみじみと思った。 (カラ松兄さんの方が色々と不安だと思うけどなぁ) カラ松から“性的な目で見られない”なんて悩み抱えている時点で色々と解っていない弟を見て少し心配になるし、カラ松が不憫だ。 (でもこれでトド松の不安がなくなるならいっか) 珍しく冷静に考えていた十四松だったけれど、結局は馬鹿の兄馬鹿だった。 69 69 69 69 69 69 「はい、これ十四松兄さんの台本」 おそ松がパチンコ、カラ松は釣り堀、チョロ松はハローワーク、一松は猫。 兄四人が外出中の部屋に、一台のカメラが設置され、トド松は十四松に台本と言うには薄いレポート用紙を三枚渡された。 「フリガナ振ってあるから兄さんでも読めるでしょ?」 「うん!ありがとう」 思い切り馬鹿にされているように聞こえるがトド松は真面目に言っているし十四松も真面目に受け取っている。 「じゃあ今からAV撮影を始めます」 「ラジャ!」 AV女優よりエッチなところをカラ松に見せる方法を考えた結果そうなったらしい、十四松と二人で話し合ったおかげで常識なんざどこかへ飛んで行ってしまったようだ。 ただ今のトド松の格好は、カラ松のバスローブの下にチラ見えする黒のエッチな下着、猫目のカラコンに猫耳のカチューシャと首輪にエプロン、サンタ要素として両足で長さの違う靴下と、足元に置かれた白い袋から覗く大人の玩具達。 そんな風貌の男がゴザを敷いてその上に座っている、色んなものを参考にしすぎてカオスだった、ア□マ企画でもこれはない。 ちなみにエッチな下着と大人の玩具はいかがわしいお店に十四松と二人で入店し買ったので大変目立っていた。 「じゃあ撮影スタート!」 その声に合わせ十四松はビデオカメラのスイッチを押す。 「君かわいいね、いくつなの?」 十四松が渡された台本通りの台詞を言ったがひどく棒読みだった。 今回十四松は声だけの出演予定だ。 「さ、さんじゅうろくさいです」 嘘吐け、何故年上の方にサバを読む?あと三十六歳設定ならもっとちゃんと答えろ。 「今日はどういった相談できたのかな?」 「実は僕、お兄ちゃんと付き合ってるんです」 カラ松のAVの他に十四松が一松から貰った妹モノのAVも参考にしたので「お兄ちゃん」呼びになったのだが、設定がもうブレブレである。 「うんうん、それで?」 「でも、お兄ちゃん全然僕に手を出してこなくって……」 なおも棒読みを続ける十四松に対し、トド松はなかなかの演技派だった。 というか本当にそのことで悩んでいるので演技もしやすいのだろう。 「どうしたら僕に、ヨクジョウしてくれるかなって」 「ふむふむ、わかった私に任せなさい!!」 というか十四松の演じるキャラもなんだかよく解らない。 「君がもっとエッチな体になればいいんだよ」 「え、えっちな体ですか?」 「そう、私の言う通りにしなさい」 「はい」 そう言って素直に頷くトド松。 とても三十六歳でバスローブの下にエッチな下着をチラ見せしているキャラとは思えない。 「まずは、ゆっくり洋服を脱いでみて」 と、言われた通りトド松は、最初に猫耳を取って放り投げ、次にエプロンを外しにかかった。 二つとも洋服じゃない。 「次は靴下も脱いで」 「はい……」 トド松はパンツがカメラに映らないように気を付けながら、靴下の先をするすると引っ張る。 この日の為に手入れしたツルツルの足がお目見えして十四松が「わーートド松の足きれいだね」と素で言ってしまった。 それに思わずトド松も「だってカラ松兄さんのAVに映ってた女優さん脚が綺麗だったから……」と素で返す。 「よし、そこまで脱いだら充分かな」 「うん!だよね?これ以上はちょっとねッ!」 棒読み台詞に戻った十四松にまだ素の状態のトド松が返した。 流石に十四松の前でエッチな下着姿を晒すのは勘弁してほしいのだろう、それなら最初からこんなことしなければいいのに。 「えっと……このあと、自己開拓するって書いてあるけど……どうするの?トド松」 「え?いや、適当に玩具突っ込めば気持ちよくなるかなって……」 調べてねえのかよ!!あと下着姿晒すのはイヤで開拓シーン見せるのはいいのかよ!! この場にチョロ松がいれば突っ込んでくれたであろう、ツッコミ不在って怖い。 「これ射れるの?大丈夫?」 「うん、これ入んなかったらカラ松兄さんのなんか到底無理だし……頑張る」 「そっか」 大人の玩具の中ではスタンダードな、ディルドを見詰め十四松が心配そうに聞くとトド松はそう答えた。 あまり兄弟間で話すような内容でもないと思うが十四松は真剣に聞いてくれている。 「んーーでもまず濡れなきゃいけないんじゃない?」 「そっか……でも男が濡れるにはどうすればいいんだろ?」 し・ら・べ・と・け!!なんで事前に調べとかないんだよ!!ていうかお前はもっと耳年増じゃなかったか!! と、チョロ松が(略) 「AVだとどうだった?」 「んーでも僕自慰モノって見た事ないんだよね……女の子が自分の手でトロトロになるのがいいじゃん」 AVだから自分の手じゃないだろう、という指摘はどうかしてやらないで欲しい。 「自分で愛撫してみたら?」 「えー?それで濡れるかな?」 「カラ松兄さんの手だと思ってやってみたら?」 この十四松、初心な天使に見せかけて的確なアドバイスをくれる。 男の身体は自分からは濡れないという知識がないのが致命的だけれども…… 「えっと……カラ松兄さんてどんな手だったけ?なんか緊張して思い出せない」 「んー?そうだね、僕らよりちょっと大きくて堅くて、暖かい手だよ」 「……なんで十四松兄さんがカラ松兄さんの手を知ってるの?」 「だってカラ松兄さん毎日“十四松はいつも元気だなー”って撫でてくれるし、トド松もよく撫でてくれるけどアレとっても嬉しいよ」 「いいな、十四松兄さん……僕もカラ松兄さんに撫でられたい……」 カラ松としてはトド松へあまり沢山スキンシップを取ると「痛い」と言われるから自制しているのだが……この言われよう。 「……トッティ」 十四松までなんだか哀しくなってきた。 「わかった!僕が愛撫してあげる!!」 「へ?」 そう言って十四松がカメラの画面へインしてきた。 何故か手には猫じゃらしを持って…… 「ほら〜トッティほらほら〜」 と、猫じゃらしでトド松の頬をくすぐり始めた。 愛撫というか本当の猫にするようにじゃらしている。 「ちょ!?くすぐったいよ、お兄ちゃん」 「んー……ニャンコ達は皆これで喜ぶんだけどなぁ」 設定を思い出したのか急に「お兄ちゃん」呼びに戻るトド松。 猫じゃらしにあまり効果がないようで首を傾げてウーンと唸る十四松。 ここでトド松はあることに気付いた。 「って、ちょ?なんで十四松兄さんが猫耳とエプロンつけてんの?ウケる!」 先程自分が放り投げた猫耳とエプロンを十四松がつけていた。 バスローブではなく黄色のパーカーなのでそこまで変じゃない……いや成人男性が猫耳とエプロンを付けていたら変だけれど先程のトド松よりは違和感がない。 というよりも不思議と似合っている。 「そこにあったからなんとなく?」 「ブハッ!アハハハハ!!普通なんとなくでつけるーー?もう十四松ニャンコったら」 十四松ニャンコってなんだ? 「あ、猫じゃらしより良いものがあるよ!取ってくるからちょっと待ってて」 と言ってトド松がカメラの画面から出ていって、一分足らずで戻ってきた。 「じゃーん!カラ松お兄ちゃんが魚の餌用に量産したラブレターくすねてきた……これならちょっと感じるかも」 魚の餌用ラブレターってなんだ? さっきから不思議なワードが沢山出てきて大変だ。 「じゃあ、やってみるね」 「うん……って、痛い痛い!先っちょでトントンするのやめて」 「あ、ごめん」 トド松が痛がるのでラブレターで頬をぺらぺらと撫でることにした十四松。 もの凄く馬鹿らしい場面に見えるけれど本人達は至って真面目に取り組んでいるのだ。 「トド松きもちくなった?」 「えーーと、微妙」 カラ松のラブレターなら感じるかと思ったが、元々そんな性癖がないのか魚宛てにしたためたものだからか(多分前者)全然気持ち良くはならない。 すこし落ち込み気味になっていると、ピリっと頬に痛みが走った。 「ああ!トド松血が出た!」 「ああ紙で切っちゃったか、いいよこれくらいほっとけば治る」 「駄目!手当するからまってて!!」 ポコスコ怒った十四松がまたカメラ画面から外れて消毒液と脱脂綿、絆創膏を持って戻ってきた。 「じっとしてなさい」 「はい、ごめんなさい……」 消毒液を脱脂綿でとってトド松の頬に塗り、そこへ絆創膏を貼る十四松。 正座で向き合い手当をしている内に、二人とも正気に戻っていった。 「ねぇトド松……もうやめよう?」 「うん……そうだね」 十四松としては弟が最初に思っていたのと全然違う方向で傷物になっていく姿は見るに耐えかねる、カラ松が見ても興奮しないどころか萎える一方ではなかろうか…… トド松の方もだんだん自分の馬鹿さ加減に気付いて行き、羞恥心で埋まってしまいそうだ。 「それにしてもAV撮影って本当に“お母さんごめんなさい”って気分になるんだね」 「この内容と演技でそんなこと言ったらAV女優とAV男優に失礼だと思う」 「ごめんなさい」 可愛い兄からマジトーンで突っ込まれシュンと項垂れるトド松だったが、AV出演者に対しても敬意を忘れない十四松に「僕の兄さんマジ天使」だと心の中でキュンとする……彼は馬鹿で、弟馬鹿でもあった。 「なあ?結局これなんだったわけ?」 と、その時、部屋の入口から声が聞こえ二人は驚いてソチラへ目線をやる。 「おそ松兄さん!?」 そこには今の時間は外出している筈の長男が立っていた。 「なんで?……パチンコ行ってたんじゃ?」 「いや、財布忘れて取りに来たんだけど……お前らがなんか可笑しなことやってるから覗きみてた」 そして「なに?これ撮影してんの?」とカメラに写り込んでくる長兄おそ松。 トド松と十四松の背中に冷や汗がダーと流れ始める。 「あの……で、できればこのことは忘れて頂けると……」 「いやインパクトでかすぎて無理だって、ていうかお前その下着どこで買ったの?お兄ちゃんによく見せてみ?」 おそ松はトド松ににじり寄りバスローブの衿に手を掛けようとする。 「おおい!兄さんヤメテよ!!」 「兄さんじゃなくてお兄ちゃんだろ?」 「やめたげてお兄ちゃんーー!」 「えー?どうしよっかな?」 「ちょ!兄さん!?」 トド松が半ば本気で怯えているので十四松がおそ松を押しのけようとした……その時…… 「なにやってんの?」 絶対零度の声が部屋に落とされた。 「……」 おそ松がギギギとロボットのようにその声がした方を見ると、開けっ放しの部屋の扉の向こうに三男チョロ松が立っていた。 「あ、えっと……これは」 ハローワークへ行く途中、履歴書を忘れたことに気付き戻ってきたチョロ松。 今、彼の目に映っている光景。 猫耳エプロン姿の五男と、バスローブを羽織ったエッチな下着姿の末弟に、一番上の兄が圧し掛かっている姿。 末弟のバスローブを脱がそうとしている兄を五男と末弟は必死に抵抗している。 ――それを確認したチョロ松の中で何かが切れた。 「なぁにやってんだこのクソ長男ーーーー!!」 「誤解だチョロ松ーーーー!!」 69 69 69 69 69 69 暫く後、部屋には正座で座らせられた長男五男六男をソファーに座りながら見下ろす三男がいた。 四人とも今はおそろいのパーカーを着ているので十四松とトド松が着替えさせるくらいの優しさはあったらしい。 「ふーん、よく意味はわかんないけど十四松とトド松の事情は一応わかったよ、でも、おそ松兄さんのしたことは許さないから」 「そんなぁ」 俺は無実だ!という証拠としてトド松達が撮っていたビデオを見せられたチョロ松は、はあああああと呆れかえったような溜息を吐く。 「馬鹿でしょ?みんな」 「返す言葉もございません……」 「十四松はともかく、トド松がこんな奇行に走るとは思わなかったよ」 やはり松野家の血筋なのだろうかとチョロ松は思い、自分にもその血が流れていると思い返してウンザリとした。 「とりあえず、このビデオ没収しとくから」 「え?待って!兄さんお願い返して!!」 こんなもの早々に消し去ってしまいたいとトド松は叫ぶ。 「駄目、今後十四松とトド松が人に迷惑掛けるようなことしたらこれ一松とカラ松に見せるからね」 「ええ!?」 「それだけはご勘弁を〜」 「イヤだったら大人しくしてればいいんだよ」 横暴なことを言われている気がするが怒ったチョロ松はおそ松でも心を抉られるような口撃してくるので、誰も言い返せないでいた。 「アンタも、なんかあったらこれカラ松に見せるから」 おそ松に対してはいっそう厳しめの口調で言う。 「えー?でも俺関係なくない?」 「最後の方を見て、カラ松たちがガチギレしないとでも思ってるの?」 「……」 そう言われると何だか恐ろしかった。 おそ松にはカラ松や一松がタッグを組んできても勝つ自信はあるけれど、確実に下二人の弟を泣かせることになる。 そうなるとチョロ松自身が一番キツイと思うのだけれど、それでも彼はすると言った事は絶対にする、昔からおそ松にだけは嘘で脅しをかけないし…… 「カラ松兄さんがガチギレ?」 「……なんか一松兄さんをおこらせるようなことしちゃった……?」 という、兄の独占欲やら庇護欲やらをよく理解していない弟たちの呑気な声を聞きながら、おそ松は溜息交じりに笑った。 「悪かった、お前の言う通りにするよ」 素直に謝るおそ松にチョロ松も笑顔で返す。 「わかってくれたならよかった……」 が、 「って、そう簡単に許すと思った?爆乳サンタさん?」 大事な弟達が襲われている(誤解)場面を目の当たりにした彼の怒りは思ったより根が深かった。 「……なんだとこの欲求不満のサンタ夫人」 カチンときたおそ松も、彼チョイスのAVネタで応戦。 「反省の色が見えないんだけど爆乳サンタ」 「うっせえ俺は爆乳じゃなくて巨根サンタだ」 「はあ?おそ松なんて名前の癖になに言ってんの?クソニート」 「お前も変わらねえだろ、クソニート夫人」 そこから本格的な口喧嘩へ進展していく。 (え?なにこれ?喧嘩?) (夫婦喧嘩?) 否、おそ松とチョロ松は別に夫婦でもなければ好き合っているわけでもないが、喋ると夫婦漫才なだけだ。 (とにかく逃げよう) (うん) 事態が読めない十四松とトド松だったが一触即発の空気にこそこそと逃げ出す準備をし始める。 弟二人が部屋の外に出て扉を閉めた瞬間、中から爆音のようなチョロ松の怒鳴り声が聞こえてきた。 「ひぃぃ!もうなんなの!?」 「僕!野球行ってくる!!」 「僕も行く!!」 と、言って家の外に逃げ出す今回の元凶。 こうしてカラ松や一松と喧嘩する前に、チョロ松と喧嘩する羽目になってしまったおそ松なのでした―― めでたくない めでたくない END この後いくら末松がイイ子にしていてもおそ松兄さんがチョロ松を怒らせて色男松にこのビデオ観られてしまいます ドンマイ末松!! |