ロリコンを殴る、そんな深い夜。連続幼女誘拐犯を今ではすっかり定着したバーナビーの『マヨビーム』によって捕まえた虎徹は犯人を警察に引き渡すとすぐさまヒーローインタビューへと向かった。 別に自分がインタビューされたいわけではないのに急いでしまうのには偏に相棒の珍しい姿を見たいからだろう。 「はい、どうですか?うさちゃんですよ」 虎徹の相棒ことバーナビーはカメラそっちのけで誘拐されていた女の子の前にしゃがみこみ、どこからか調達した黒い皿にマヨネーズでウサギ(誕生日にヒーロー仲間によって贈られたもの)を描いていた。 流石元KOH、道路を汚したり食べ物を粗末にはしない。アニエスによって『マヨ芸』と称されたそれは被害者が子供の時限定で見られるバーナビーの必殺技だ。先程まで恐怖で泣いていた女の子がキャッキャと喜んでいる様を虎徹は柔らかく見つめた。 しかしその女の子がバーナビーの指から出たマヨネーズを口に入れて「おいしー」と言った瞬間、虎徹とバーナビーの表情が固まった。 バーナビーは子どもに得体の知れない物を食させてしまった。虎徹はバニーのマヨネーズを他の人間に食べられた。という全く違う理由であるが、二人は同時に「うわぁあああああああ!!」「吐けぇええええええ!!」という心境に陥ったのだ。そこを咄嗟の自制心で我慢する。 (あんな小さい女の子にまで嫉妬するって俺……) 虎徹が落ち込んでいると斎藤に肩をポンと叩かれた。 「斎藤さん……」 「……」 うんうん、わかっているぞ、と言うように頷いた後、 「今日はスーツの調整するから早くバーナビーを回収してきてくれ」 「はーい」 女の子からバーナビーを奪還する口実をくれた斎藤に手を振って歩き出す。笑顔が戻ったのは良いがあの子も早く家族の所に帰してやりたい。虎徹には誘拐された子供の気持ちより親の気持ちの方が理解できた。 いつもフラフラしている虎徹をバーナビーが回収する係なのに今日は逆だな、なんて思う。彼のファンサービスに「よくやるなぁ」と呆れることはあってもそのキラキラした笑顔を見ていると邪魔したいとは思ったことがない。虎徹だって自分を好きでいてくれるファンと話すのは楽しいし待たせるのはお互い様のこと。 ただ自分以外にも屈託のない笑顔を見せる様になったバーナビーに虎徹が最近少し面白くないと感じるのも確かだった。 「ごめんねお嬢ちゃん、バーナビーはまだお仕事残ってるからそろそろ帰らなきゃいけないんだ」 「えー?」 「君もそろそろ帰らなきゃ、お父さんやお母さんも心配してるよ」 「……うん!」 お父さんお母さんと聞いて一気に帰省願望が蘇ったのかソワソワしだした女の子を抱き上げて虎徹は彼女を送り届ける為に残っていたパトカーまで歩いた。 ヒーローに抱っこされて女の子は嬉しそうにまたキャッキャと笑う。今夜の記憶が楽しいものになって良かったとバーナビーは眉尻を下げる。 「ほらこのお姉ちゃんが君の家まで連れてってくれるからなぁ」 しかし虎徹が女の子を女性警官に受け渡している場面を見て少し気落ちしてしまった。虎徹と女性と女の子が並んでいるだけでこうなるとは、まだまだ修行が足りないなと溜息を吐く。 「バーナビー早くトランスポーターに入れ」 いつの間に隣にいたのか斎藤から声を掛けられビクリと身体が震えた。 「あ……はい……」 斎藤に虎徹を見る自分の表情を見られただろうか? 「まったく、ミイラ取りがミイラになったな」 「本当あの人は警察の方にまで迷惑かけて……」 女の子に構っていたバーナビーを連れてくるように頼んだのに今度は虎徹が女の子に構っている、女性警官の隣で。おおかた楓の小さい頃を思い出して懐かしんでいるんだろうがバーナビーには痛い光景だ。 背筋を伸ばしたままトボトボ歩くという器用な真似をするバーナビーの背を見送った後、斎藤もトランスポーターへと向かった。 しかし警察も随分のんびりしている。まだ暴れる犯人を連行できていないんだから――……斎藤が振り返ると犯人がギャンギャンと騒いでいた。 バディ二人は聞く耳を持っていないが「クソ不味いマヨネーズなんてぶっかけやがって!!」なんて文句を言っている。 「ごめんごめん、つい話しこんじゃって……斎藤さんも」 「遅いですよ、おじさん」 「そうだぞタイガー」 苦笑いを浮かべあうバディとメカニックの会話を聞きながらベンはハンドルを握る。平和ではないけれど、無事今夜を終えられた事に感謝しつつ皆そろってアポロンメディアに帰った。 次の日の朝、ヒーロー事業部オフィス 『バーナビーのマヨネーズを商品化してみないか』というロイズの提案に虎徹とバーナビーは息の合ったスピードで首を左右に振った。 「絶ッ対に」 「ダメです!」 だからどうして君まで反対するんだい?――とロイズは聞きたいが敢えて聞かないでおこう、そうしたら虎徹は絶対によく解らない持論を叩き出す。 「なんでダメなんだい?バーナビーくん」 「僕のマヨネーズなんて衛生的じゃありませんし、能力を人助け以外に使うなんてイヤですからね」 いやいやハンサムエスケープ、ハンサムエスケープは!?君、今でも結構やらかして周り困らせてるよね!?――とロイズは言いたいが敢えて言わなかった。そんなこと言ったらまたエスケープされる。 「別に君のマヨネーズをそのまま売り出すわけじゃなくて、君のマヨネーズの味を再現したものだから」 「それでもイヤですよ……なんか気持ち悪いですし」 「まあ一部のファンからそういう要望が出てるだけで需要はなさそうだからいいけど」 「需要ないって、コイツのマヨネーズはマジ絶品なんすよ?」 「アナタどっちの味方なんですか虎徹さん!」 「そんなこと言われてもバーナビー君のマヨネーズの味知ってるの君だけだしねえ」 ビジネストークで「僕のマヨネーズ」や「君のマヨネーズ」や「コイツのマヨネーズ」という単語が飛び交うオフィスも珍しい。 「だいたい僕はこの能力隠しておきたかったのに!アナタの所為で世間にバレたんですからね!!」 「それは悪かったってバニー」 バーナビーのこの能力が世間にバレてしまったのはどこでもバーナビーのマヨネーズを欲しがる虎徹にコッソリ提供している所を週刊誌にすっぱ抜かれたのがキッカケだ。 高性能なカメラで虎徹のサラダに指からビーっとマヨネーズをかけている所が鮮明に撮られていて誤魔化しようがなかった。虎徹から「サラダじゃなくて口から直接摂ってたらバレなかったのにな」と冗談を言われ回し蹴りをお見舞いしてからもう暫く経っている。 こんなことでファンに嘘吐くのも馬鹿らしいので堂々と認めてしまえば、その反響はそれなりにあった。今ではワイルドなタイガーとマイルドなバニーで良コンビと言われている。 「とにかく!僕はイヤです!そんな話が来ても断ってください!!」 「はいはい、解かったから落ち着いてバーナビー君」 これが落ち着いていられるか!と思った。実物じゃないとしても自分のマヨネーズが世に出回るのは恥ずかしいし、虎徹以外の人間から食べられるのも気持ち悪い。 それにそんなものが出来てしまったら虎徹にとってこれは特別なものじゃなくなる。代用品があるからと二度とバーナビーのマヨネーズを欲しがってくれないかもしれない。 ――そうだ。バーナビーは虎徹に自分のマヨネーズを欲しいと言われるのが嬉しいのだ。 ずっと恥ずかしくて隠していた能力を受け入れられてたのだから当然だ。しかも虎徹は“一番好き”だと言ってくれた。 それが己ではなく己から出るマヨネーズの事だとしてもバーナビーにとっては幸せなことだった。 もし同じ味のものが商品化されれば虎徹の中でもう自分のマヨは用無しになってしまうだろう。バーナビーはそれだけは耐え切れなかった。 「……まぁ再現しただけのもんでも“バニーの”マヨネーズが他の奴に食われるのは俺もイヤだな」 この台詞は考え事をしていたバーナビーの耳には入らなかったがロイズの耳にはしっかりと届いた。 「……ん?なにか言いました?」 「いや、別に」 「……はぁ、まったく君達は……」 ロイズは、これ以上スキャンダルは勘弁してくれ。と思いつつ個人的には反対したくないと感じた。 そんな訳で、バーナビーのマヨネーズ商品化の話は無かったことにされ翌週には二人の頭からスッカリ抜け落ちていた。 ――斎藤が思い出させるまでは…… 「そういえばバーナビーのマヨネーズを商品化しようって話があったんだって?」 「斎藤さん、折角その話は忘れてたのに……蒸し返さないで頂けます?」 この日は珍しくバディと斎藤・ベンの半休が重なり昼食を皆で食べに行こうと計画していた。 まだ仕事の残っている虎徹を置いて先に合流したバーナビーだったが早々そんな話題を出され辟易とした表情で斎藤を見る。 「そんな話あったのか!」 面白そうに笑うベンに苦笑して「もうお断りしましたから」この話はやめましょうと言うバーナビー。 「そうだな、バーナビーのマヨネーズの味を再現するのは難しい、というか再現なんて不可能だからな」 「……はい?」 何やら大いに納得している斎藤に眉を顰めた。この人はバーナビーのマヨネーズについて本人も知らない様な情報を持っているんだろうか。 「こないだの誘拐犯と被害者の女の子を憶えているか?」 「え?ああ先週の、勿論憶えていますが……それがなにか?」 「あの二人がバーナビーのマヨネーズを口にしているのに全く別の反応を示したのが気になってな、味覚に個人差があるのは当然なんだが」 「……まさか勝手に調べたんですか?」 「知り合いのネクスト研究者に頼んでな」 あの時の黒い皿、どこかいったと思ったら斎藤が持って行ったのか……バーナビーはハァと大きな溜息を吐く。この人に今更怒っても無駄だろう。 「それで?どういう結果だったんです?」 「ああそれが面白いことにバーナビーのマヨネーズにはコレステロールや糖分塩分などが殆ど含まれていない、いくら食べても健康にはなんの問題ないものだぞ」 喜べ!と言われても、既にそれは知っている。前に成分を調べてもらった時に聞いた。 「一番面白いのは“食べた相手によって味が変化する”ところだな」 「……それは初耳です」 「新密度。というか“どれくらい好きか”によって味が変わってくるらしい、バーナビー本人が感じる味がニュートラルとして、好き度が高い程美味しく感じるそうだ」 「だから僕が嫌いな犯罪者は不味く感じて、好……好感を持っている虎徹さんやあの女の子は美味しく感じたんですね」 そう何でもない様に言って。虎徹が美味しいと褒めてくれるのも当たり前のことだったんだな、とバーナビーは思った。 「違うぞバーナビー」 「え?」 「どれくらい好きかによって味が変わるというのは本当だが、それはバーナビーに対する好感度の話だ」 「えっと……つまり……」 バーナビーのマヨネーズは、食べた相手が“バーナビーを好き”なら好きなだけ美味しいと感じる――ということ? 『バニーちゃんのマヨネーズ超うめえな!』 『こんな美味しいマヨに出逢ったのは生まれて初めてだ!』 『探してみたけど、やっぱりこの味に勝てるもんはなかったよ』 想い出すのは彼から貰った沢山の褒め言葉 『俺はバニーのマヨネーズが世界一好きだ!』 瞬間、バーナビーの顔がぼっと沸騰したように赤くなった。と、同時に身体がボゥっと青く光る。 「バーナビー!?」 自分を呼ぶベンの大声が聞こえたが無視して窓から飛び出した。所謂ハンサムエスケープ、つい先週人助け以外に使いたくないと言っていた癖に、でもバーナビーにはそんなことを気にする余裕は無かった。 (む、胸が……) 走りながら胸をぐっと押さえる。先程からドクンドクンと波打って仕方ない。バーナビーは耐え切れず会社からそう離れていない路地裏で倒れ込んだ。 まだ能力発動中だというのに、そんな距離を走っていないのに息はもう絶え絶えだ。 (胸が苦しい!!) そしてむず痒い、此処が屋外であることも構わずバーナビーはシャツをたくしあげ胸の突起を摘まみ上げる。いつもつけているニップレスを外してしまった。 手の動きを邪魔するシャツの先を口に咥え、胸を揉めばその突起からドボドボと白濁した液が零れ出す。 バーナビーは気分が昂揚すると乳首からマヨネーズを出してしまう。だから気持ちが落ち着けばこれも止まる筈だ。 でも今はその鎮め方が解らない。どんなに考えないように努めてもどうしても浮かんでしまうのだ。 虎徹の顔が、声が、背中が、バーナビーの瞳を優しく見つめ『バーナビーのマヨネーズが好き』だと褒めてくれる微笑が、思い出す程にくぐもった声が漏れる。 「んっ!……ふぐ……ううん!!」 顔を紅潮させてギュっと瞳を閉じた。路地裏とはいえ数メートル先には人足があるのだと思えば恐怖と羞恥心で涙が浮かぶ。 しかしバーナビーの意思とは裏腹に胸を揉みしだく動きがどんどんエスカレートしていった。堅い筋肉で覆われいた胸がまるで赤子のように柔らかくなっていく。 自分は男なのだから、こんなところ感じるなんておかしい! こんな恥ずかしいところを弄って感じているなんて……! 愚かだ。虚しい。こんな自分の手で……悲しい イヤだ!自分の手じゃ厭だ!ちゃんと、触って欲しい! 虎徹の手で触って欲しい!! そう思った瞬間、心の中でなにかが弾けた。 「こ、てつさんっ……!虎徹さん!虎徹さん!ああっ!!」 でろでろに濡れてしまったシャツを口から離し、スパートを掛けながら更に胸を弄るバーナビー。 「ふっ……もッやだ、苦しっ!」 しかし、どんなに激しく揉んでも摩ってももどかしさが増すばかりでちっとも楽にはならない。 「虎徹さん――」 助けて!瞼の奥の彼に助けを求める、すると…… 「バニー」 此処にいない筈の人の声がした。 「……ぅ」 グッと動きを止め、恐る恐る声のした方を見上げる。するとバーナビーの真正面、先程まで求めて病まなかった人物が静かな眼をしてコチラを見下ろしているではないか その姿を見とめた瞬間、また大きく胸が波打ち頭から崩れてしまう。それをまた虎徹が支えてくれるのだから身体は更に震えた。 「虎徹さ……?ど、どうして……?」 愚かな問いだ。彼のことだから自分が急に飛び出したと聞いて心配して探しに来てくれたのだろう、それでも心はこんな姿アナタにだけは見られたくなかったのに、と相手を責める。 (ああどうしよう、軽蔑された?……嫌われた!?) 虎徹は黙ってバーナビーを立たせると彼のシャツをしっかり下し、自身のハンチング帽を被せた。自分に肩を貸しながら歩き出す虎徹にバーナビーは焦って叫び止めた。 「ど、何処に行くんですか!?」 虎徹から肩を外されてしまえば自分は崩れるしかないと解っていても、もがく。途端、バーナビーを虎徹の鋭い眼差しが貫いた。その名の通り獰猛な獣のような色をした瞳に弱った兎が逆らえるはずもない。 バーナビーは近くのホテルに連れ込まれ、ベッドに乱暴に投げられた。 「ッ!!」 その刺激すらバーナビーにはツライ。 フロントに連れの具合が悪いというとチェックインもせずに部屋まで通してもらえた。ひょっとして自分が連れているのがバーナビーだと気付かれたかもしれない。 ゴールドにあるホテルだけあって小奇麗で、照明も調節できるようになっている。さて、防音の方はどうだろう……? 「……お前、どうしたんだよ?」 ずっと黙っていた虎徹は久しぶりに声をかけた。 バーナビーを横目で見下ろすと、彼は仰向けにのけぞり止め処なく溢れてく見せ付けハァハァと息を切らしながら言った。 「わ、かりませんッ!あ……貴方の事を考えたら……こんな!止まらなく……あっ」 彼が喋っている途中で布の上から胸を押さえると、堪らず悲鳴のような声をあげる。虎徹はバーナビーのシャツをびりびりと破った。 「ヤダ……虎徹さんッ!!」 「やじゃねえだろ……このままじゃツラいだろ」 思った通りバーナビーの胸の突起は赤く腫れていて、そこからポロポロと少しずつクリーム色の液が垂れ出していた。 もうピークが過ぎたのだろうか?だとしたら少し勿体ないことをしたかもしれない。虎徹がそれに鼻を寄せると興奮剤でも入っているんじゃないかと疑う匂いがした。 「やめてください……虎徹さん」 口ではそう言いつつ瞳は「助けて」というように切羽詰まった色をしていた。 亡き妻が愛娘を身籠っていた時も胸が張って苦しいと訴えられたが、ここまで顕著じゃなかった。 「待ってろ……今、楽にしてやるからな」 バーナビーを安心させるように優しく微笑むと、虎徹はそこに勢いよく被りついた。 「ーーーーーーーー!!?」 バーナビーの喉から声にならない声が上がる、というか声になる前に本人が口を押さえたからだ。防音がしっかりされているか不安なホテルの小部屋、そこにいるのがヒーローであるとバレている今は、それで正解だろう。だが、いつかバーナビーの部屋で思いきり聞いてみたいなと思った。 路地裏で大量に出してしまったからだろうか、もう殆ど枯れ果てているヂュッヂュッっと吸いながら虎徹は先程の光景を脳裏に浮かべた。沸々と湧くのは情欲、そして激しい怒りだった。 (あんな所を俺以外に見つかったらどうすんだよ!!この兎は!!) 最初に見つけたのが自分で良かった、あのまま誰かに連れ去られて強姦されていても不思議はなかったぞ! そんな怒りを込めて更に強く吸い付けばバーナビーが白い喉を逸らして嗚咽を耐えた。 しかし、念願のバニーの乳を吸っているのだ。虎徹は―― (やっぱ美味いし……なんか甘い感じがする……なんか想像していた以上に……) 指から出るマヨネーズとは違う、何故だが懐かしい様な愛おしい味がした。 数分間、マヨネーズも止まり落ち着きを取り戻したバーナビーはとりあえず虎徹に向きって正座をし、感謝と謝罪を述べた。 「ありがとうございます虎徹さん……そして、すみませんでした」 「いや、バニーが大丈夫ならよかった。」 シーツに顔を擦りつける勢いで頭を下げるバーナビーになんとか顔を上げさせて、虎徹は「俺も激しくして悪かったよ、ほらなんか自制が効かなくて……」なんてバーナビーには意味のわからない事を言ってきた。 「で、折角落ち着いたところ悪いけど、続きしよっか」 「え?続きって」 赤い頬をぽりぽり書きながら言葉を落とした虎徹をバーナビーはきょとんと見詰めた。虎徹の態度から軽蔑や嫌悪を感じられないことに安心したのか酷く無垢で無防備な顔だった。 「え……?お前……まさかマジで俺が人助けの為にこんなことしたと思ってる?」 「違うんですか?」 「馬鹿!!お前じゃなかったらいくら苦しがってても乳吸ったりしねえよ!!」 「ちょ!そんなこと大声で言わないで下さい!!」 バーナビーは恥ずかしげに顔を逸らし、虎徹の言葉の意味を考えた。 そうだ、虎徹がもし同じ場面に遭遇したら(こんなこと滅多にないだろうけど)病院に送るか、病院に行くのを嫌がるなら搾乳機を渡して自分で吸い取るように言うに留まるだろう。 (え?でもそれじゃ何で……?) 本当になにも解かってない様な相棒に呆れつつ、仕方ないなあと虎徹は慈愛に満ちた瞳を向けた。信じられないくらい鈍い兎だが、こうして惚けた表情になるところが本当に愛おしい。 「そうだよな……うん、何も言わずに始めた俺も悪いよな」 「……虎徹さん?」 そうだ、もっと早く言えば良かった。告白も返事もないままイキナリ行為に及んだのはいけなかった。 ここは男らしくヒーローらしくビシッと決めないと、相手はなんたってKOHのハンサムなのだから、 「あのなバニー、俺はお前が――……」 想いを伝えたその後に待っているのは、ほんのりマヨネーズの匂いが漂う甘い時間 END |