日飲みすぎたから軽めの朝食と、シャワーを浴びながら歯磨きを終え、身支度を済ませるといつも家を出る時間まで5分を切っていた。今日は時間がないなと思いながらテレビを消そうとリモコンに手を伸ばすと、右上に映るの時刻が家にある時計より10分ほど遅れていた。あわてて携帯を見る。やっぱりテレビの時刻の方が正しい。
電池はこないだ替えたばかりだから秒針はきちんと刻まれているだろうし、家にある時計と腕時計偶然同じだけ進む偶然なんて無いだろう。腕時計も昨日の夕方までは正しい時刻を刻んでいた。そうなるとどこかに時計の針を進めた犯人がいる筈だ。まあ十中八九昨日うちで一緒に飲んでたバディ兼スタディのバニーなんだけど……ああそっか昨日珍しく泊まって行かなかったのはこの悪戯の為か……アイツも子供っぽいことをする。

〜♪〜♪

持っていたスマホが鳴り、すぐに出る。

『おはようございます。虎徹さん』
「おはよう、ひどいぜバニーちゃん」
『ふふ、いつも遅刻ギリギリなのが悪いんですよ』

電話に出ると朝から爽やかなバニーの声がした。

『今日から新年なんだから早めにきたらどうですか?』
「ああ、そっか四月一日エイプリルフールか……」

年に一度ささやかな嘘が許される日、だからバニーはこんな悪戯を思いついたんだろう。まあ今日くらい早めに出てもいいかな。日差しが暖かく気持ちのいい朝だ。折角だから会社の駐車場で待ち合わせをして電話を切った。
そこまでは「なんだか幸先のいい日だなー」と思ってたんだけど

「虎徹さん、大嫌いです」

オフィスについた瞬間バニーはニッコニコ笑いながら、爽やかに言いやがった。俺を見る瞳から好意がダダ漏れなので嘘だとわかるんだが

「バニーちゃん……今日は罪のない嘘を吐いていい日なんだぜ」

今のは確実に罪のある嘘だろう?

「んーでもコレが僕にとって一番の嘘ですから」
「だからって……」
「虎徹さんは何か嘘吐かないんですか?」
「俺は嘘苦手だからなあ」
「ああ……そうですね……」
「って今の嘘じゃないからな!」
「はいはい」

全然信じてないだろ!!とか言っているうちに始業時間になった。バニーは途端にサラリーマンの顔に変わる。まあ今日はよく話せたからいいかと自分も端末へと向かった。

デスクワークが終わりトレーニングセンターに着く頃には朝の嘘なんて頭の中からすっかり消え去っていた。

「スカイハイさん!折紙先輩!ドラゴンキッドさん!愛してます!!」
「え?」
「ん?」
「はい?」

先客を見つけるとバニーはベンチに座って談笑している三人の所に駆け寄った。三人とも突然の事にきょとんとバニーを見上げる。

「どうしたの?バーナビーさん」
「あはは!私も愛してるとも!市民みんなをね!!」
「……」

照れた様に笑うキッドと大手を翳して宣言するスカイハイ、折紙も警戒しつつ嬉しそうだ。俺はというと固まってその場から動けなくなってしまっていた。


「突然どうしたんですか?」
「え?ああ、エイプリルフールなので罪のない嘘を吐いてみました」

ナルホド、朝俺が言ったことを実践してるんだな、うん可愛い……って違う!あ……愛してるなんて俺も言われた事ないのに!!俺なんて大嫌いだと言われたのに!

「でもどうしてそれが「愛してる」なの?」

俺やキッドみたいな東洋人にしてみれば嘘でも愛を語るのは重い、吐くにしても普通「好きだよ」程度だろう。

「だって「好き」じゃ嘘になりませんもん」
「……ッ!!」

ああ、つまりバニーはこの三人のことを本当に好きだから「好き」と言っても嘘にならない、けど「愛してる」まではいかないからそう言ったと……そりゃないぜバニーちゃん。

「ありがとう!そしてありがとう!!私も愛してるよ!バーナビーくんも折紙くんもキッドくんも!」
「ボクもバーナビーさんのこと愛してる!スカイハイさんとイワンさんも愛してるよ」
「せ、拙者もお三人のこと愛してるでござる!!」

意味の解った三人はそれはもう嬉しそうに笑って口ぐちに「愛してる」と言い合いだした。折紙は素だと恥ずかしいのか口調が変ってるけど。うーんエイプリルフールはいつから愛をばら撒く日になったんだ。

「あら?なにあれ可愛いじゃない?」
「なにやってんのかしら……」

バニー達を見ていると横から楽しそうな声と呆れたような声が聞こえた。ファイヤーエンブレムとブルーローズだ。

「ああエイプリルフールらしい」
「へぇだから「愛してる」なのね」
「はあ?普通「好き」くらいに留めるんじゃないの?」
「なんでも「好き」じゃ嘘にならないから、らしいぜ」
「馬鹿じゃないの」
「まぁ素敵」

バッサリ切り捨てた氷の女王とウットリと手を組む炎の奇術師。正反対の反応を示すくせに仲良いんだよなコイツら。

「で、アンタはなんでそんな不服そうな顔してんのよ」
「……え?顔に出てた?」
「出てたわ、大方ハンサムが他の子に愛してる愛してる言ってるのが面白くないんでしょ?」
「ぐっ……だってアイツ俺には「大嫌い」って言ったんだぜー」
「まぁ!」
「……ああ……そう……」

キャっと跳ね上がるファイアーとは対照的にブルーローズは冷めた目を更に冷まして俺を呆れたように見た。

「え?どういう反応?」
「あのさ、つまり……だから」

ブルーローズが口籠っていると此方に気付いたバニーが近づいてきて

「こんにちわ!ブルーローズ!ファイヤーエンブレムさん!今日も愛してます!!」

バニーは二人にも、愛してはないけど好きではあるよ、という意味のある嘘を吐いた。

「きゃー可愛い!!私も愛してるわよハンサムー!!」
「もうお尻さわらないでください!……ブルーローズは?」
「はいはい私も愛してるわ」

ファイヤーエンブレムのセクハラはいつもの事だからスルーしといて……バニーとお前いつの間にブルーローズとそんな仲良くなったんだよ。
胸にちょっとした嫉妬が芽生える中、アントニオが来ても同じことを言うのかと今から気が重かった。他の連中なら自制が効くがアイツだったら遠慮なくぶっ叩くかもしれない。勿論嫉妬で

「おーみんな揃ってるな」

そう思っていると、丁度アントニオが現れた。今日くらい休めば良かったのに

「あ!バイソンさん!!」

早速アントニオに向かっていこうとするバニーを思わず後ろから羽交い締めにした。

「へ?虎徹さん??」
「……」

悪いなバニー、これも俺とアイツの友情に亀裂を入れない為だ。こんなことじゃ亀裂は入んねえけど多分。
それだけで真っ赤に染まったバニーが可愛くて、ブルーローズの視線が痛いのなんて気にしない。

「あら〜今日は遅かったじゃない」

するとバニーの代わりにファイヤーエンブレムがアントニオに擦り寄り、肩に腕を掛ける。耳元にねっとりとした吐息を吐かれアントニオの背筋が震えるのが解かった。
あいつアニエス好きだと公言しているけどイヤがってはいなさそうだからアレでファイヤーエンブレムに脈はあるんだろうな。俺とバニーが付き合う事で同性愛に対しても前よりフランクになっていってるのかもしれない。
今はそんなことどうでもいいけど

「オマエちょっと離れろよ」
「あらいいじゃない、だって私あなたのこと「大嫌い」だもの」
「は?」

ファイヤーエンブレムの言葉にアントニオは怪訝な顔をする。「大嫌い」だから抱き着くって……正直俺達も意味不明だ。
ただ腕の中のバニーだけがビクッと震えたのが解かった。

「どういう意味だ?」
「フフ!今日はエイプリルフールなのよ〜」
「それは分かってるが言ってることとやってることが違い過ぎるぞ」
「身体は正直なのよ、ふふ今日も「大嫌い」よアナタ〜」

アントニオが眉を顰める。まあ嘘だと解ってても「大嫌い」はないよな、俺だって朝バニーから言われて結構ショックだったし。

「こ、虎徹さん……そろそろトレーニング始めましょう?」

そのバニーはというと何やら焦って俺の腕の中から抜けようともがいていた。ええヤダ、離れがたいし誰もトレーニング始めてないし。

「いいじゃない年に一度の嘘吐いていい日なのよ?今日は」
「だけど……よりにもよって「大嫌い」って……」
「フフ、だって……ねぇ?」

一瞬ファイアーエンブレムがこちらをチラリと見て笑った気がする。バニーがブルっと震えた。


「「好き」も「愛してる」もアナタに言ったんじゃ嘘にならないもの「大嫌い」って言うしかないわ」



END





オマケ


ご注意
※のっけから虎徹さん振られてます最後はコテバニラブエンドになる予定
※捏造に次ぐ捏造ていうか捏造じゃないとこが無い
※黒虎さんとクロ友さん(クローン友恵さん)が出てくる
※マーベリックさんのクローンとかも出てくる
※原作キャラ以外の死にネタがあります
※黒虎さんとクロ友さんの名前はもうエビちゃんモエちゃん(懐かしッ)でいいかなと思います
※ほぼバニーさんの台詞です


【POLE STAR】


話は虎徹さんががバニーさんに告白する所から始まる


「は?僕を好きって……冗談でしょ?」

「正直言って貴方、重いんですよ」

「お断りします。だって僕と貴方じゃ釣り合わない」


――――――――……


暫くして飲んだくれてるバニーさんをユーリさんが発見


「そうだな……司法官さんには話してもいいかもな」

「僕は過去に何をしてきたか知れないんですよ……そんな状態で彼の告白なんて受け入れられると思いますか?」

「マーベリックに記憶を操作されて、あの時の虎徹さんのように犯罪者に仕立てられた人を傷付けていたり……ジェイクみたいに親の仇だと信じ込まされた人を……殺してるかもしれない……」

「いや、もしそんなことがあってもジェイクの時みたいにストッパーがかかって殺しはしていないと自分では思っています……それにマーベリックの目的はあくまでヒーローTVを盛り上げることだから、未成年の僕にそんなことさせなかったと思います。そう思いたいです……」

「でも犯罪に利用されていたのは事実で……正義だと思いながら罪を犯してきたのかもしれない……」

「彼なら僕がどんな過去を持っていても受け入れてくれるって信じてます……でも僕は愛する人やその家族を……僕という容疑者に関わらせる覚悟はありません」

「だから過去が明らかになって自分の潔白が証明されるまで誰かと結ばれようなんて思えない……」

「でも……マーベリックが死んでしまった以上、それを証明する方法はないんです」


――――――――……


H-01と一緒にウロボロスの関連組織から友恵さんのクローンを救出、色々あって一緒に住み始めます。
クローン友恵さんは記憶喪失で精神年齢4歳児くらい

「私はヒーローが嫌い、その中でもワイルドタイガーが一番嫌い!」

「友恵さんと同じ顔でそんなこと言わないでよ……」

バニーが構ってくれない理由のヒーロー業と相方の虎徹さんにヤキモチやいちゃうクロ友さん可愛い


――――――――……


身体が弱く寿命の短いクロ友さん入院、入院していた病院から脱走、必死に探すバニーさんとH-01

「なあバーナビー、そいつ誰だ?」

友恵さんそっくりなクローンと虎徹さんそっくりなロボットと一緒にいるところをバイソンさんに見つかって咎められます。


――――――――……


そこに現れたウロボロス関連組織のマッドサイエンティスト系の男(恐らくイケメン)がクロ友さん誘拐。
話によるとクローン友恵さんはバーナビーとマーベリックの過去の情報を知っているらしいです。


――――――――……


助けに向かった先でやっぱりピンチになるバニーさんとH-01
そこに現れたのは……


「タナトスの声を聞け!」
「ルナティック!!?」

「来たぞ!ワイルドタイガーだ!!」
「虎徹さんも!!?」


なんとか危機脱出
しかしH-01は修復不可能とクロ友さんは瀕死の重傷


――――――――……


記憶の戻ったクローン友恵さん

「バーナビー……貴方の身は潔白よ……マーベリックの目的はあくまでヒーローテレビの普及とヒーローの地位向上だった……確かに罪深い人だけど……あの人も幼馴染の子供に犯罪を犯させようなんて思わなかったわ」

「モエさん……」(※バニーが命名したクローン友恵さんの名前)

「だから貴方は、なにも気にせずタイガーと結ばれていいのよ……愛してるんでしょ?彼のこと」

そして気を失うモエさん(死んでない)


――――――――……


それから色々あって虎徹さんとくっつくバニーさんと、H-01とこっそり余生を過ごすことになったモエさん
改心したマッドサイエンティストの協力もありモエさんの寿命の問題も解決する予定(ついでにH-01も普通に歳をとれるようになる予定)

そんなこんなで、めでたしめでたしでしたー


――――――――……



↑ここまで全部ウソです

でも、こんな話を私は読みたい